【私の「とんぼ」愛】林家たい平<前編>「みんなの心の中に“とんぼ”がいるんです」
4月からのテレビアニメ放送を前に「オーイ! とんぼ」好きを自認する著名人の皆さんに“とんぼ愛”を語ってもらうリレー連載。今回の語り手は、“とんぼ愛”の深さは落語界イチと思われる林家たい平氏。目をキラキラさせながら語ってくれた。
“とんぼ理論”が
ゴルフの教科書です
――師匠、ついに「オーイ! とんぼ」のアニメが始まります。
僕もすごくうれしいです。とんぼちゃんについて語れる日が来るなんて。
――とんぼとの出会いは「週刊ゴルフダイジェスト」ですか?
今も雑誌で毎週読んでいるので、単行本より先に進んでいるかな。最新情報もバッチリです(笑)。
――では、まず、一番好きなキャラクターは?
「とんぼしか見ていない」と言ったら、おかしい人と思われちゃいますか?(笑)でも、僕の中ではいつもとんぼちゃんにフォーカスというかスポットライトが当たっている感じで……。
――男性読者はイガイガのファンが多いのですが……。
それもわかります。イガイガに自らを重ねる感じはわかるんですけど、途中、舞台がタイに移り、とんぼちゃんがまったく出ない、イガイガのパートになったときは「あーっ」ってなって、ゴルフダイジェストにお手紙を出そうかと思ったくらいでした(笑)。
――「早くとんぼを出せー」と?
そうそう。でもね、読み進めているうちにちょっと感情が変化してきたんです。僕は今年60歳で還暦です。イガイガはもう少し若いだろうけど、いわゆるおじさんですよね。そんな彼が、とんぼが成長するように成長している様子が……これは、これでいいんですよ。一度挫折を経験した人は、優しく、強くなれる。あんなに「とんぼ、とんぼ」と言っていた僕が、イガイガで2回くらい泣きそうになりましたから(笑)。
――あら。
ちなみに、今日は「天下! たい平」のロケでしたが、(タイの)チョコちゃんの真似して打ってみたら、うまくいきました。
――実際にコースで打っちゃったんですか。
とんぼちゃんもいつもそうしているじゃないですか。コースで遊ぶように打っている。ゴルフって覚えることが多くて、時々、頭がこんがらがってくることがあるんです。そんなときは、とんぼに戻ります。そもそも、とんぼの技術は理に適っているでしょう。とんぼとイガイガの頭をのぞくことによってコースマネジメントの勉強にもなりますし、真似して楽しい。実は「オーイ! とんぼ」を読みだしてからはゴルフの技術解説記事はあんまり……。
――あんまり?
読まないようになっちゃいました(笑)。ごめんなさい。
――「とんぼ」が教科書みたい?
そうなんです。いろんな人のいろんな理論を読んでいると混乱してしまうので、「よし、僕はとんぼでいこう」と。もちろん、できないことが多いんですけど、僕の“脳内ゴルフ”がブレないようになりました。練習場に行ったら、とんぼの真似をしていると思われる人がいて「あ、あの人も『とんぼ』読んだな」ってわかったりして面白いですよ(笑)。あと、関雅史プロにレッスンを受けていて「こうだよ」って言われても「とんぼちゃんはこう言ってたんで」と返したり(笑)。
――関プロの反応は?
僕の“とんぼ愛”は理解してくれているので大丈夫です(笑)。それどころかツテをたどり、原作のかわさき健先生オリジナルのとんぼキーホルダーを入手してくれたんです。これをゴルフの際は必ず持ち歩いています。僕の“ゴルフのお守り”なんです。
いつもラウンド中は持ち歩いている「とんぼキーホルダー」
――バッターボックスで胸のお守りを触る高校球児みたい(笑)。ちなみに、印象に残ったシーンを挙げるとしたら?
まだ単行本にはなっていない部分ですが、とんぼがタイのアジアパシフィックで頑張っているとき、日本ではとんぼの仲間たちがプロテストを受けているじゃないですか、大洗で。プロテストはすごくシビアですよね。そんななか、みんなの心の中にとんぼちゃんがいるんですよ。「とんぼがこの大洗を回ったらどう言うんだろう」と思っているあのシーン、すごく良かった。仲間たちは、とんぼに「ゴルフって楽しい」と再認識させられたと思うんですよね。
シビアな女子プロテストの最中、受験者たちが思うのは「とんぼなら?」。とんぼ、ひのき、小梅、エマ、4人それぞれの笑顔が美しい名シーン
――仲間たちもそれぞれつらい過去を背負っていたりするんですが……。
ほんと、そういう意味でも、みんなとんぼに出会えて良かったと思うんです。みんなの意識が変わった気がする。僕は、もうすぐ還暦ですけど、実際に会ってみたいと思うんですよ、とんぼに。「今、一番会いたい人は?」と聞かれたらとんぼですし、話をしてみたいですねえ。
――島に残っている“仲間”たちもいます。
そう。みんな、とんぼの活躍を自分のことにように喜んで。それってすごいことですよね。ゴルフって基本的に一人ですべてを背負う個人競技ですよね。でも、とんぼの場合は、何て言うのかな……みんながとんぼを支えているし、とんぼもみんなを支えているし。とんぼの、一打を楽しむあの思考、考え方は貴重ですよ。その一打のシチュエーションって一生に一度きり、二度と同じシチュエーションは来ないから。試合だろうが練習だろうが、その一打を楽しむ。そんな意識が僕にも生まれて、プレーも変化してきたんです。
――師匠のプレーやメンタルにも影響を与えた女子高生、大井とんぼさん(笑)。やっぱり、すごい。
>>後編へつづく
林家たい平
落語家。1964年生まれ。埼玉県秩父市出身。武蔵野美術大学造形学部卒業。出演中の「ゴルフ天下! たい平」が4月から「入魂! ゴルフ 天下! たい平」(BSテレ東)としてリニューアル
週刊ゴルフダイジェスト2024年4月16日号より