本物のハンドファーストを手に入れる!<後編>“正しい順番”で動かせば、ハンドファーストは自然にできる
ハンドファーストは意図的に作るものではなく、自然になるのが理想だとプロコーチの内藤雄士氏は言う。では、自然なハンドファーストのインパクトを手に入れるにはどうすればいいのか。さらに詳しく聞いてみた。
TEXT/Kenji Oba PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、Blue Sky Photos THANKS/ハイランドセンター
解説/内藤雄士
プロコーチ。日大ゴルフ部時代に米国にゴルフ留学し、最新のゴルフ理論を学ぶ。その後、丸山茂樹、平塚哲二、矢野東、大西魁斗らのコーチを務める。日大ゴルフ部コーチ。03年レッスン・オブ・ザ・イヤー受賞
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- レッスンのキーワードのひとつでもある「ハンドファースト」。アマチュアにとってはハードルの高いテーマといえるが、「そもそもハンドファーストに打とうとするからダメなんです」と語るのは、プロコーチの内藤雄士氏だ。その真意を教えてもらった。 TEXT/Kenji Oba PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、Blue Sky Photos THANKS/ハイ……
7番アイアンならシャフトの傾きは4度以内が理想
ハンドファーストをイメージするとき、野球のピッチングを思い浮かべると分かりやすい、と内藤雄士氏は語る。
「ピッチングではセットアップから左足を踏み込み、腰が回転して胸が正面を向き、ひじが前に出てきて、最後に手首から指へと力が伝わり、ボールをリリースするはずです。これがまさにハンドファーストです。手元が先行し、最後にボールをリリースすることで全身のエネルギーが伝えられるのです。ゴルフも同じでハンドレイトではなく、ハンドファーストでインパクトを迎えることが不可欠です。ただゴルファーはそれぞれ体格や柔軟性が違うので、ハンドファーストの度合いは変わります。ですから正解はないんです。ハンドファーストが強めのD・ジョンソンやJ・トーマスも正解なら、やや弱めの松山英樹選手やJ・スピースも正解なんです」
ハンドファーストに正解はないものの目指すべき理想はある、と内藤氏は教えてくれた。その目安がシャフトの傾きは、バウンス角の範囲内で収めるというものだ。
「7番アイアンのバウンス角は平均で4度程度です。その範囲内でハンドファーストになるのが理想と考えていいです。時計の秒針で1秒は6度ですから1秒にも満たない傾きです。ですからアマチュアが思うほど、ハンドファーストの傾きは強くないはずです」
ハンドファーストの傾きは、なぜバウンス角の範囲内なのか?
「SWにあるバウンスは、砂に埋まらないなど、お助け機能のイメージがあると思いますが、アイアンにも必ずバウンスが付いています。そのバウンスにはヘッドを走らせる(ソールが滑る)機能があります。バウンスが地面に当たることでヘッドを前に押し出してくれるわけです。つまりヘッドスピードが上がるんです。そのバウンスを生かすには、バウンス角の範囲内でシャフトを傾けるのが理想。そうすることでクラブの性能を最大限引き出せますから」
ハンドファーストの度合い=バウンスの角度
7Iの平均バウンスは「4度」
バウンス角の範囲内でシャフトを傾けるのが理想的なハンドファーストとなる。それ以上、前に傾ければ、リーディングエッジが刺さるなど、ミスにつながるだけだし、クラブの性能も生かせない
またハンドファーストの度合いは、グリップの形にも影響するという。大まかに言えば、ストロンググリップはやや強め、ウィークグリップはやや弱めのハンドファーストになるのだ。ストロングのD・ジョンソンやJ・トーマスは確かに強めになっているし、ウィークの松山英樹やJ・スピースは弱めと見事に一致している。
「アマチュアのハンドレイトを直すには、ややストロンググリップに握るのも有効な方法です。D・ジョンソンのようにハンドファーストが強くなりやすいことを利用するわけです。一度、試してみる価値はあると思います」
アイアンのバウンス角はモデルによって異なるが、おおむね4~6度程度と考えていい。その範囲内でシャフトを傾ける、これが理想的なハンドファーストの正体なのだ。
手元が先行するからエネルギーが伝わる
ストロングに握るほどハンドファーストは強くなる
グリップの影響は大きい
ハンドファーストの度合いはグリップの形にも影響する。ストロンググリップならハンドファーストは強めに。D・ジョンソンのインパクトは手元が左太ももの外側に近くなる。一方、ウィークは弱めになる。松山英樹のインパクトは左太ももの内側で収まっている
ハンドファーストの度合いは6度以内で収める
7番アイアンのバウンス角の平均は4度程度。モデルにもよるが、ほとんどのアイアンは6度以内で考えていい。つまり時計の秒針で考えると1秒以内の範囲で収めればいいのだ。ハンドファーストの傾きはそれほど強くないのがわかるはずだ
適正なハンドファーストをつくる3つのポイント
目指すべき理想のハンドファーストはわかったが、そこにたどり着くためにどうすればいいのか?
