【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.105「世界共通のスウィングを目指す」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Takanori Miki
日本オープンで95年ぶりにアマチュア優勝をした蟬川泰果くんは21歳です。今後、男子ツアーも女子のような若年化の流れは止められんでしょうね。
良し悪しは別にして、昔と今のプロは育ち方がまったく違うんです。今の子らは、ショット、アプローチ、パッティング、そしてメンタル、トレーニングと、それぞれにコーチやトレーナーがおる。スウィングコーチにはビデオなんかでスウィングを送り、指摘されたことを直すというやり方が多いみたいです。
僕らのときは、ゴルフ場付きのプロに教わる師弟関係やったから、師匠が打っているのを見てハッと気づくことでスウィングを直していった。だから10年前の師匠のクラブの入り方なんかもハッキリと覚えてます。
僕は研修生で入った作州武蔵CCの先輩プロの高松志門さんに弟子入りさせてもろうたんですが、最初に見せてもらったんが、マスター室前のテラスから植え込み越しにコースに向かって3番アイアンで打つ練習。ボールはティーやなしにレンガの上に乗せてあって、それをダフらずに何球も打つ。そのうちに50メートル先の松の枝の間を抜くショットを一番下の枝から上の枝まで打っていくんです。
すごいもん見た、これこそ実戦のための練習や。「あそこを狙ってこの球で打つ」いう気持ちがスウィングを作るんやなと思いました。でも今の子らの目的は、「よいスウィングをする」こと。それができればミスをしない、曲がらないという理想のスウィングの追求です。
今はネットで情報が簡単に手に入るので、ジュニアの頃から世界共通の理想のスウィングを目指す子が多く、それがツアーの若年化につながってもいます。でも、いつもよいライから打てるならいいけど、ディボット跡や傾斜からは理想のスウィングはできません。それでそのうち調子を崩し、結果が出んようになったらコーチを代えるいうパターンも多いようです。
僕の師匠は生涯、高松志門です。ゴルフが好きやったから。今の子らは、自分のスウィングを世界の理論に近づけるためにコーチと契約する。そこは昔との大きな違いや思います。
「理想のスウィング情報は、ネットで簡単に手に入ります」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年11月22日号より