【キミこそ王子だ】Vol.290 中学2年にして驚異の完成度! “軟らかいシャフト”が生んだ軸ブレゼロスウィング
雑巾王子こと武市悦宏プロが、全国の有望なジュニアゴルファーのもとを訪れ、大人ゴルファーにも役に立つゴルフのヒントを探る当連載。今回の王女候補は兵庫県出身、松蔭中学校2年の後藤あいさん。今年「関西中学校ゴルフ選手権」で優勝した注目株だ。振りよし、リズムよし、キレよしと3拍子揃ったスウィングに武市大興奮!
THANKS/六甲国際GC
今回の王女候補
後藤 あいさん
ごとう・あい ●主な戦歴/2022 日本ジュニア選手権12~14歳の部 4位タイ ●ベストスコア 67(東名CC) ●トレーニング/体幹トレーニン&ランニング ●練習/週2~3回150球
「”でら”上手い! カッコイイ!」ひと振りした瞬間、武市は叫んだ。
そのスウィングの持ち主は、後藤あいさん。祖父と父の勧めでゴルフを始めたのが3歳。現在、中2だが「遠くから見たらプロ!」と武市が言うように、スウィングの完成度はかなり高い。ドライバーの飛距離も軽く250ヤードはいっている。
ゴルフの師匠は多くのプロを教えるコーチの石井雄二氏。小学3年からのお付き合いだそうだ。
「コーチからは何を言われる?」
「軸をブラさずに打てと言われます」
その言葉どおり、あいさんのスウィングはブレがなく安定感がある。
「人間の体のなかで、腰部は可動域が狭い。だから、腰を使って飛ばすのは難易度が高い。さらに動きにくいものを一生懸命動かすことでケガもしやすい。それに対し、胸部や肩甲骨周りは可動域が広い部分。あいさんは、その動かしやすい部分を、動かせる範囲で動かしたスウィング。だから無理がなくすごく自然。リズムやキレがいいのもそのせいだろうね」と武市。
実は、あいさんが使っているシャフトは、競技ゴルファーにしては軟らかい。
「ずっと軟らかいシャフトを使っているの?」
「はい。コーチに言われてそうしてます」
それを聞いて、武市は「彼女のスウィングは軟らかいシャフトが作ったといっても過言ではないのかも」と言った。真意は次のとおりだ。
「軟らかいシャフトは、よくしなってくれるので適切に振ればヘッドスピードが上がり飛距離を出しやすい。でも、タイミングが合わないと、曲がってしまうよね。それを“操る”には、コツが必要なんだ。腰を切ったり、腕を振りにいったり、足を踏み込んだり、手元を目標方向に加速させたりするのは、全部NG。とにかく自分ではなくクラブに仕事をさせること。これが大切。あいちゃんは、あえて、そういった特性を持つ軟らかいシャフトを使うことで、軸ブレしないスウィングを身につけたんだね。いや、見れば見るほど素晴らしいスウィングだよ!」
ここまで完成度を高めるには、相当な練習したはず、と思いきや「ゴルフの練習は1日おきです」というからビックリ! 中学ではソフトボール部に所属しピッチャーやショートを守っているそうだ。
「だから、肩甲骨周りが柔らかいのか。岡本綾子プロや渋野日向子プロもソフトボール経験者だよね。体格も似ているし、ますますポテンシャルの高さを感じる。とにかく、控えめに言って、あいちゃんのスウィングは、非の打ちどころがない!(笑)」
「ありがとうございます」
「このままブラッシュアップしていけば、世界で活躍できるはず」
「はい。私も海外には行きたいので、がんばります!」
“ダイヤの原石”を見つけ、嬉しそうな武市であった。
週刊ゴルフダイジェスト2023年1月3日号より