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【名手の名言】チック・エバンス「自立心の旺盛な人ほど、ゴルフも進歩する」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は全米アマに連続50回出場、アマチュアの鑑と称されるチック・エバンスの言葉を2つご紹介!

伸びる選手に必要な資質とは……?(PHOTO/Tadashi Anezaki)


自立心の旺盛な人ほど、ゴルフも進歩する

チック・エバンス


チック・エバンス(1890-1979)は生涯アマチュアにこだわり続け、全米アマ50回連続出場という驚異的な記録を持つレジェンド。1916年には全米アマだけでなく、全米オープンも制している。

そんな伝説のアマチュアゴルファーが、ゴルフ上達の条件として挙げているのが「自立」。

プロの試合ではキャディというパートナーがいるが、最終的に決断し、実行するのは自分自身。自分の技量を的確に把握し、その時々で最善の判断を下すことができなければ、いいショットは望めない。

近年ではコーチという存在が一般的になり、ビデオの映像や計測した弾道データをもとに、選手にアドバイスを与える。トッププレーヤーへと成長していくうえでコーチの存在はもはや欠かすことはできないが、単にコーチに言われるがまま練習しているだけの選手は伸びない。自分の頭でしっかりと考えることができ、コーチの指摘の真意を理解しながら、それを自分なりに落とし込める選手は、どんどん進歩していける。

よく、コーチから離れて成績が振るわなくなったという話を聞くことがあるが、それはおそらくコーチへの依存が強かったからだろう。コーチから課された課題も、それが何のための練習かをしっかりと理解しながらやるのと、ただやらされるだけでは、進歩の度合いは雲泥の差。

長くトップで活躍しているプレーヤーは、総じて自立心の高い選手ばかり。「指示待ち人間」ではゴルフが上手くなることは難しいことを、表題のエバンスの言葉は物語っているのである。


ゴルフで得たものはゴルフに返す

チック・エバンス


これは正確にいえば、エバンスの母親の言葉である。

エバンスは幼少の頃から家計を助けるために、ゴルフ場でキャデイを始め、同時に自らもゴルフの魅力にとりつかれ、ボールも打つようになる。

16歳の頃シカゴジュニア選手権で優勝。その後、全米オープンに2度惜敗した後、1916年全米アマに勝ち、なんとその年、念願の全米オープンまで勝利する。

その頃、ゴルフに関心をもつジュニアゴルファーのために、レッスンのレコードを製作するのだが、これが爆発的に売れてチックには5000ドルの印税が舞い込むこととなる。しかし、エバンスはアマチュアで、規定に抵触するおそれがあるため、母親に相談する。そこで母親が送った言葉が「ゴルフで得たものは、ゴルフに返しなさい」である。

母親の助言どおり、チックは全額をウェスタン・ゴルフ協会経由で供託基金にした。13年後、その金は利子が積もって1万2000ドルとなり、そこでエバンスは自分の経験から、貧しいキャデイ少年のための「チック・エバンス奨学金」を設立するに至るのである。 そしてこのニュースを聞いた一般の人達からも寄付が集まり、その金額は100万ドルに達した。

この奨学金によって1万人もの少年が大学へ進学することができ、そのなかから最高判事や、大学教授など社会的指導者となる人材を多く輩出したのである。アメリカのゴルフがボランティアやチャリティーなどのイメージがあるのも、エバンスのこの行為が下地となっていることは想像に難くない。

■チック・エバンス(1890~1979年)

幼少時のキャディのアルバイトでゴルフを覚え、16歳でシカゴジュニア優勝、次の年も連覇。12年全米アマ、14年全米オープン逆転負けの後、16年その2つのメジャーに優勝。20年も再び全米アマに勝つが、その頃から深刻なイップスに陥り勝てなくなってしまう。もしイップスにならなければ何勝したか分からないといわれる。しかし全米アマにだけは連続50回も出場しつづけ、後年の慈善事業と併せて、アマチュアの鑑と称される。