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フラットなコースに「シグネチャーホール」を! 大利根CCの挑戦

日本のゴルフ場における改造・改修の意味を、2024年日本女子オープン開催の大利根CCを例に論じてみよう。

同CCの開場は1960年、設計は名匠・井上誠一。当時、日本では松林で各ホールがセパレートされ、フラットなコースがベストであるとされた。その点で同CCはピカイチだった。

しかし「世界のベスト100コース」に目を転じると、真っ平らな土地に林でセパレートされたコースは皆無。高低差のある土地には3次元的“変化”がつけられる。各ホールを印象づけ、シグネチャーホールも造りやすい。

日本的美徳が世界基準では不適格だった現実。それに昨年には西コースで日本女子オープンの開催が決まった。そこで同CCでは西コースの改修を決意。具体的にいえばフラットなコースで、各ホールをどう印象づけ、シグネチャーホールを造形するか──。同CCの挑戦が始まった。

改修の“絵”を描くのは設計家・川田太三氏。氏はR&Aの会員を務め、パインバレーGCのメンバーでもあり、世界のコース事情に詳しい。

「ないものねだりをしても仕方ないこと。大利根最大の魅力である“広大なスケール感”を生かし、オンリーワンを目指します」(川田氏)

実は同CC、8年前から樹木の伐採を始めている。樹木が成長して陽光がさえぎられ、風通しも悪化したせいで芝の生育が悪くなったからだ。

コース内の樹木を整理していくと、鬱蒼とした林が明るくなり、開放感あふれ、隣のホールが垣間見える景観はスポーツマインドをかきたてる。さらにクラブハウス前の眺望も一変した。

バンカーは戦略性と景観に重要な役割を果たす。毎ホール、形や位置を徹底的に吟味し、同じ印象になるのを避けた。グリーンの形も砲台、ハロー(窪み)などで変化をつけ、バンカーはグリーンに近づけた。2グリーン制ではあるが土地に余裕があるため、各グリーンがセパレートされ、全く違う攻め方ができ、違和感はない。

各ホールの景観に変化がつき、とくに終盤の16、17、18番は戦略と景観を差別化できた。シグネチャーホールは17番という目論見もできた。

「まだ完成形ではありませんが、少しずつでも改良して次世代につなげ、歴史をつくっていければ」(コース委員会委員長・高窪哲夫氏)

まだ東コースも残っている。同CCの奮闘は続く──。

週刊ゴルフダイジェスト2022年10月11日号より