【ゴルフ初物語】Vol.104「少しハードにしすぎた」ジャック・ニクラスが日本で初めて設計したゴルフ場
来週、日本オープンが開催される三甲GCジャパンコースをはじめ、帝王ジャック・ニクラスが設計したゴルフ場は国内に28コースあるが、日本で初めて設計したのは栃木県のニューセントアンドリュースGCジャパン(NSAJ)だった。
「日本にセントアンドリュース・オールドコースを造る」と1960年代後半、栃木県大田原市に計画されたのがニューセントアンドリュースGCジャパン。設計したのはジャック・ニクラス。ニクラスの初設計は1969年にピート・ダイと共同設計した米国のハーバータウンGLだと言われているが、同時期に日本でもコースを手掛けていたことになる。
70年から200万円で第1次募集を開始し、75年5月に18ホールで開場。後にニクラス自身が「少しハードに設計しすぎた」と反省したほどタフなアメリカンスタイルで、ニクラス自身、このコースを初ラウンドしたときハーフで「43」を叩いたという逸話もある。
だが、わずか2年で会員7000名、約100億円の負債を抱えて倒産してしまう。そこで会員有志が「NSAJをよくする会」を結成して資金を集め、79年に競売で落札。会員だけで再建に乗り出した。
86年には従来の18ホールに加えて、やや離れた場所にスコティッシュ・スタイルの9ホールを新設。設計監修にはセントアンドリュース・オールドコースの関係者が来日してこれにあたり、9月1日、「オールドコース」としてオープンした。オープン記念の正会員募集は1000万円だった。
このオープンに合わせ、クラブハウスと2キロ離れたオールドコースを結んだ専用の全自動モノレール「ニューセントアンドリュース・エクスプレス」が運行開始。定員10名、キャディを含めて2組の乗客とカート2台を約6分間乗せて運ぶ。総工費は7億円とバブル景気に沸く時代ならではだが、観光気分が味わえるとメンバーの評判を呼んだという。2013年8月に廃止されたが、線路だけが現在も残されたままになっている。
週刊ゴルフダイジェスト2022年10月25日号より