目指すは「蛍が棲むゴルフ場」東建多度CCの試み
昔は夏の風物詩として蛍はいたるところにいたが、今や絶滅危惧種。その風物詩を再現すべく奮闘しているゴルフ場がある。
男子ツアー開幕戦の舞台で知られる東建多度CC・名古屋(三重県)だ。“再現”といったのは、同CCには、かつて水路に蛍がたくさん生息したから。
そしてこのプロジェクトが本格的に始動し始めたのが昨年4月。そこには強力な助っ人の尽力があった。桑名市で蛍の飼育などを行う「ホタルとなかまの会」だ。その指導により、蛍が生息できる環境整備に取り組む。蛍は清らかな水を好む。そこで選ばれたのが、クラブハウス前にある池だった。ここの水は天然水の湧く井戸から配管したものだ。
水質はOK、あとは蛍が生育する環境整備だ。池からあふれた水は、9番と18番ホールの間にある池に流れ込んでいて、そこに産卵の場となるミズゴケを入れるなどして、準備は進んだ。今年5月下旬にはクラブハウス前に産卵箱を設置し、オスとメスの蛍を入れて産卵を促している。
そもそも蛍の生態とは──。蛍が飛ぶのは5月下旬から6月下旬頃まで。この時期にオスとメスが交尾し、800個ほどの卵を産み落とす。その卵が孵ふ化すると、水の中で約10カ月を過ごし、幼虫になると陸へ上がり、サナギとなって土の中で羽化し成虫となる。生きるのは1週間ほど。その短い生命を光って燃焼しつくすのだ。
今年は自生が間に合わなかったが、業者から仕入れた蛍数百匹を産卵箱の近くに放したという。隣接ホテルでの蛍鑑賞プランも好評だったそうだ。
ただ、卵から成虫になる確率はそれほど高くはなく、蛍の自生に成功するかどうか、結果がわかるのは1年後。
「何とか孵化させて、来年の夏には自生した蛍の光を見たいものです」(同CC支配人・八橋幸雄氏)
ゴルフ場の環境保全を証明することにもなり、この蛍プロジェクト、ぜひとも成功してもらいたいものだ。
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より