“プラス2番手の飛び”がさらに進化した4代目。ヤマハ『インプレス UD+2』
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はヤマハの「インプレス UD+2」を取り上げる。
フェース裏の5本のリブで打ち出し角アップ
2014年6月に“プラス2番手の飛び”といううたい文句で市場を席巻したヤマハ『インプレスRMX UD+2 アイアン』。2代目から『RMX』の冠が外れ、『インプレス UD+2』になり、2020年10月に4代目が登場。
一体鋳造構造によるフェースとソールの薄肉設計で、たわみ量を増加させ、初速アップを実現。また、フェース裏面に5本のリブを配置した「スピードリブフェース」で、たわみの総量を維持したまま縦方向のたわみを減らすことで打ち出し角が向上した。
いつもどおり、7番アイアンのヘッドとクラブを実測。標準のカーボンシャフト「エアスピーダー for Yamaha M421i(SR)」仕様でクラブ重量が350.2gと非常に軽く、スウィングウェートもC8.7と小さいが、クラブ長さが38インチで通常の5番アイアンと同じと非常に長いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが262万g・cm2となり、この数値だとドライバーのヘッドスピードが39m/sくらいのゴルファーがタイミングよく振れる設計になっている。
Point1. クラブ重量が350.2gと非常に軽い
Point2. クラブ慣性モーメントが262万g・cm2と小さく非力なゴルファーでも振りやすい
Point3. リアルロフト角が25.3度と非常に小さく超ストロングロフト
ソール幅が広くUTのような安心感がある
それではヘッドを見ていこう。フェースの高さが全体に低い、いわゆるシャローフェースで、かつソール幅が広い、ユーティリティアイアンのような形状が特徴的だ。また、リーディングエッジはストレートで、ソールにも丸みはなく、シャープな印象が出ている。
実際に試打したところ、まずアドレスではシャフト長もロフト角もまさに5番アイアンといえる。ヘッド、スコアラインともに長い設計でフェース面が長く見え、いかにも打ちやすそうなイメージ。ソール幅が広いので、アドレスでその部分が見えるが、これは好き嫌いの意見が分かれるだろう。
試打クラブは前述のとおり、7番で標準のカーボンシャフトのSR。シャフトはかなり軟らかめで、ドライバーのヘッドスピードが30台半ばのシニアゴルファーでも振りやすいと感じるだろう。スイートスポットはスコアライン中央からややトウ寄りにあるので、フェースのトウ寄りでショットした場合でも当たり負けしにくく、またライ角がフラットで、左につかまり過ぎない感じがある。フェース面は硬くインパクト音も高いが、その分、フェースの弾きはいい感じ。
対象ユーザーであるシニアゴルファーにも7番アイアンを試打してもらった。通常の5番アイアンと同じようなロフト角25度の超ストロングロフトアイアンなので、ティーアップショットでは飛距離は出るが、フェアウェイからは球が上がりにくく、「フェアウェイからを考えると8番からで十分」という声も聞かれた。
<試打クラブスペック>
●番手/7I(25度) ●シャフト/エアスピーダー forYamaha M421i(SR)
ヤマハ
インプレス UD+2
●ヘッド素材/AM355精密鋳造
●ロフト角/25度
●ライ角/61.25度
●長さ/38インチ
●シャフト/エアスピーダー for Yamaha M421i(SR)
●総重量/約352g(SR)
●価格(税込)/11万6160円(71~PW)
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 38.0インチ |
クラブ重量 | 350.2g |
スウィングウェート | C8.7 |
クラブ慣性モーメント | 262万g・cm2 |
ヘッド重量 | 250.9g |
リアルロフト角 | 25.3度 |
ライ角 | 60.5度 |
フェースプログレッション | 3.2mm |
バウンス角 | 0.4度 |
重心距離 | 41.4mm |
重心深度(フェース面から) | 6.3mm |
スイートスポット高さ | 18.9mm |
ヘッド慣性モーメント(左右) | 2555g・cm2 |
ネック軸周り慣性モーメント | 6158g・cm2 |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年2月23日号より