まさに“値千金”! ビクトール・ホブランのホールインワンが1人の学生を救う
パトリック・カントレーの優勝で幕を閉じたBMW選手権。35位に終わったビクトール・ホブランは決してこの大会を賑わせたわけではないが、最終日に彼が放った6番アイアンの1打は、1人の学生にとって、まさに“値千金”となるショットだった。
3日目を終えて64位タイと優勝圏外でのプレーを強いられていたホブラン。失うものがなかった最終日は、1番でチップインバーディを奪う絶好の滑り出し。すると続く2番パー3でホールインワンが飛び出した。
「6番アイアンの完璧なショットだった」と同伴プレーヤーと喜びを分かち合ったホブラン。そして、この1打が経済的に恵まれずキャディをしながら学業に励んでいる学生のひとりに、4年間の学費と住宅奨学金を提供するプログラムに直結したのだ。
BMW選手権はエバンス・スカラー財団に長年寄付をおこなっており、大会でホールインワンが出るごとに学生1人に対して4年間で12万5000ドル(約1700万円)の奨学金を提供する“ホールインワンチャレンジ”を実施している。ホブランのエースは、このプログラムがスタートしてから7個目。07年以降、大会は累計で4000万ドル(50億円以上)を財団に寄付してきた。
「エースを出したからといって、上位争いに加わったわけではないけれど、あの1打には大きな意味があった」。ホブランは35位タイという結果以上の達成感をにじませた。
試合によっては“バーディチャレンジ”や“イーグルチャレンジ”など選手がバーディあるいはイーグルを獲るたびに数百ドルから数千ドルが指定の財団に寄付されるケースもあるが、1700万円がピンポイントでひとりの学生の元に贈られるのは同大会だけ。
最近はひとりのプロが1試合で4億円、5億円を稼ぐことばかりが取りざたされるが、選手のプレーが奨学金として誰かに幸運をもたらすストーリーを、一服の清涼剤と感じるゴルフファンは多いだろう。
週刊ゴルフダイジェスト2022年9月13日号より