【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.72 予選会前に思う「“幸せ”やからゴルフができる!」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO /Takanori Miki
シニアツアーの予選会がもうじき始まります。会場は宮崎のトム・ワトソンGCです。
フェアウェイに行かへんと林に入って、その林の中は枯れた松葉の絨毯に覆われておるやっかいなライになっております。
日本のゴルフ場の多くは、たいていホールの両端は少し土手のように高くなっておるので、フェアウェイを外さん限り林に入ることは滅多にありません。
ところがトム・ワトソンGCはフェアウェイの中央が馬の背のように高くなっておるので、少し左右にブレる球筋を打つと、松葉の絨毯を覚悟せなあかんという難しいコースです。
このところ賞金シードに入っておらん僕も予選会に行かなあかんのですが、難しいコース、大いに結構。むしろ楽しみです。
最近、ゴルフに対する考え方がだいぶ変わってきています。
ちょっと前までは「ゴルフで優勝して、シード権を獲って」。そういうのがゴルフをやっておる幸せやと思っておったんです。
逆なんですわ。幸せやからゴルフができるんです。そういう気持ちにならんと、ありがたさも何もわからんのです。
去年も賞金シードが獲れるか獲れんか、ギリギリのところで試合に出ておりました。
「この試合でシードを決めたろう」と思って出た試合で、えらいことになってしもうたのです。パターがボロボロで全然入らへんかったのですわ。典型的な空回りです。
自分がそれをつかんで幸せになりたいと思っておったのは、それは違うんやと気がつきました。
試合という舞台に出ておることが幸せなんやね。
五体満足で、今のところどこも痛いところがない。何が不満なんやろう、と思ったんです。
何かに追いかけられておるわけでもないわけです。
50歳になってから10年間もずーっとシニアツアーに出させてもろうてます。これは僕の人生にとって尊いことだと考えなあかんでしょう。幸せなことですよ。
幸せになるためにお金がほしいわけではありません。もちろんお金はあればええですよ。けど、それであくせくする必要はないのです。
「幸せやからゴルフができて、お金が勝手に入ってくるだけの話です。そう考えると、もうありがたいだけです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2022年3月15日号より