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【私の「とんぼ」愛】大畑大介<後編>「勇気がある選手は伸びる。ラグビーでもゴルフでも同じでしょ」

4月からのテレビアニメ放送を前に「オーイ! とんぼ」好きを自認する著名人の皆さんに“とんぼ愛”を語ってもらうリレー連載。オンエア直前の今回は前回に引き続き、ラグビー元日本代表の大畑大介氏。熱い男の“とんぼ語り”後編をお届け!

PHOTO/Akira Kato

>>前編はこちら

ひのきは絶対強くなると思う

――お父さんがラグビースクールを探してくれて、大畑少年の世界が一気に広がったというお話でしたね。

そうそう、でも、広がったというよりは居場所が見つかったっていう感じ。「ここだ!」という。とんぼにとってのゴルフが俺にとってのラグビー。

――安心できる場所ができたんですね。

子どもって狭い世界に住んでいるでしょ。学校と家がほとんどですよね。

――学校に居場所がないとつらいなあ。

でも、その子が輝ける場所ってきっとあるんです。だから、小学生向けのスポーツイベントを開くときは、複数の競技にチャレンジできるようにします。ラグビーだけじゃなくて陸上とか、ほかの球技でもいいし何か道具を使う競技とか。その子が輝ける場所を見つけてほしいという願いです。

――大畑さんは、現役時代は右ウイング(14番)のポジションのイメージが強いです。いわゆる走り屋……。

それが違うんですよ。13番(アウトサイドセンター)もやっていて、実は好きなのはそっち。ウイングの時代はとにかく走ることに特化していたんですが、センターをやってみて初めて「おお、こんなラグビーもあるんや」と。いろんなことができるポジションなんです。それこそ3鉄1本でプレーしていたのが、クラブって14本もあるんだって気付いたような……。

――そこでまた世界が広がるんですよね。

でも、正直、最初にセンターをやるときは怖かったですよ。センターは“人を生かす”ポジションだから。でも、やってみたらこれが楽しい。センターは生かすポジションなんだけど、自分が生きるポジションでもあるというのも新たな発見で。基本、ウイングは内側からのパスを受けて大外を走り抜けるけど、センターなら外側につなぐだけでなく内から自分で切り込むこともできる。自分に適性があるのはウイングだと思うんですけど、充実感を得られたのはセンターでした。ラグビーにはいろんな特性が生かせるポジションがあるんですよ。「オーイ! とんぼ」も、とんぼの成長物語だけじゃないのがいい。みんなの成長物語でしょ。サブキャラの名シーンも多いよね。

――印象に残るものだと?

(音羽)ひのきの告白シーンかな。

――14巻のラストですね。九州女子選手権で、ひのきととんぼのプレーオフに入るかと思いきや、ひのきが前日、自分のボールが動いたのに申告しなかったことを申し出るんですよね。それによって、とんぼの優勝が決まる。

九州女子選手権で、とんぼと音羽ひのきのプレーオフ突入……と思いきや、前日の過ちを自ら告白したひのき。勇気を振り絞るひのきの姿にもらい泣きする人が続出

あれ、勇気のいることよ。

――厳しいお父さんに叱られないようゴルフをしてきたひのきですが。

でも、あの勇気の告白によってひのきはグンと成長するはず。ズルは人には見られていないかもしれないけど、自分はわかっている。それを心にしまったままにするのか、明らかにするのか。ひのきが後者を選んだことで「この子は伸びる」と思った。

――ラグビーでシンビンってあるじゃないですか。

イエローカードが出されて10分退場になることね。

――シンビン自体、シン(sin=罪)ビン(bin=置き場)、つまり“反省部屋”というような意味ですよね。

そう。シンビンになった選手はセンターラインそばの待機場所で10分、椅子に座って試合を見ないといけない。はっきり言ってめちゃめちゃつらい。自分が抜けて1人少なくなったチームの戦う一部始終を見なければならないから。でも、それによって自分がどれだけチームに迷惑をかけているかわかる。それを反省して改めた選手は強くなるんです。

――ひのきは勇気を出しましたよね。

だから、ひのきは、どんどん強くなるよ。過ちを犯して悔い改める……その勇気がある選手は強い。俺は勇気を振り絞ってラグビースクールの門を叩いたけど、学生日本代表に選ばれた後、セブンス(7人制ラグビー)の代表合宿をやると聞きつけてラグビー協会に自分で電話したこともありました。で「学生日本代表の大畑ですけど、合宿に行ってもいいですか?」って言ったんです。呼ばれてもいないのに(笑)。そしたら協会の人も「いいよ」って。学生日本代表という看板があったのもあるけど、もちろん勇気も要りました。大学が関東じゃないから、そもそも見てもらうチャンスが少なくて……だったら自分から行って見てもらおうと。プレーを見てもらって目に留まらなかったらそれまでやと。「俺はこんなに頑張っているのに」とか愚痴を言ってる場合じゃなかったですね。

――それで、現在の大畑大介があると。最近、ハーフで「38」の自己ベストを出すも、前半は「49」だったという大畑が……。

今日は、その話はいいの。ラガーマンの集中力はハーフが限界……って話もいいの、しなくて(笑)。でも、ゴルフをしないラガーマンが読んでもハマれるキャラクターがあるのが「とんぼ」の世界。子どもが読んでももちろん面白いし、大人は自分の置かれた状況で見方が違ってくると思う。多彩なサブキャラがうまく合わさってひとつの物語になっていて、「今日もどこかでみんな頑張っているんやろうな」と思う。亘君もね。

――先生、亘君のスピンオフ希望の注文入りました(笑)!

大畑大介

1975年11月11日生まれ。ラグビー元日本代表。連載「待ってろ、ウエハラ」で小誌読者にはすっかりおなじみに

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