【通勤GD】迷ったとき、ユハラに帰れ! Vol.42 トウダウンを生かして振る。 湯原信光 ゴルフダイジェストWEB
アマチュアには、クラブをどう上げようとか、どこに上げようとか、細かく考えすぎる人が多い。「スウィングは、要はどう下ろすかが大事であって、どう上げるかはたいした問題じゃない。もっと自然に任せて振れば、クラブの機能を生かせる」とユハラ。その一例として、ヘッドのトウダウンを挙げて解説してくれた。今週の通勤GDは「迷ったときは、ユハラに帰れ!」Vol.42。
【通勤GD】
通勤GDとは‟通勤ゴルフダイジェスト”の略。世のサラリーマンゴルファーをシングルに導くために、月曜日から金曜日(土曜日)までの夕方に配信する上達企画。帰りの電車内で、もしくは翌朝の通勤中、スコアアップのヒントを見つけてください。
【湯原信光プロ】
ツアー7勝、シニアツアー1勝の日本を代表するショットメーカー。とくにアイアンショットの切れ味は、右に出るものはないと言われた。現在は東京国際大学ゴルフ部の監督も務め、後進の指導にも力を注いでいる。
前回のお話し↓
トウダウンは
ゴルフの味方
GD テークバックで右にクラブを上げるとき、右ひじは基本的にたたまれていきますよね。しかし、その右ひじもインパクトに向かう途中から伸びていくわけですから、やはりリリースのタイミングというのは、考える必要があるのでしょうか?
湯原 それは考える必要はありません。可能なら、剣道のお面と同じように、両手を頭上に振りかぶって真っすぐ振り下ろしたいところですが、体の回転をともなうゴルフのスウィングの場合は、頭が邪魔になってそういうふうには上げられないので、右ひじをたたむようにトップの形を作っているのです。
GD 剣道のお面のように振り下ろすということは、ただ単に上げたものを下ろすだけで、リリースという感覚はないということですね。ついでですが、トップで右ひじが浮き上がってしまうフライングエルボーは、スウィングを複雑にするから直したほうがいいといわれていますが、どうなんでしょう?
湯原 プロでもフライングエルボーになっている人はいますよ。例えばかつての王者、ジャック・ニクラスなどもそうです。ひじがトップで浮いていたとしても、ダウンに入るときに、正しいポジションに戻っていれば、まったく問題ないのです。上げ方もそうで、アウトに上げようが、インに上げようが、ダウンヘの切り返しでクラブが正しいポジションに収まっていれば、気にする必要はありません。
GD どう上げてもいいということでいえば、ジム・フューリックなんかは典型的な例でしたね。
湯原 要は、どう下ろすかの問題であって、どう上げるかは、それほど問題ではないのです。
GD その、どう下ろすかなんですが、そこにプロとアマチュアで決定的な差があるように思えます。
湯原 顔をよけて右側に上がったクラブは、ただ真下に落ちるだけ。そう思っていればいいんです。そうすると、シャフトは自然にクラブヘッドのトウ方向に曲がろうとする、トウダウンという現象を起こします。そのトウダウンは悪くない現象です。それを必要以上に警戒して押さえ込もうとすると、ヘッドが返らずにインパクトが間に合わなくなって、フェースが開いたまま当たってしまうのです。むしろ、もっとトウダウンするように自然に任せるのです。
GD 自然に任せるというと……。
湯原 手元がスッと真下に落ちて、シャフトがしなってくると、トウも下がっていく。この状態を積極的に作ってあげればいいのです。これは、メカニズムというより、イメージ的な話ですが。それが、クラブが自然に動く状態でもあるのです。
GD トウダウンを積極的に利用してヘッドを加速させるんですか。
湯原 クラブは、地面にポンとへッドを置いたとき、10円玉1枚ぶんくらい浮くように構えるのが、正解です。インパクトでトウが下がるトウダウン現象が起きると、ソールは地面に対してちょうど水平になるのです。ところが、そのトウダウンを押さえ込もうとするアマチュアがとても多いように見受けられます。そういう動きをすると、手が通るスペースがなくなってしまうから、インパクトで左ひじを抜いたり、もしくは、右肩が下がりすぎたりするのです。すると、ボールは右に曲がるので、それを嫌がると、今度は右肩が出てきて、フェースがかぶった状態になってカキーンと左に引っ掛けてしまうミスも出るようになります。
GD 右にスライスするか、左に引っ掛けるか、下手をするとその繰り返しになりそうですね。
湯原 ダウンスウィングに入って、シャフトが入れ替わる意識があまりないから、そうなってしまうのです。
平面ではなく
3Dで理解する
GD ダウンのスタートでヘッドを地面に叩きつける感じなんですか?
