【プロゴルファーに聞く】コロナウイルスでプロゴルフトーナメント中止。試合ができない現状をどうとらえている?
中国武漢から始まった新型コロナウイルスの感染は拡大し、アジアだけでなく、全世界に広がっているのが現状だ。ゴルフだけでなく、スポーツイベントに大きな影響を与えているが、プロゴルフ界の選手はじめキャディ、識者は現状をどう思っているのか?
試合がないと五輪ポイントも稼げない…
「選手は苦しい立場だが、開催中止は現時点でベストな選択」(佐渡充高氏)
国内女子ツアーの開催中止の発表をゴルフ解説者の佐渡充高氏は、
「仕方ないでしょう。現状では中止か無観客にせざるを得ませんが、無観客の場合でも選手やキャディ、スタッフなどの感染リスクは残る。ゴルフは屋外なのでリスクは少ないと言われますが、クラブハウスやレストラン、ロッカーなど濃厚接触する機会はあり、絶対に感染しないとは言い切ません」と指示する。
世界ジュニアの日本代表監督を務める井上透コーチも、
「今回の新型コロナは、東日本大震災とは状況が異なる。震災のときは起こった時点が最大で、そこから段階的に復興が始まる状況だったので、震災で傷ついた人たちに元気を与えるスポーツの役割は大きかった。でも新型コロナは出口が見えない状況。まずは解決の糸口が見えてくることが重要です」
選手やキャディ、識者の意見は…
「試合がないと収入がなくなる。不安です」(臼井麗華プロ)
「試合が中止になると収入がなくなるので、正直に言えば不安です。選手としてはもちろん試合でプレーしたいですが、この状況では中止という決断は仕方がないこと。ツアーのために予約した飛行機やホテルもキャンセルとなりましたし、帯同キャディ(専属)にもギャラが支払えないので申し訳ないです。個人的にはスウィングを改造中でオフが長くなれば準備期間も長くなるとプラスにとらえるようにしています」(臼井)
「国を挙げての感染防止策だから試合中止は仕方ない」(松森彩夏プロ)
「試合の中止はもちろん残念です。でも、仕方がないと思います。私自身は今季はQTからの出場でリランキングもありますから試合はしたいですけど、しっかり準備して1日1日を過ごすことだけを考えています。試合がないと収入が得られませんし、キャディのなかには家族がいる方もいるので、申し訳ない気持ちもあります。今の状況がいつまで続くのかと考えるとやはり不安は大きいです」(松森)
「男子ツアーやシニアツアーにも影響しそう」(高橋勝成プロ)
「女子ツアーの開催中止の決定は、非常に難しい選択だったと思います。無観客でも延期でもなく中止としたことで、これから先、男子ツアーやシニアツアーにも影響があるでしょう。これがスポンサー撤退のきっかけにならなければいいのですが。政府が言う山場が過ぎたときにコロナウイルス感染が収まっていることを願います」(高橋)
「収入がなくなりキャンセル料で赤字になる人も」(野村拓矢さん・ツアーキャディ)
「試合が中止になり、選手たちに感染するリスクがなくなったのはいいことだと思います。ただ仕事として考えると、急に仕事がなくなり稼ぎがなくなってしまうのでキャディは大変です。キャディ仲間には直前の中止によって渡航費や宿泊キャンセル料がかかり、赤字になる人もいます。早く感染が収束してくれることを祈ります」(野村)
「ゴルフは接触度が低いが社会情勢は無視できない」(島村俊治さん・スポーツジャーナリスト)
「ゴルフはサッカーや野球などと比較して、選手同士の接触度が非常に低く、屋外なので密集することなくプレーするスポーツ。感染という点ではスポーツのなかでは比較的リスクは低いでしょう。しかし、社会情勢や政府の要請などを考えれば無観客ではなく中止、という判断にいたったことは妥当だと思います」(島村)
一般ゴルファーは、半数以上が開催中止に賛成
「ゴルフは屋外スポーツなので無観客でも開催してほしかったが、無観客で強行して選手のモチベーションが上がらなければ、本来の力は出せないので中止に賛成」(60代・男性)
「選手の健康面を考えると中止するしかない。でもゴルフ好きとしては楽しみが減り残念」(20代・女性)
「世間体を気にして中止にしていると思う。政府の曖昧な要請も原因。ゴルフコースよりも東京で通勤電車に乗るサラリーマンのほうがよっぽど危ない」(40代・男性)
「開幕戦のニュースを見ると春が来たなと感じ、ゴルフシーズンのスイッチが入るが、それがないので寂しい。でも選手の感染リスクを考えたらしょうがない」(50代・男性)
「世の中騒ぎすぎな気がする。SNS時代の悪い面が出ているのでは」(30代・男性)
事態の収束を誰もが願っているが、感染はいまだ世界規模で深刻な段階であり、その収束が待ち望まれる。
週刊GD2020年3月24日号より