【ゴルフ史】記憶と記録に残る。21世紀ニッポンのツアー、そのとき歴史は動いた
ツアーが開幕しないままの日本。プロたちのプレーに声援も送れず寂しい日々だ。しかし、ふと記憶をたどれば「あの日」がよみがえる。プロ自身の人生やゴルフ界をも変え、われわれの心を動かす名プレー、名シーン。2000年以降、「歴史が動いた日」を紹介しよう。
黄金・プラチナ世代の萌芽
すべては藍からはじまった!
昨年の日本女子ツアーで、98、99年生まれのいわゆる「黄金世代」の勝利数は12にもなる。そして、その下の「プラチナ世代」も加わり、女子プロ人気を支えている。これら世代の萌芽に種をまいたのが宮里藍だ。
03年のミヤギテレビ杯で女子高生が優勝。初々しい笑顔とスーパープレーでゴルフファンのみならず多くの日本人を魅了した。「藍ちゃんブーム」は社会現象だった。
2003年9月28日女子高生・宮里藍優勝!
05年は北田瑠衣と組んだワールドカップ優勝にはじまり、秋の日本女子オープンでは、チケットがネットオークションで高値に、当日券の追加発売も行われるなどギャラリー数は4日間で4万8677人を記録。そのなかで見事優勝を果たす。
人気と強さを併せ持ったスーパースターとなった。
その後、米女子ツアーに挑戦。苦難を越え米ツアー計9勝を挙げ、10年には日本人初となる世界ランク1位を獲得した。「藍ちゃんブーム」の頃、黄金・プラチナ世代はまさにゴルフをはじめようとする年齢。
「藍」という憧れの存在であり目標があったからこそ、もっとゴルフが好きになり、ゴルフに打ち込めたのだ。その種は芽生え、今、色とりどりの花を咲かせている。宮里の記録を塗り替えながら。
最年少優勝記録を塗り替え、黄金世代の先頭を走ってきた勝みなみ。
2014年4月20日 勝みなみアマで日本女子史上最年少優勝
KKT杯バンテリンレディス
高校に入学したばかりのあどけさが残る15歳の勝。バーディを連発し「-11」のトーナメントレコードで優勝。鼻歌交じりで笑顔のラウンド。新しい時代を感じさせた。
メジャーで史上初アマチュア優勝を達成、世界を舞台に活躍する畑岡奈紗。
2016年10月2日畑岡奈紗史上初公式戦アマ優勝
日本女子オープン
17歳の高校3年生が大逆転。アマチュアのメジャー優勝は初の快挙(翌年プロで連覇!)。世界での活躍を期待して名付けられた「NASA」は当時米女子ツアーQスクール受験中だった
10年の日本女子オープンで憧れの宮里にサインをもらう11歳の畑岡。「サインを書く側になるんだぞ」と父に激励されたとか。藍のファン対応もしっかり受け継いでいる。
宮里の悲願だった海外メジャー優勝を成し遂げ、「しぶこブーム」で、05年日本女子オープンの観客動員数に迫った渋野日向子。
平成のヒロインから令和のニューヒロインたちへ。歴史はつながり、それぞれがまた歴史を動かす存在になる。
渋野の初優勝
2019年5月12日
渋野日向子プロ初優勝。全英制覇への序章
ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ
昨夏、日本人選手として42年ぶりに海外メジャー、全英女子オープンを制し世界のヒロインとなった「スマイルシンデレラ」“しぶこ”。日本ツアー初優勝もメジャー大会だった。
4日間終始笑顔でプレー、ギャラリーも「笑顔がいい!」と口々に。人を魅了する笑顔も「もぐもぐタイム」もすでに確立されていた!
渋野ブームはここから始まった
世界基準ゴルファーHIDEKI誕生
「藍ちゃんブーム」の後、男子ツアーに旋風をもたらし、今もけん引し続ける石川遼。石川も藍に憧れる一人だった。そして今、若手選手は「石川遼に憧れていた」と言う。
世界を目指す選手が増えるなか、抜きんでたのが石川と同じ歳の松山英樹だ。すでに米ツアー5勝を挙げている。その後、東北福祉大の後輩、金谷拓実が世界アマチュアランク1位に立ち、先輩の後を追っている。
彼らが歴史を動かした日はアマチュア時代。それぞれ自分らしいスーパーショット、“もってる”プレーで勝利を勝ち取った。
記憶も塗り替えられる。
藍の兄、宮里優作が記憶に残してくれたのは、プロ11年目の劇的な“チップインパー”。苦しみ続けた元最強アマの、まさに起死回生の一打だった。
記録も記憶も積み重ねられ、新しい歴史ができる。来たる「その日」を、心待ちにしたい。
2007年5月20日
15歳石川遼大逆転。ハニカミ王子誕生
マンシングウェアオープンKSBカップ
最終日17番、バンカーからの奇跡のップインバーディで後続を振り払い、高校1年生がツアー初出場、初優勝。石川の小技は当時から光るものがあった。その爽やかなルックスも含め人気は爆発。当時の目標は「世界一強いゴルファーになること」
優勝が決まった瞬間
初々しい表情の石川遼
2011年11月13日
松山英樹マスターズローアマ後の優勝
三井住友VISA太平洋マスターズ
石川以来のアマ優勝を果たした19歳の松山。最終ホール、パー5のセカンドでは、先に4㍍に付けた谷口徹より近い50㎝に付けるスーパーショット。このイーグルを決めて優勝。当時からアイアンのキレは世界クラス。
2019年11月17日
大学生・金谷拓実世界を見据えて
三井住友VISA太平洋マスターズ
その松山以来のアマ優勝を果たした21歳の金谷。同じ富士山の麓の太平洋C御殿場Cで、最後
は7mのイーグルパットをねじ込んで優勝。パットには定評ある男子“黄金世代”の金谷。「海
外にどんどん出ていき常に挑戦を続けたい」
イーグルパットをねじ込んだ金谷
2019年全英オープン練習ラウンドにて。東北福祉大の先輩・後輩は、ともに世界アマチュアランク1 位に立った
2013年12月8日
優勝を決めた奇跡のチップイン
ゴルフ日本シリーズJTカップ
最終戦の舞台は東京よみうりCC。18番パー3は超難関で数々のドラマを生む。3打差リードの宮里は「ダボでも勝てる」と思いつつ攻め、1打目に続き2打目の寄せもグリーンを外す。運命の3打目、フワッと上げた10Yのアプローチがチップイン。11年の苦悩を払拭する1打だった。
4年後、同じ舞台で賞金王に
初優勝で自身の歴史を変えた宮里は、その後6勝。17年には賞金王に。40歳になろうとする今、欧州ツアーを舞台に挑戦の日々だ。
PHOTO/Kazuo Iwamura、Tadashi Anezaki、Hiroyuki Okazawa、Masaaki Nishimoto、Hiroshi Yatabe、Tsukasa Kobayashi
週刊GD6月2日号より