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【岡山・ラーメン】"しうぇー"硬さが癖になる。鶏の街で生まれた"笠岡ラーメン"

北は北海道から南は沖縄まで、日本全国で親しまれるご当地ラーメン。「方言の数だけある」と称される一方、町おこしのため半ば強引に作り出されたモノまであるのも事実。そんな中、岡山県笠岡地区で古くから愛されてきた“笠岡ラーメン”は、街の歴史とともに育った、いわば「地元に根差した1杯」だ。

ゴルフ場メシ向上委員会は「高くて」「マズい」と何かと不評の多いゴルフ場の「味改革」に役立つヒントを探しながら、誰もが食べて旨いと感じる味覚の標準値を探ります。「旨いの基準」は本家本元、本流の味を提供し続ける伝統店、人気店のメニューを考察し、多くの人に支持される味の秘密に迫るものです

3種の材料から生まれる奇跡の味

笠岡ラーメンを語るにあたって無視できない要素は2つ。1つはこの地に根付く“麺食文化”、もう1つは“かしわ肉”の存在だ。

備中、とりわけ瀬戸内海に面した一帯は温暖で雨が少なく、小麦の栽培に適していたことにくわえ、海が近く良質な塩が手に入りやすかった。

さらにこの一帯は河川が多く、製粉するための水力にも恵まれていた。これら理由が重なり、備南地域は今も昔も製麺業者の密集地帯である。

また、雨の少なさは養鶏産業をも後押しした。雨量の少ない瀬戸内地域でも、とりわけ雨の少なかった笠岡地方は、日照時間が長いことから鶏の産卵率が高く、これを目当てに養鶏場が集中した。

卵を産まなくなった老鶏、すなわち“かしわ肉”が安く手に入りやすい環境だったのだ。

ある意味、必然的に生まれた“かしわ麺”は、昭和初期から当たり前のように食べられてきたが、実は近年まで名前すらなかったと言う。

2000年頃ようやく“笠岡ラーメン”と名付けられたこの1杯は、2010年にご当地ラーメンの総本山「新横浜ラーメン博物館」出店を契機に、全国のマニアたちの注目を浴びることになる。

材料は鶏肉と水、醤油のみ。
噛みしめるほどに味がでる

中華そば「坂本」の笠岡ラーメン

「スープに鶏ガラを使っていること」「具材としてかしわの煮鶏が入っていること」。

非常にシンプルな定義付けの笠岡ラーメンを知るには、現存する最古のお店「坂本」へ行くと手っ取り早いと地元の方に聞き、早速お店へ。

老舗感たっぷりな暖簾をくぐると、壁に貼られたメニューがまず目に入る。

メニューはこの2皿だけ!

ちなみにメニューと言っても“中華そば(大盛)”と“並”のみ。シンプルすぎるド直球に一瞬怯むが、並を頼むことに。

「材料は鶏肉と水、醤油だけ。簡単でしょ? ウチは隠すところなんて何もないですから、どんどん真似してください」

とは2代目にあたる大将の坂本英喜さん。にこやかに語るが、5分後、スープをひと口すすったと同時に「こんなの真似できるわけがない!」となる。

甘みと旨みが口の中で絡み合ったのち、醤油のキリっとした味わいが追い打ちをかけ、ダメ押しに鶏油の甘みが覆い被さってくる。もう味の深みが尋常ではない。

材料は醤油・水・鶏肉のみ

たっぷり乗ったかしわ肉もまた醤油で炊いたのみ。コリコリした食感はかろうじて理解できるが、この旨味がどこから来るのか、手品にでもかかった気分だ。

歯でプツンと切れるほど固めに茹でられたストレートな細麺への絡み具合もばっちりで、甘めに味付けされたシナチクも良く合う。斜めに切られたネギもまた、憎いほどアクセントになっている。

かしわ肉、醤油、水だけのシンプルな材料から成る1杯と、60年以上にわたって向き合ってきたからこそ出せる味わいに、凄みを感じずにはいられない。

養鶏と製麺の街で生まれた1杯は、やっぱり地元に根差していた。

店主の人柄もあるのだろう、これといった広告をしていないにも関わらず、全国からファンが押し寄せランチタイムには長蛇の列ができる

中華そば 坂本
岡山県笠岡市中央町34-9
TEL.0865-63-6454
営業時間:9:30~14:30
※スープがなくなり次第閉店
定休日:日・木・祝日

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