「自信が自身を生む」好循環に入ったフィナウが勝利を量産中
強いけれど勝てない“無冠の帝王”と言われた時代はどこへやら。トニー・フィナウがシーズンをまたいで今年3勝目を挙げ、世界ランクトップ10入り目前(現在12位)だ。
PGAツアーの「カデンスバンク・ヒューストンオープン」最終日、4打リードの単独首位からスタートしたフィナウは前半31のハイペースで一時後続を8打引き離し、そのまま圧勝を飾った。
16年のプエルトリコオープンで初優勝したあと、勝ち星から見放され、21年のザ・ノーザントラストで2勝目を挙げるまでの5年間で、ベスト10入りは36回。勝てないのは「性格がやさしすぎるから?」「いい人だから勝てないの?」と言われ続けたもの。しかし今年の彼はひと味違う。
21-22年シーズン秋には3Mオープンに続きロケットモーゲージクラシックで2連勝。P・カントレーらビッグネームに5打差をつけての勝利は価値がある。今回強風が吹いたヒューストンでも4日間60台を並べ、危なげなく先頭でゴールを駆け抜けた。
4打差の2位に入ったT・アレクサンダーは「フィナウだけ違うコースを回っているようだった。彼さえいなければ優勝できたのに……」と悔しがった。
1年少し前まで、いいところまで行きながら負け続けていたフィナウが、別人のように勝利の量産態勢に入ったのはなぜか? 本人はこう説明する。「勝てなかった頃も信念を持って戦ってきた。でも優勝して得る自信は計り知れない。自信が自信を生む、いわば良い意味の循環があるような気がする」
だから雪だるま式に優勝が向こうからやってくるのだと。だがもちろん自信だけが優勝の理由ではない。ヒューストンではティーショットの貢献度が全体の2位。パット貢献度も2位。ティーショットが飛んで曲がらずパターが入れば勝てて当然。
これでキャリア5勝目。33歳のフィナウはどうやら円熟期に入ったようだ。
週刊ゴルフダイジェスト2022年12月6日号より