【名手の名言】鍋島直泰「ゴルフ上達には、まずスウィングの山を登り、次にゲームの山を登りきることが必要だ」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は旧佐賀藩鍋島家第13代当主にして日本アマ3連覇などゴルファーとしても名を馳せた鍋島直泰の言葉をご紹介!

ゴルフ上達には
まずスウィングの山を登り
次にゲームの山を登りきることが必要だ
鍋島 直泰
ゴルフの才能とは何だろうか?
あるインストラクターによると、ゴルフを始めたばかりのジュニアを見て、その才能があるかどうかの判断を聞かれたときは、次のように答えるそうだ。
ボールを打つフィジカル面の能力――飛距離が出るとか、球さばきが上手いとか――は最初からなんとなく判じられるが、それが後にいいスコアを生み出せるかということは、まったくもって判らない、と。
つまり、いいスウィングをしても、それが即いいスコアに繋がるとは限らないし、逆に変則的スウィングでも、スコアメークに秀でた者もいる。そこがゴルフのミステリアスなところだとも洩らしていた。
その疑問に、鍋島直泰の表題の言葉は答えているような気がする。
ゴルフを始めるとまずスウィング習得が必要になる。スコアをつくりだすためのツールである。次にそのツールを使ってスコアメークをしていくのだが、ここからはまた別の能力、才能が必要ということらしい。
いわばいいスウィングを持ち、その上でスコアメークの才能を持った者こそが、ゴルフの世界で花開いていく。そのどちらかしか持ちえない者は、平凡なゴルファーで終わっていくしかないのだろう。
考えてみれば、スウィングは2秒ほどで終わるもの。パープレーの72ストロークなら、球を打つために体を動かす時間はパットを含めても、(あえて単純化すると)たった144秒で終わってしまう。1ラウンド4時間から5時間かかるほとんどの時間は、コースという自然と対峙し“考える”ことに費やされる。これが鍋島のいう「ゲームの山をどう乗り切るか」ということだろう。
鍋島は、アマチュアイズムを追及し、純粋にゴルフ道を極めたいと思い励んだ人である。日本アマに3連勝するなど、戦前のゴルフ界を牽引した達人が、自らの経験から放った箴言だ。
■鍋島直泰(1907~1981)
なべしま・なおやす。旧佐賀藩主鍋島家の直系で元侯爵。中学時代からゴルフに親しみ、華麗なスウィングの持ち主だった。1933年から3年連続で日本アマチュア選手権優勝。戦後は世界アマチュア・チーム選手権の日本代表を務めるなど、数多くの国際試合に出場。1ラウンドで2度のホールインワンを出して話題になった。ゴルフ以外でのマナー、生活態度にも厳しく、アマチュア道を自ら実践した人として、日本ゴルフ史にその名を刻む。