Myゴルフダイジェスト

セントアンドリュース・オールドコースはもともと“逆回り”でプレーしていた?

今年も恒例のセントアンドリュース・オールドコース“逆回り”プレーの案内が、R&A会員たちに届いた。

その案内状には「The Old Course in Reverse Saturday 26th November 2022」とある。逆行することに意味はあるの? という人のために、オールドコースの歴史を紐解いてみよう。

同コースが16世紀に開場した当初は22ホールあったという。それがいつしか18ホールになったのだが、その頃はまだ現在の逆回り、つまり18番からのルーティング(時計回り)が通常だった。それがトム・モリス・シニアが1番ホールを創設した頃になって、現在のルーティング(反時計回り)も考案されたというのだ。このルーティングのほうが効率的だということから、トーナメントではこれを採用することとなった。

1860年から始まった全英オープンも第1回から現在までこの“反時計回りルーティング”で固定している。しかし、一般ゴルファーには1870年から1940年代にかけて両方のルーティングが開放されていた。そのうち世界中から訪問者が増え、特に“時計回り”のほうに人気が集中。だが当時のヒッコリークラブではスライスが出やすく、それが出るとクロスオーバーの多い時計回りでは打球事故が頻発するようになり、ついには1978年に廃止となったのだ。

ちなみに球聖ボビー・ジョーンズは歴史的に古い時計回りを好んだという。

この消滅したルーティングを、オールドコースを管理運営するセントアンドリュース・リンクスは01年のエイプリルフールに復活を提案。これが恒例となって現在に至るわけだ。

「以前は11月30日のセントアンドリュースデーと前日の2日間だったり、2週間交代で2つのルーティングをプレーしたこともありました」とはR&A会員であり、JGAミュージアム参与の武居振一氏。

時計回りのラウンドには興味深いエピソードがある。

00年、タイガー・ウッズはオールドコースでの全英オープンに勝利し、グランドスラマーとなった。この勝因は「112個あるバンカーに4日間一度として入れていないことだ」とコメント。タイガーは時計回りのラウンドをすることで、不適切に存在するバンカーに気がついたというのだ。名物キャディのオリバー・ホロヴィッツは「バンカーの一部はリバースするときのみに機能し、意味がある」と言っている。

逆回りで18番のスウィルカンブリッジがどう見えるか、興味をそそられる話ではある。

憧れのオールドコース、逆回りもいいがまずは通常のルーティングで回ってみたいものだ

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月25日号より