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【渋野日向子プレス/再録⑧】バックナインでしぶこチャージ。逆転優勝を飾った「エリエールレディス」

渋野日向子プロのプレーに、みんなのゴルフダイジェストのプロゴルファー・中村修が密着取材した、週刊ゴルフダイジェストの連載「しぶこプレス」を再録。今回は来季のシード権が確定する「エリエールレディス」。前週の予選落ちから信じられないバウンスバック劇を演じた試合をレポート。

最初から思い切り攻める!

前週の伊藤園レディスで予選落ちを喫した渋野選手ですが、「エリエールレディス」ではなんと優勝! 我々の予想を超えるスーパーバウンスバックを果たしました。

「予選通過が当たり前じゃないっていうのがわかったぶん、最初から思い切り攻めなきゃいけない」

試合前のインタビューでそう語った渋野選手は、初日から5アンダーの2位につけます。

2日目もショットが冴え、15ホールでパーオンするなどバーディチャンスを量産しますが、パットを右に外し決めきれない場面が目立ちました。

5バーディ・3ボギーとまずまずのスコアですが、この日は鈴木愛選手が7アンダー、シン・ジエ選手も3アンダーで2人ともトータル8アンダー。賞金女王を争う2人に順位で先行される形となりました。

2日目のラウンド後、キャディとともにパット矯正に取り組む渋野。青木コーチのアドバイスが”しぶこチャージ”につながった

渋野選手はラウンド後、さっそく不調だったパットの矯正に取り組みます。キャディに頭の右側を手で押さえてもらい、その状態でパッティングするというドリル。

青木翔コーチは帯同していませんが、映像で不調の原因を見定め、電話で指示したそうです。

「インパクトからフォローで頭が右にズレ、ボールを目で追いかけていました。これでは球がつかまらないので、それを矯正するのが目的でした」(青木コーチ)

3日目、序盤はパットの調子が上がらないながらも5番、6番で連続バーディ。その後は練習の甲斐あってショットとパットが噛み合い、6バーディ・ノーボギーの好スコア。首位の森田遥選手と2打差の7位タイで最終日を迎えます。

最終日は鈴木選手とのガチンコ勝負。

最終日のラスト9ホールでチャージが実現

2番で鈴木選手がバーディを奪って先行しますが、渋野選手も3番で追いつき、5番、7番は2人ともバーディ。しかし、9番パー5では、鈴木選手が残り65ヤードからの3打目を1メートルにつけてバーディを獲ったのに対し、渋野選手はバンカーから寄せ切れずパー。鈴木選手にリードを許してしまいます。

しかし迎えたサンデーバックナイン。いきなり”しぶこチャージ”が炸裂。

青木コーチが「折り返しの10番でバーディを獲れれば乗っていける」と語っていたとおり、10番でバーディを奪った渋野選手は続く11番でも連続バーディで流れをつかみます。

鈴木選手も12番でバーディを奪い追いつきますが、明暗が分かれたのは15番パー4。渋野選手がピン手前約4メートルのバーディパットを決めると、鈴木選手は1.5メートルを決めきれず、渋野選手が一歩リードを奪います。

このときの鈴木選手の悔しそうな表情が勝負の熾烈さを物語っていました。

17番パー5。2打目でグリーンを狙うもボールは左へそれ、池ギリギリのところで止まった。「ドキッとしました」と語った渋野はしっかりパーをセーブ

これが響いたのか、鈴木選手は17番パー5でティショットを池に入れてボギー。渋野選手は攻めの気持ちを崩さず2オン狙い。左に巻いたボールが池ギリギリで止まる運も味方につけパーをセーブ。

鈴木選手は18番でバーディを奪うも、19アンダーでフィニッシュした渋野選手に1打及びませんでした。

渋野選手が18番に差しかかったところで突然の嵐。冷たい風と強い雨が後続の選手たちを苦しめました。森田選手が17番、18番を連続ボギー、シン選手は16番、17番で連続ダブルボギーというまさかの展開に。

9月のデサントレディースの再来のような、驚きの逆転劇となりました。

試合前「賞金女王のことは考えず、自分のためではなく、応援してくれるファンやサポートしてくれるみんなのために頑張ろうと思った」と語った渋野選手。

今年多くの試合でペアを組んだ定由早織キャディとはまだ未勝利だったので。一緒に1勝したいという思いが強かったようです。

気持ちだけは負けないように!

試合後、「これまでは気持ちの面でも負けていた。レベル、技量がまったく違うなかで何が競えるかといえば、そこは気持ちの問題。やっぱり気持ちで負けないようにと思いました」と話した渋野選手。

「自分のためではなく、みんなのために頑張ろうと思った」という渋野選手。前週の予選落ちから見事なバウンスバックでルーキーイヤー4勝を飾った

何度も惜敗してきた鈴木選手に土壇場で競り勝ったこの試合は、運を味方につけたこともありますが、その運を引き寄せたのも渋野選手の気持ちの強さだったと思います。

この試合で渋野選手はまたひとつ成長したはずです。

週刊GDより

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