湯原 それではキャスティング(釣りでルアーなどを目標に向かって投げる)の動作になってしまいます。そうではなくて、グリップエンド側を地面に向かって真っすぐ落としていくのです。
GD なるほど。釣糸を投げるような動作では、最初からシャフトは寝てしまいますからね。
湯原 クラブを真下に落として、そこに回転が加わると、シャフトは勝手にトウダウンを始めます。それに逆らわずに、インパクトでビューンと振り抜けばいいのです。それを可能にするために、グリップから手首の辺りをフリーな状態にしておくのです。感覚的には、トップの位置に置いたままにしておくわけです。すると、ダウンのスタートで手元が真下にスッと落ちます。
GD 体が回転しているから、それと一緒にヘッドも動いているように見えるけれど、体とクラブの位置関係から見ると、手元が真下に落ちているということですね。
湯原 ところが、グリップをギュツと握ったり、リストをアンコック(手首についた角度をほどく)したりという動きを、ダウンと同時に始めてしまうから、キャスティングする形になってしまうのです。
GD そうか。ヘッドが先に落ちるようなダウンでは、絶対にタメは作れないということですね。
湯原 “いかにグリップやリストをフリーな状態で、真下にクラブを下ろせるか”が肝心です。そして、肋骨の辺りを意識して体を回転させると、パーンと当てることができます。真下に落とすという意識がものすごく大切なのです。
GD 真下に落とせばシャフトが立ちますね。グリップエンドをボールに向かって指すように引き下ろせというレッスンもありますけど、あれはどうなんでしょうか?
湯原 それでは最初からシャフトは寝てしまいます。左サイドでリードしろという教えと相まって左肩が浮きやすくなるので、弊害が生まれます。
GD 右打ちの場合、右から左ヘカを使うのがボールを動かす動作だと思っているのも、シャフトが寝てしまう原因のように思えます。
湯原 皆さん、平面で考えるから、右から左という横の動きをイメージしてしまう訳です。3D (三次元空間)でイメージしてもらわなければなりませんね。もしくは、ボールを動かすのは手の操作だと思っているからでしょう。腕の動きは、トップからインパクトヘ真下に下りてきて、インパクトからフィニッシュヘ真っすぐに上がっていく。剣道のお面のように頭上に振りかぶれないから、その動きはV字になって、そこに体の回転が加わる。それを3Dで理解してください。
頭でっかちこそ
上達の近道
GD 確かに平面で考えてしまうから、パッティングのように右から左に押すとか叩くという感覚になってしまうんですね。
湯原 パッティングなら右から左に腕を動かすだけでも何とかなりますが、ショットの場合はそうい
う訳にはいきません。もっとも、パッティングでも、ボールに力を与えるという観点からすれば、力の動きの入れ替わりというのは存在するはず。パットのうまい、例えばタイガー・ウッズなどは、そうやっているように見えます。その辺を解明していくと、効率のよい体の使い方とは何か、答えが見えてくると私は考えています。
GD 効率のいい体の使い方ですか。まずは、右から左へと動かすというアマチュアの意識を、腕の縦の運動と体の回転運動の組み合わせだという3Dの意識に変えていかなければなりませんね。
湯原 プロとか上級者レベルの人は、ものすごい練習量で、そういう3D感覚を体得しているのですが、一般的なアマチュアは、なかなかそれができません。だからこそ、理論として頭に叩き込んでおいたほうがいいのです。
GD たまにしか練習できないからこそ、そのたまの練習を無駄にしないためにも、理論武装をしておいたほうがいいということですね。
湯原 どうしたらインパクトにカを集められるのか、どうすれば正しい体の動きでクラブヘッドを動かすことができるのか、そういうことを、“できる”“できない”はともかくとして、理解して練習する。それが上達の早道です。
GD やたらゴルフ理論に詳しいと頭でっかちなどといわれてしまうこともありますが。
湯原 頭でっかち、結構じゃないですか。正しい情報をきちんと頭に入れておいて、それを自分の体とすり合わせていく作業は、上達の効率をよくしてくれるはずです。
GD 情報を吟味して、そこに整合性があるのかどうか考えるのも、ゴルフの楽しみひとつですからね。
週刊GDより
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