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【ゴルフ初物語】Vol.99 1935年、富士山麓に初めて造られたゴルフ場は?

先日の男子ツアー、フジサンケイクラシックの舞台となった富士桜CC。標高1000メートルの富士の裾野に広がるコースだが、富士山麓に初めてゴルフ場ができたのは戦前の昭和10年、今から90年近く前だった。

会員権と別荘地をセットで販売

明治末期に相次いだ水害を見かねた明治天皇が1911年に山梨県内の御料地16万4000ヘクタール、東京ドーム3万5000個分の土地を山梨県に寄贈。「恩賜林」と呼ばれているが、1927年に富士山麓電気鉄道(現在の富士急)が山中湖畔一帯の恩賜林440ヘクタールを県から借用し、別荘用地として観光開発に着手。その一環として借地の約3割に当たる40万坪を使い、1935年に山梨県初のゴルフ場、富士ゴルフ場(現・富士ゴルフコース)が9ホールで開場した。

翌年8月には9ホールが追加され18ホール・6407ヤード・パー72となる。設計は明石和衛。精密機器メーカーの創業者だが、大河ドラマ「いだてん」の主人公、金栗四三と共著で「ランニング」という本を出版するほど、日本の陸上競技黎明期に短距離走、中距離走、走幅跳びの選手として活躍した人物として知られている。その後、ゴルフにのめり込み、メンバーだった東京GCではHC8のシングルに。

クラブハウスを手掛けたのは東大の安田講堂などを設計した岸田日出刀。岸田も戦前、千葉にあった武蔵野CCではHC8の腕前で、後年、湯河原CCを設計している。純日本風の建物からはコースが一望でき、当時の案内には「眉間に富士、脚下に山中湖を眺むる絶景」と記されていた。

入会金は正会員100円、年会費20円。さらに入会金300円で、別荘地360坪の借地権が付いてくる「特別会員」も募集。コースを取り巻くように数十棟の別荘が建ち並び、「ゴルフ村」を形成し専用マーケットもあったという。富士ゴルフ場は1954年に静岡の大富士ゴルフ場が開場するまで富士山麓唯一のコースだった。現在はパブリックとして多くのゴルファーに愛されている。

87年前の開場当初は若木だった樹木が育ち、コースの景観は大分変化したが、奥にそびえる富士の雄姿は、いつの時代も変わらない

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月20日号より