【名手の名言】トム・モリス「届かなければ、入らない」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回はゴルフの草創期を築いた伝説のゴルファー、トム・モリスのあまりに有名な格言を2つご紹介!
届かなければ、入らない
トム・モリス
本来ならば、このシリーズ第1回で紹介しなければならない言葉だった。
なにしろこれを発した人が、ゴルフ生誕の地で行われた世界最古の競技、全英オープンに初回から参加し、2回目から、通算4回も優勝しているプロゴルファーの始祖ともいえる人物なのだから。
「Never up, never in」(届かなければ、入らない)
ゴルファーなら誰もが一度は耳にしたことがあるだろう、トム・モリスの言葉だ。
たとえ完璧にラインが読めていても、どんなにいいストロークをしても、カップにボールが届きさえしなければ、物理的にカップインしない。
同じ外すにしても、カップを通り過ぎる強さで打ったならば、少なくとも入る可能性はあったわけだ。
だから、強く打って失敗した場合と、打ち切れずに届かなかった場合とでは、後者のほうが圧倒的に悔いが残る。
ところが頭では理解していても、いざ大事な場面になると、ショートしてしまうということがある。これは、初めての100切りがかかったアベレージゴルファーの99打目でも、メジャーでの優勝がかかったクラッチパットでも同じこと。
この1メートルが決まれば目的が叶うというパットを前に、手が動かず涙をのんだゴルファーは枚挙に暇がない。
これはどんなにゴルファーの飛距離が伸びても、クラブの性能が進化しても、ゴルフというスポーツがある限り、未来永劫つきまとってくる課題だろう。
草創期に生まれたこの単純明快な言葉こそが、ゴルフの神髄を最もよく言い表しているといえよう。
打つまでは
まだ失敗していない
トム・モリス
普段は楽天家なのに、ゴルフ場にいくと急に悲観主義者に変貌してしまうゴルファーは多い。
池を目の前にすると、打つ前から「池に入れたらどうしよう……」。純白のOB杭が目に入ると「あそこに打っちゃいそうだな……」などと、ネガティブなことばかりが頭をよぎる。
そしてまた、思った通りの結果になるからゴルフは不思議なもの。
トム・モリスは200年も前の人だが、ゴルファーという人種の気質はその時代から変わっていないようだ。
打つまでは、まだ失敗してないのだから、失敗することを前もって気に病むことはない、もっとポジティブに考えて打てばいい、とモリスは諭しているわけだ。
ゴルフのみならず、人生にも通じる深みのある言葉だ。
■トム・モリス(1821~1908)
1860年から始まった世界最古の競技である全英オープンで、67年までに4度の優勝。そして68年から4連勝(71年は中止)したのは息子のトム・モリスJr。つまりトム親子(オールド・トム、ヤング・トム)がゴルフ草創期を飾ったのである。オールド・トムは最初、セントアンドリュースに、クラブとボールをつくる職人として働き、51年に新しく生まれたプレストウイックに移籍。そこでヤング・トムが生まれ、全英オープンに出場。61、62、64、67年と優勝。その後、再びセントアンドリュースに専属プロゴルファー、グリーンキーパーとして迎えられる。いまでもセントアンドリュース18番グリーン脇に、トム・モリスショップが現存している。