【渋野日向子プレス/再録⑤】「スウィンギングスカート」で、1ヵ月取り組んだ「低い球」を実戦テスト。2度目の海外ツアー、台湾
渋野日向子プロのプレーに、みんなのゴルフダイジェストのプロゴルファー・中村修が密着取材した、週刊ゴルフダイジェスト連載「しぶこプレス」を再録。今回は、2度目の海外でのプレーとなった台湾での試合をレポートします!
国内では三菱電機レディスが行われた週に、渋野選手は台湾で行われた米ツアー「スウィンギングスカートLPGA台湾選手権」に主催者推薦で出場しました。
優勝した全英女子オープン以来の海外試合
渋野選手にとっては、優勝した全英女子オープン以来の米ツアー。
国内の賞金女王争いを考えれば日本ツアーに出場したい部分もあったと思いますが、世界ランクポイントの配分が高く、ここで好成績を残せれば、東京五輪の出場権獲得に向けて大きなステップとなることを考えての選択だったようです。
4日間を終えての結果は、通算3アンダーで出場80人中39位タイ。
全英女王としては物足りなく思えるかもしれませんが、渋野選手にとっては結果以上に大きな収穫のあった1週間だったのではないでしょうか。
というのも、会場となった台湾のミラマーゴルフ&カントリークラブは1週間を通しての強風。
日本とは違う芝質とも相まってシビアなコンディションが渋野選手を苦しめましたが、トッププレーヤーたちの風や芝への対応力を間近で見ることができ、渋野選手自身もそれらにどう対処するかを実戦のなかで経験できました。
ショットに関しては、青木翔コーチと約1ヵ月前から対策してきたという「低い球」を、実戦のなかでかなり有効にテストできたようです。
具体的にはインパクトで右足をベタ足気味に使い、ボールを長く押して低い球を打つテクニックですが、試合を通して「だんだん距離感が合ってきた」(渋野選手)と手ごたえを口にしていました。
台湾の強風のなか、低い球を実戦で磨いた
ここ数試合の課題でもあったアプローチも上向きで、とくに最終日はやわらかい球で見事な寄せをいくつも見せました。
初日にはイ・ジョンウン6選手(全米女子オープン優勝)やハンナ・グリーン選手(全米女子プロ優勝)といった実力者と同組で回り、彼女らが台湾の芝でどんなアプローチをするのかを直接見ることができたのも、大きな経験になったでしょう。
4日間全体を見ると、渋野選手のショットの状態は上々で、基本的なショット力は米ツアーでも十分通用するように見えました。
そして日本ではできない貴重な経験をたくさん積んで、4日間のなかでもどんどん成長している様子がうかがえました。
優勝したネリー・コルダ選手は18アンダーのビッグスコアで、渋野選手は「レベルの差を痛感しています」と話していましたが、渋野選手はまだツアールーキーで成長過程の真っただ中。
スコアメークの面では、積極的にピンを狙うスタイルが裏目に出てスコアを崩すシーンもありましたが、これは「いまはまだマネジメントでスコアを作る時期ではない」という青木コーチの指導に基づく織り込み済みの結果でもあります。
小細工をしてスコアを作るよりも、リスクを覚悟して逃げずに攻め、その結果何ができて何ができないかを身をもって知ることが大事な時期。
悲観する必要はまったくない、むしろポジティブな面が目立った1週間だったと思います。
米ツアーはまだ2戦目の渋野選手ですが、今大会はパンフレットの表紙にも写真が使われるなどの注目ぶりで、プロアマでは主催者のスウィンギングスカートファンデーションの会長と同組でプレー。
「台湾にしぶこ応援団を作りたい」という話まで出たといいます。
試合中には、日本人だけでなく台湾人のギャラリーからも垂れ幕つきの声援を受け、本人も「米ツアーの雰囲気もいい。台湾の人にも『ヒナコがんばれ』と言ってもらえて、うれしい」と話すなど、想定外の歓待ぶりだったようです。
さらに、同組の選手からも「いつもスマイルでいい選手だねと声をかけられ、来年米ツアーに来たら歓迎するとも言われた」(藤野キャディ)と大人気。
これほどの人気者ぶりを実感すれば、いまは「アメリカに行く気はない」と言っている渋野選手の心境にも、何らかの変化があるかもしれませんね。
週刊GDより
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