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【大人ゴルフの歩き方】Vol.41「“ダンドリ”ゴルフの葛藤」

KEYWORD 木村和久

スコアだけがゴルフじゃない! コラムニスト・木村和久が独自の視点から現代の正しいゴルフの在り方を指南。

ILLUST/Shinichi Hoshi

前回のお話はこちら


第41講 “ダンドリゴルフの葛藤

①ゴルフは適当に打てばいいの
②カタチから入るやついるよね


ダンドリが良くてもスコアは伸びず

若い頃、抱き枕相手にエッチの練習をしていた皆さん、その後、願いは叶いましたか? いくらダンドリを決めても、現実は厳しいですよね。オヤジになり、今度は明日プレーするコースの動画を見て、シミュレーションをします。広くて平らで楽勝と思ったらグリーンが速くてあんぐり。スティンプメーターで11フィートだと。それ聞いてないよ~。

ショット前のダンドリはほどほどにです。OB確認、ハザード確認、クラブ選択良し、ライ良し、方向良し、構え良しと指差し確認して駅員さんですか? しかも、そんだけやってショット悪しってなんやねん。

たとえば距離を測定しないと打てない人がいます。すでにそのホールで叩いてるのに残り50ヤードほどを計測しますか? 凄い余裕です。むしろ距離より、どのクラブでいかに打つかが問題でしょう。

この場合、すでにミスが先行しているからベタピンを狙わず、PWで適当に打って転がし、ケアレスミスをしないこと。後は適当にパットして終わらせて、次のホールに向けて頭を切り替えるべきじゃないですか。


●練習

人生は全部練習よ。畳での水泳練習、エッチの練習、そしてレンジでのゴルフ練習も。結果は人それぞれですがね

●グリーンが速くて

レイアウトやアップダウンで聞いてないはよくあるが、これも修業と諦めて納得することが多い。むしろグリーンが速いことで驚く

●指差し確認

いろいろ確認し過ぎて、ショットにたどり着かなかった芸人がいた。聞いたことあります

●残り50ヤード

残り50ヤード以内を計測して、ピンそばに寄った人を今までみたことがない。普通に乗せるだけなら、距離計測しなくてもいいじゃん

体に染み付いたものが生かされる

ダンドリゴルフの先にあるのは感性のゴルフです。それは今まで培ってきた練習と経験が、体に染み付いてできるもの。クラブを持って構えるや、ここはヤバそう、左のバンカーが気になるなど、長嶋茂雄さんが得意としていた勘ピューターが作動し、即座に危険を回避できます。

それは過去のデータが蓄積され、体が覚えているからです。だから何も考えずに打っても、突如ボールが曲がったことありませんか。実は右側の池が危ないと脊髄反射をして危険を回避したのです。
 
この境地に達したら無敵です。距離計測器より自分の見た目を信じますから。例えばピンまで140ヤードと数字が出たとしましょう。自分の勘ピューターは風向き、アップダウン、当日の調子などを自動計算します。そしてキャディバッグを覗くや、7番アイアンが俺を呼んでいると悟り、それを軽めに打ってナイスオンしたんだ、と。ほんまかいな。 

無の境地で心の赴くままゴルフをして、見事はまると3連続パーなんかしたりして。これはゾーンに入っている状態と言われます。ところがしょせんアマチュア、調子が良いと欲をかき、刻むところを狙ってしまい、池ポチャのダボ。確変は3ホールで終了でした。

そのとき、さっきボロクソに書いたダンドリゴルフが生かされるのです。つまり勘はあくまで勘、冴えなくなったら終わりです。距離計で正確な距離を測り、風向き、高低差を考慮して番手を決めて、データと理論のもとに打てばいいのです。あるいはパットならグリーンの速さ10フィート、距離12歩の下り、スライス、通常の3分1の強さで打つと読むわけです。

そして調子が戻ればまた勘ピューター。結局、ゴルフはダンドリと勘ピューターの繰り返しなんですね。

●勘ピューター

全盛期の長嶋監督は冴えまくり、バントのサインを手でバントの真似して指示しました。相手チームもあからさまなサインに、それは罠じゃないかと思ったそうな

●脊髄反射

考える間もなく危険回避するのを脊髄反射と言います。本当は脳が指令してるけど、それだけ反応が速いってことのたとえです

●俺を呼んでいる

天才ミケランジェロは巨大な石を見て、ここに偉大な彫刻が眠っていると言ったとか。ゴルフクラブが光って見える人いるんだね

●ゾーン

どんなスポーツでも、一瞬だがスーパーサイヤ人になれた気がすることがある

●繰り返し

要はハイブリッド車みたいなもので、長持ちの「ガソリン」、瞬発力の「電気」の併用がいい。ゴルフは調子悪く叩いたらダンドリ、調子が良く簡単だったら勘でとかね


今月のまとめ

ゴルフは自分の頭の周りで
慎重に打てという天使と
勘で打てという悪魔が
ささやき合うスポーツ。
最後は悩みすぎて、どうにでもなれと。

案外、開き直れていいかもね


教える人/木村和久

ゴルフ歴32年のコラムニスト。ベストスコア75、2001年鶴舞CCキャプテン杯優勝。『89ビジョン』など新しいゴルフの楽しみ方を様々提案する自称「ゴルフ生活評論家」

月刊ゴルフダイジェスト2024年8月号より