「ハンドファーストは自然に起きるものです。ですから手元を先行させようという意識は必要ありません。アマチュアのレッスンでもハンドファーストを意識させるものは多いですが、それがかえって誤解を招き“手元だけ”が先行したり、手や頭が突っ込んでしまうような動きになってしまうのです。まずはスウィングの動きを見直すことです。具体的にいえば、体をどう動かすか、という動きの順番を意識すべきでしょう」
アマチュアは手元を出す意識が強すぎる
ハンドファーストという言葉に引っ張られるアマチュアは多いはず。その言葉通り、手元を先行させる意識が強すぎると、手元だけが前に出たり、手と一緒に頭まで前に突っ込むなどのエラー動作になりやすいのだ
では動きの順番とは、どういうものなのか?
「下半身リードによって体が回ったトップを作り、そこから左足を踏み込み、体を回転させながら腕を追従させ、手元が戻ってクラブがリリースされる。これができれば、適正なハンドファーストは完成です。アマチュアの場合、手打ち、体が回らないなどがハンドレイトの原因ですから、インパクトまでの右サイドの動きを見直すことから始めるといいです。
テークバック>トップ>ダウンスウィング>インパクトの流れで意識してほしいポイントは3つあります。トップでは右股関節の折り込みと胸椎の回旋によって体をしっかり右側へ回します。ここができると手上げが解消されるのでハンドファーストに一歩近づけます。そして切り返しからダウン、インパクトにかけて大事なのが両わきの締まりです。ダウンでは右ひじが下を向くように腕を外旋できるとクラブがオンプレーンに乗せやすくなり、手元が先行(まさにハンドファースト)したインパクトになります。あとは左わきです。プロでもよくありがちなのが左わきが開いてしまう動きです。左わきが締まっていれば、ハンドファーストが強くなりすぎず、適正な角度でインパクトできます」
内藤氏が指摘する3つのポイントを見直すことで、自分に適したハンドファーストを身に付けよう。
テークバック~トップ
右股関節の折り込みと胸椎の回旋で体を回す
〇体が右を向く
×体が右を向かない
まずはいい位置にトップを持ってくることだ。そのためにも股関節と胸椎を使い、しっかり体を回したい。体が回れば手上げは解消され、インサイドからクラブを下ろしやすくなる。これがハンドファーストへの第一歩だ
切り返し
右ひじが下を向くとクラブがプレーンに乗る
〇右ひじが外旋=オンプレーン軌道
×右ひじが内旋=アウトサイドイン軌道
トップの右ひじの向きに注目。右ひじが下を向いて(右ひじの外旋)いれば、クラブをオンプレーンに乗せやすくなる。重いバットはオンプレーンでないと振れないようにプレーンに乗れば自然なハンドファーストになる
ダウン~インパクト
左わきが締まればハンドファースト完成
〇左わきが締まる=イントゥイン軌道
×左わきが開く=インサイドアウト軌道
最後が左わきの締まりだ。ハンドファーストが当たり前のプロや上級者は左わきが開きやすい傾向がある。ボールを強く押そうという表れだが、そうなるとインサイドアウト軌道が強くなり、ハンドファーストが強くなりすぎるのだ
ハンドファーストへの3ドリル
(左)右から左へ2個ボール押し
(中)ヘッドカバー右わき挟み素振り
(右)ボール両腕挟み素振り
通常のボール位置と右足の外側に2個ボールを置き、それをヘッドで押し込む練習はハンドファーストを体感しやすい。あとの2つは両わきを締めるドリルだ。わきが締まることでアウトサイドイン軌道は抑えられる。オンプレーンに近づけば、ハンドファーストも自然に作れる
週刊ゴルフダイジェスト2022年11月8日号より