【駒場東大前・豚の生姜焼き】甘辛ダレと生姜パンチで進む進む。夏バテ知らずスタミナフード
この時期、仕事の合間やゴルフ場でのランチタイムで、無性に豚肉の生姜焼きを食べたくなるのはなぜだろう。その理由は既知のとおり。豚肉に多く含まれるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える働きを持ち、生姜に含まれるジンゲロールは、消炎・殺菌効果とともに体を温める効果があるため、冷房でダレきった体に喝を入れてくれる。そんなわけで豚肉の生姜焼きは夏バテに効く要素満点なのだ。
ゴルフ場メシ向上委員会は「高くて」「マズい」と何かと不評の多いゴルフ場の「味改革」に役立つヒントを探しながら、誰もが食べて旨いと感じる味覚の標準値を探ります。「旨いの基準」は本家本元、本流の味を提供し続ける伝統店、人気店のメニューを考察し、多くの人に支持される味の秘密に迫るものです
でも、そんな理屈はどうだっていい。それよりも「あ〜疲れた、今日は生姜焼きだな」という思考回路は、喉が渇いたら水を飲む、風呂に入ると「ふ〜っ」と息を吐くのと同様、もはや我々のDNAに刻み込まれているのだろう。
ところで日本での豚肉料理は、1900年代初頭、富国強兵の一環として養豚業が盛んになったことから世へ広まったが、豚肉料理が浸透していく中で、おそらく肉の臭みを消すため、自然と生姜が用いられるようになったはずだ。
ただ「豚の生姜焼き」の元祖には諸説あり、1950年代に銀座の割烹「銭形」が洋食屋に転じた際客へ早く供せるように開発したという説や、1913年に東大の豚肉博士が著書「田中式豚肉調理二百種」内にて紹介した「生姜炒り」という料理がルーツという説までさまざま。
いずれにせよ豚肉の生姜焼きは、豚肉料理の筆頭格として多くの日本人の胃と脳に刻まれていることは間違いない。そんな大定番なだけに、生姜焼きの名店は、それぞれの街に存在する。中でも今回紹介する「菱田屋」は、長年、東大生の胃袋を鷲掴みにして離さない名店として知られる。
胃を空にして、いざ!
甘辛ダレに生姜のパンチ。満腹中枢が麻痺していく…
井の頭線・駒場東大駅で降り、東大生とは反対側の東口へ。閑静な住宅街を数分、歩いた先に菱田屋はある。「学生ご用達の定食屋」という先入観とは裏腹の、窓が大きなコンクリート打ち放しの店構えは、一見、ビストロやカフェといった雰囲気だが、店内の熱気に懐かしい定食屋の面影を見て取れる。
「詳しい資料がないのですが、明治時代、東大教授へ向けて仕出し屋を営んでいたのが菱田屋のはじまりだと聞いています」とは5代目の菱田アキラさん。
寿司職人から中華の名店「文琳」を経て菱田屋の厨房へ入ったそう。壁の黒板を見ると、刺身や煮魚といった和食から中華、ハンバーグまでジャンル不問、旨そうなものだらけ。中でも看板メニューとして支持されるのは生姜焼きで、もち豚の肩ロースを250グラム使うという圧倒的なボリュームは、ファンたちから「ガツ盛り」「男盛り」と称される菱田屋の真骨頂である。
豚肉の生姜焼定食を頼み、ほどなくして豚肉がどっさり盛られた生姜焼きが着弾。豚肉のしっとり感と照り、生姜醤油の甘辛い香りが「これでもか」と鼻を刺激してくる。甘辛ダレに付け合わせのスパゲティから染み出したマヨネーズが絡み合って、キャベツがそれを吸い上げている。ああ、この香りとビジュアルだけで、白米を何杯でもおかわりできそうです…。
柔らかくジューシーな豚肉をガバッと大胆につかみ、ポタポタ垂れるタレとともにご飯へ。甘辛ダレと生姜の香りが白米と合わないわけがない。創業以来受け継がれてきたというぬか床で漬けたぬか漬けも、ダシの効いた味噌汁も、白米をどんどん奪っていく…。ああ幸せ…。定食万歳!
京王井の頭線・駒場東大前駅そば
「菱田屋」
食事時は行列を覚悟したい。店先 にもメニューの書かれた看板があ るので、並びながら悩もう
東京都目黒区駒場1-27-12
TEL.03-3466-8371
営業時間11:30~ 14:00、18:00~23:00(土曜は 18:00~23:00)
定休日:日祝日
月刊GD2019年8月号より