【名手の名言】マイケル・ボナラック「ルールとマナーを勉強したまえ。スコアを口にするのは、それからだ」
レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回はゴルフの総本山R&Aの専務理事を務めるなど、ゴルフ界の発展に寄与し、9月に逝去したマイケル・ボナラックの言葉を2つご紹介!
ルールとマナーを勉強したまえ。
スコアを口にするのは、それからだ
マイケル・ボナラック
ボナラック卿はゴルフの総本山R&Aのセクレタリー(専務理事)を務めていた。
鈴木康之著『ピーターたちのゴルフマナー』(ゴルフダイジェスト社刊)には、次のような推薦コメントを寄せている。
「ゴルフの歴史を守りながら、ゴルフ本来の姿を楽しむためには、ゴルファーひとり一人が自覚をもち、マナーと礼節をわきまえながらプレーすることが大切です」
このボナラック卿、ただの辛口コメンテーターではない。1934年生まれ。12歳でゴルフを始め、1961年から全英アマに5回優勝。冷静なプレーぶりで知られ、とりわけ68年からの3連覇はアマゴルフ史に燦然と輝く大偉業。ゴルファーとしても超一流の達人であった。
冒頭の痛烈な苦言は、甥が所属しているハンスベリック校のゴルフ部を訪問した際の語録をのちに「スポーツ・フィロソフィ」誌が掲載したもの。こうも言っている。
「なろうと思って、私は全英アマのチャンピオンになった。大事なのは目標だ。みなさんにも、もっと視線を上げてもらいたい。決して遅くはない、なにかになろうと決心し、目標を持って欲しいのだ」
ボナラック卿の高潔真摯な姿勢は、ゴルフを始めたての頃に父親から受けた手厳しい叱責に由来する。
遊び半分の練習態度を指摘され、悔い改めると、こう諭されたのだ。
「なろうと思えば、なれる、そう思い込むことが大事なのだ。ひとつだけ覚えておきなさい。まだ見ぬお前の対戦相手は、きょうも練習しているよ」
この挿話は、『夏坂健セレクション』(ゴルフダイジェスト社刊)の第2巻「スコアは天使の匙加減」に収められている。
初めてオールドコースで
プレーするのに
セントアンドリュースの
キャディを連れていかないのは
エベレストにガイドなしで
登るようなものだ
マイケル・ボナラック
セントアンドリュース・オールドコースの難しさは、全英オープンなどのTV中継で大体は理解されていようが、しかし真の難しさは、実際にプレーしてみなければ分からない。
自然のままのハザードの峻厳さは映像で分かるが、落下したボールがどちらにキックするか分からない複雑な起伏、また1日に四季があるといわれる天候の急変は確かに実際肌で感じないと分からないだろう。
セントアンドリュースのキャディたちは、過去200年にわたってノウハウを受け継ぎ、蓄積し、それこそオールドコースを知り尽くしてきた。
彼らの協力がなければどんな名手でも闘えないのは、全英オープンの歴史が証明している。
冒頭の文言は『19番ホールで軽く飲ればいつも心はあたたまる』(リチャード・マッケンジー著、ソニー・マガジンズ刊)の前書きに書かれていたものだ。 01年の刊行当時、ボナラックはセントアンドリュースに本拠を置くロイヤル&エンシェントゴルフクラブ支配人と署名されている。
■マイケル・ボナラック(1934年~2023年)
英国・チグウェルに生まれる。クリケットからゴルフに目覚め、1952年にジュニア選手権で優勝し頭角を現す。英国選手権5回、全英アマ5回優勝。1964年には世界アマで優勝も果たしている。アマチュアとしてのゴルフの実績だけでなく、R&Aの会員になったあとはルールやマナーをはじめ世界のゴルフ界に尽力。欧州PGAの名誉会長も務め、2000年に世界ゴルフ殿堂入りも果たす。2023年永眠。