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「ないものを嘆くより、あるもので勝負する」パインハーストで行われた障害者ゴルフ選手権を詳細レポート

7月に行われた全米ゴルフ協会(USGA)主催の障害者ゴルフ大会「アダプティブオープン」。世界11カ国から96人が参加した。2028年のロサンゼルスパラリンピックで正式種目入りを目指す“前哨戦”を追った。

PHOTO/Yasuo Masuda(JDGAオフィシャルカメラマン)

>>明るい笑顔に驚異のスウィング!
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「この大会を行うことでIPC(国際パラリンピック委員会)にも好印象を与えられ、正式種目に入る可能性が高まる」とUSGAチーフチャンピオンシップオフィサーのジョン・ボーデンハマー氏。USGAが障害者ゴルフ選手権を開催するのは史上初。全米オープン、全米女子オープンなどと並ぶ公式競技として位置付ける試合だ。

大会に“日本チーム”3名を派遣したNPO法人日本障害者ゴルフ協会(JDGA)代表理事の松田治子氏は語る。「今までと全く違い、プロの大会さながら。大きなテントで選手控室やメディアルームを作り、ドアの開閉や駐車場整理をする係員も。飲食もフリーで提供されます。ボランティアは400人以上。各ホールはもちろん、会場の各所で活躍されていました」

会場は名門・パインハーストNo.6

レベルは高い。出場枠の約3倍の299人が応募し、ハンディキャップインデックスの低い順に出場者を決定したので世界から精鋭が集結。

「日本から4人応募し、HC13台の選手はダメでした。男子はHC6くらいが基準のようでした」

会場はパインハーストの8つのコースから、カート道などのアクセスがいいNo.6を選び、車椅子でのバンカーの出入りをしやすくするなどマイナーチェンジ。会場に段差はなく、全てスロープがある。

「USGAは放映権料などの潤沢な予算があるのでしょう。参加費は3日間で180ドル。我々は助成金で参加しました」

アダプティブとは英語で「適応する」の意。米国では障害者を表す言葉としても使われ始めている。障害のある人は“できない人”ではない。適切な環境があれば能力を十分に発揮できる。自分を理解し、道具などを整え、挑戦する達人だ。ゴルファーならばアダプティブが必要だとわかっている。

カメラマンの増田保雄氏は、「皆、とても明るい。僕より動きもスウィングもいい。ないものを嘆かず、今あるもので勝負するゴルファーに感銘を受けました。ギャラリーもフレンドリー。おばあちゃんが暑そうにしている僕に水を入れた袋をくれたりしました」

【優勝】
男子の部/サイモン・リー(韓国・自閉症)
女子の部/キム・ムーア(米国・右下腿欠損、ティーチングプロでもある)

多種多様な選手がいる。

「7歳でアメリカ人の養子となったウクライナ出身のアレックスはカッコいいしスウィングもいいし、ファンも多い。第一人者チェドは1日崩れて3位でしたが相変わらず上手い。優勝した韓国のサムも愛嬌があって人気が出そう。4歳で自閉症だと判明、外交官の父とアメリカ滞在時にゴルフを始め、集中力の高さで上達したんです。9位の20歳、ダグラス白倉くんは、ニューヨークに歯科医の父がいて日米の国籍がある。日本チームにスカウトしたいくらい(笑)。実は100を叩いている選手もいましたよ。ルールは基本同じですが、障害者のローカルルールもあります。今大会は、ダブルパーでカットしていました」(松田氏)

19年にR&AとUSGAが世界障害者ゴルフランキングを設定、今回“世界大会”が開催され、パラリンピック参加に向けて前進しているかのように見えるが課題も多い。まずは、医療関係者の認定のもとカテゴライズされた区分で、大会を一緒に行うことだ。

「腕の障害、足の障害、神経障害、重複障害、小人症、視覚障害、知的障害、車いすの8部門で行われましたが、これだけの部門があったのは初めて。車椅子の方も6人、女子は18人参加していました。また、アルゼンチンから1人参加していましたが、5大陸の万遍ない参加も必要なんです」

何より、肝心の欧州と米国の考えがまとまっていないそう。

「アメリカは障害別にティーマークを変えてプレーしますが、欧州はそれがなく男女別。それに不満を持つアメリカが世界ランクの試合から抜けたり……各国の障害者ゴルフに関する組織のシステムも違います。アメリカもヨーロッパもパラリンピック参加の意志は強いんですけど、国際政治と同じでいろいろと……私に何ができるわけではないですが、しつこく両方に話を聞こうと思います(笑)」

現状、ロサンゼルスパラリンピックの申請はIGF(国際ゴルフ連盟)がIPCに提出している。「チーム戦のようです。来年、IGF主催の世界選手権が行われる予定もあり、パラリンピックに関しては9月にもう一度IPCに呼ばれて修正案を出して審査、来年頭には何らかの決定がなされるようです」。

今回の大会は、来年7月に同じコースで行われる。JDGA理事の真辺和美氏は、「すごく勉強になった。選手がいかに気持ちよくプレーできる環境を作るか、運営やボランティアの活用法などです。また。ノースカロライナの日本企業がパンフレットに載っていた。宿泊や移動費などをサポートしていただけないか交渉してみたいです」。

日本選手3人の声を聞いてみよう。いずれもプロ資格を持つだけに、着眼点は鋭い。

左から、小山田雅人(55)、日系のダグラス白倉さん(20)、吉田隼人(39)、小林茂(66)

「練習場には選手ごとのネームプレートが準備され、“見てください”という意識が高い。コースは芝が地面にベタッとついている感じで球が上がらない。曲げても飛距離が出る人が有利かな。若く強い人が増えて普通に300Y超え。刺激を受けたので帰国後すぐトレーニングを始め、ドライバーのロフトを寝かせてアイアンもキャリーが出るものに変えました。パラリンピックは目指したい。ゴルフは健常者と同じルールで行うのでわかりやすい。多くの人に注目してほしいです」(小山田雅人)

「僕たちが気持ちよくプレーするため皆が盛り上げてくれる感じ。いいプレーには拍手を送ってくれます。コースは芝が特有のバミューダで、特にグリーン周りは練習が必要。状況やライでUTなどを使って転がす選択もできるようにしないと。上位の選手ほど、体と相談しながらボールコンタクトしてコントロールするのが上手い。今回不本意な結果でしたが、飛距離は負けてなかったし、マネジメントや課題を上達させながら、日本障害者オープンの3連覇を目指し、QTにも挑戦、来年この大会で優勝したいですね」(吉田隼人)

「ボランティアの方々もコースも素晴らしかった。技術はグリーン周りのアプローチなどが課題。グリーンの外からもパターやUTで転がす練習もしたい。片手のない方や女性と回りましたが、対応が素晴らしく本当にいい感じの方が多くてとても仲良くできました。皆、障害があっていろいろ苦労しているはず。だから明るいんです。目標は日本障害者オープンで優勝してみたいし、来年もう一度ここに来たいです」(小林茂)

「3人とも悔しさはあるでしょうが、楽しくプレーしていました。次は10月の日本障害者オープン。今回の海外選手には参加意志のある方もいます。日本でも、より多くのカテゴリーや女性の選手を増やしたいですね」(松田氏)

週刊ゴルフダイジェスト2022年9月13日号より

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