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【さとうの目】Vol.244 ルーク・リスト「なんどもオーガスタの前を通り過ぎた」17年ぶりのマスターズへ

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週の注目選手は今年、17年ぶりのマスターズ出場を決めたルーク・リスト。

PHOTO/Tadashi Anezaki

1月のファーマーズインシュランスでPGA初優勝を飾り、05年以来、17年ぶりのマスターズ出場を決めたのがルーク・リストです。前回は、その前年の全米アマで2位の資格で出場したヴァンダービルト大時代のことで、プロとなってからは初出場になります。ちなみにこのときの全米アマで優勝したのは、PGAツアー5勝のライアン・ムーア。マスターズでも13位でローアマを獲得し、リストはそれに次ぐ33位でセカンドアマに終わりました。マスターズの17年ぶりの出場は、ブランクの長さとしては史上2番目だそうです。

両親はノースカロライナ大で、オールアメリカンにも選ばれた水泳選手。特に母のボニーさんは、パンパシフィック選手権の金メダリスト。自由形の全米記録も持っていました。姉も妹も水泳選手で、当然、ルークも小さい頃から水泳をやっていましたが、ゴルフに進むきっかけは、水泳の練習が嫌だったからだそうです。


それにしても初優勝まで、ずいぶんと時間がかかりました。強豪のヴァンダービルト大時代は、4年連続でオールアメリカンに選ばれるスタープレーヤー。しかしプロ転向後は下部のコーンフェリーツアーで3年、その後、PGAツアーとコーンフェリーツアーを行ったり来たりの状態が続きます。PGAツアーに定着したのは16年からですが、なかなか優勝に手が届きません。18年のホンダクラシックではジャスティン・トーマスにプレーオフの末に敗れました。かつてのスタープレーヤーも優勝のないまま終わるのか、という感じもしていましたから、初優勝の瞬間の喜び方には、感動的なものがありました。

生まれはワシントン州のシアトルですが、高校・大学はテネシー、プロになってからはフロリダ、カリフォルニアと転々とします。そして4年前からは妻の生まれ故郷であるオーガスタに住んでいます。ウィル・ザラトリスとのプレーオフの末もぎとった初優勝のインタビューでの、「何度もオーガスタナショナルGCの前を通り過ぎた。これでようやくマスターズに戻ることができた。自宅から通うことができ、これほど嬉しいことはない」とのコメントが印象的でした。

ちなみに奥さんのクロエ・カービィさんは、ハリウッドでも活躍する女優さん。優勝後の18番グリーンでは3歳の娘のライアンちゃん、7カ月の息子のハリソンくんも一緒にカメラに収まりました。パー3コンテストをはじめ、再びマスターズではこのイケメン一家が勢揃いするはず。綺麗な奥さんを見られるのも、マスターズの密かな楽しみですよね。

奥さんの美貌とともにマスターズでも注目してほしいのは、超飛ばし屋でありながらまったく力感のないスウィング。思い切り叩くわけでもなく、そのエネルギー効率の高い“エフォートレススウィング”は、多くのプロも羨望の眼差しで見ているはずです。

「アーニー・エルスに通じる力感のなさだが、“超飛ばし屋”。上下動のない美しいスウィングで軽くウェッジを打つ感じでドライバーを振っているように見える。類まれなる身体能力の持ち主なのでしょう」

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2022年4月5日号より