【渋野日向子プレス/再録①】全英に勝ったときより、(米ツアーに)正直、ちょっと興味が出てきました。日本女子オープン
プロゴルファー中村修(みんなのゴルフダイジェスト)が”しぶこ”こと渋野日向子を追っかけて、試合の準備や戦いぶりを観察してお届けした、週刊ゴルフダイジェストの連載「しぶこプレス」。2019年の10月から掲載した10話分を年末年始にデイリーで再掲載。初回は女子ゴルファー日本一を決める「日本女子オープン」です。
本当に世界が見えた1週間、日本女子オープン
初日から7000人以上が観戦に訪れ、たいへん盛り上がった日本女子オープン(三重県 COCOPA RESORT CLUB 白山ヴィレッジGC QUEENコース) 。
僕がこれから密着していく渋野日向子選手の予選ラウンドは、昨年優勝の元世界No.1、ユ・ソヨン選手、国内メジャー連覇を狙う同じ歳の畑岡奈紗選手という実力者の組み合わせでした。
渋野選手は、練習日、成田美寿々選手、青木瀬令奈選手らとコースを確かめながら、和気あいあいと回っていました。試合になってどんな空気になるのかなと思っていましたが、初日は、渋野選手がゲームを支配する場面もあったんです。本人も「今年一番ショットの調子がよかった」というくらい。
6番ではダブルボギーもありましたが、すぐに2つバーディを並べ、後半も4バーディ。
よく、渋野選手の「バウンスバック率」の高さが言われますが、前半と後半のバウンスバック力も高いんです。
一方、畑岡選手は1番から2連続ボギー。しかし、ここから”崩れない”底力を見せてくれます。
2連続ボギーの後、フェアウェイキープを心がけて抑えて打っていたそう。そして7番でボールの位置が体から少し遠いことに気づき、近くに修整したそうです。するといいショットが出始めた。
その後は、7バーディ・ノーボギーで2日目以降にもつながっていく。
こういうミリ単位の調整をラウンド中にできるのが、経験も含めた技術力の高さです。
また、ユ・ソヨン選手は、安定の4バーディ・ノーボギーのラウンド。ショートゲームの上手さが光りましたね。ショットはそこまで調子がよくなかったですが、大きく曲げてボギーにもしないんです。
そして2日目、渋野選手はパットが決まりませんでした。
「今日は、2人とのレベルの差を感じた。ショットもだが、一番はパッティング。私が何でもないところから3パットするのをOKパーにしたり、それを入れるか、というバーディパットを決める」と言っていましたが、2人の技術が刺激になったと思います。
軽く打って距離感を合わせる技術
僕が見て、2人はアンジュレーションがあるグリーンでも、ロングパットでタッチがすごく出ていましたし、ソヨン選手は初日に、ピンが近く、上げるアプローチが必要な場面で、バンプ&ランという技術を使い、上手く寄せてパーとしていましたが、同じ状況で渋野選手は6mオーバーしてのボギー(3日目)。
また、ソヨン選手は抑えたショットで距離を調整したり、畑岡選手は体全体でスウィングスピードを調整しながら打つからインパクトが強く入りすぎることがない。
渋野選手のイメージは、力技、根性でバーディをとっていく。
“振れる”ことは彼女の強みですが、アゲンストに反応して強く入ると曲がったりする。
1番手上げて軽く打つことができるようになれば、さらに幅は広がると思います。
ただ、渋野選手は3、4日目、パットが入らなくてもピンを狙って攻め続け、ボギーから崩れそうに思えても、3日目は後半4つ戻し、より風も出てきて難しいピンポジとなった4日目は1バーディ・1ボギーで収めました。
攻めることはリスクも伴います。
しかし、これができるのは攻めると決め切るメンタルの強さと、しっかり振れるという強みのためです。
試合後、渋野選手は開口一番「情けないの一言です」と言いました。
パットが入らず、アプローチを寄せきれずの自分のゴルフ…。でも、それは素直さも含め、彼女のこれからの伸びしろでもあるのです。
「全英に勝ったときより、(米ツアーに)正直、ちょっと興味が出てきました」と渋野選手。
ミヤギテレビ杯に続き畑岡選手と回り、その技術や経験を目の当たりにして、本当に”世界”が見えてきたのだと思います。
週刊GDより
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