Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • コラム
  • 【名手の名言】トム・モリス「ゴルフには特別な知恵はいらない。われわれが世の中をわたる知恵だけで十分だ」

【名手の名言】トム・モリス「ゴルフには特別な知恵はいらない。われわれが世の中をわたる知恵だけで十分だ」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回はゴルフの草創期を築いた伝説のゴルファー、トム・モリスの格言をご紹介!


ゴルフには特別な知恵はいらない
われわれが世の中をわたる知恵
だけで十分だ

トム・モリス


これは、ゴルフ草創期の名手、トム・モリスの残した有名な言葉である。技術や道具が進化しても、この言葉の真価は色あせない。むしろ現代のプレーヤーにこそ、深く刺さる名言といえる。

ゴルフは「耳と耳の間のゲーム」、つまり頭のスポーツだとよくいわれる。戦略を練り、リスクを管理し、自分を律することが求められる。だがモリスは、それに特別な頭脳や戦術眼は不要だと断言した。ただ社会を生き抜くために必要な、常識的な判断力や冷静さがあればそれでいいと説いた。

では、彼がいう“考えるゴルフ”とは、具体的にどのようなものか。

それはまず、自分の実力を正確に見極めることに始まる。無理をせず、欲をかかず、危険は避け、幸運に頼らず、困難には勇気と冷静さをもって立ち向かう。このプロセスは、まさに人生における賢い選択そのものである。ゴルフのマネジメントとは、すなわち人生の縮図なのだ。

年齢を重ねたプレーヤーにとっては、なおさらこの姿勢が重要になる。若いころの飛距離や体力にこだわらず、その日の体調や気候、風向きなどの変化に合わせたプレーを選択する柔軟性こそが、本当の“知恵あるゴルフ”につながっていく。考えるゴルフとは、身体の衰えを無理に補うものではなく、それを受け入れ、最適解を導く行為にほかならない。

言い換えれば、考えるゴルフとは、年齢や状況に応じてプレースタイルを調整すること。つまり、今日の自分にとってベストなゴルフを見極める行動こそが、トム・モリスが説いた「世を渡る知恵」なのである。

熟年世代になってからゴルフを始める人にとって、この教えは道しるべとなる。若者のようなスウィングを目指す必要はない。勝負を決するのは、スコアではなく、いかに自分らしく冷静にプレーできたか。その達成感こそが、ゴルフの本当の魅力といえる。

道具やテクニックが進化しても、ゴルフの本質は変わらない。人としての分別と、己を知ること。モリスの言葉は、今もすべてのプレーヤーに向けた普遍のメッセージであり続けている。

■トム・モリス(1821~1908)

1860年から始まった世界最古の競技である全英オープンで、67年までに4度の優勝。そして68年から4連勝(71年は中止)したのは息子のトム・モリスJr。つまりトム親子(オールド・トム、ヤング・トム)がゴルフ草創期を飾ったのである。オールド・トムは最初、セントアンドリュースに、クラブとボールをつくる職人として働き、51年に新しく生まれたプレストウィックに移籍。そこでヤング・トムが生まれ、全英オープンに出場。61、62、64、67年と優勝。その後、再びセントアンドリュースに専属プロゴルファー、グリーンキーパーとして迎えられる。いまでもセントアンドリュース18番グリーン脇に、トム・モリス・ショップが現存している。

こちらもチェック!

  • レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回はゴルフの草創期を築いた伝説のゴルファー、トム・モリスのあまりに有名な格言を2つご紹介! オールド・トム・モリス(左)と息子のヤング・トム・モリス(右) 届かなければ、入らない トム・モリス ……