【松山英樹アイアン研究】<後編>「体とクラブの距離が常に一定」だからいつでも同じインパクト
プロ仲間が絶賛する松山英樹のアイアンショット。後編では、松山と同世代で学生時代からしのぎを削ってきたプロコーチの黒宮幹仁に、技術的な側面から詳しく解説してもらった。
TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara、Takahiro Masuda THANKS/ぎふ美濃GC
解説/黒宮幹仁
連載「世界基準を追いかけろ」でお馴染みのプロコーチ。松山英樹と同世代で、ジュニア時代からしのぎを削ってきた
クラブと体の距離が常に一定
長い間、日本では「ダウンブロー絶対主義」がはびこり、その弊害に苦しむ人は今も大勢いる。具体的には、切り返しで手を体に引き付けすぎたり、シャフトを立てすぎたりすることで、入射角が極端に鋭角になるということだ。松山のスウィングは、それとははるか遠い次元にある。
「円弧の大きさと、シャローな入射角が、松山プロの正確性の秘密」と、プロコーチの黒宮幹仁は分析する。松山と同世代の黒宮は、ジュニア時代から、松山のスウィング変遷を生で見続けてきた。
「中学生の頃から、一貫してクラブ(手)と体との距離を一定にしたまま引っ張り続けるという、ある種、『ハンマー投げ』のようなスウィングを続けています。体の強さが必要なので、高校、大学と体ができ上がるにつれて、どんどん安定度が増していきました。ちょっと開いた感じに当たっても、最後まで押し続けられるので、ピンハイまでは持っていける。対戦相手からしたら、イヤな球筋です(笑)。マキロイや、ダスティン・ジョンソンなど、世界のトッププロは、とくに切り返しでシャフトが体に近づかない。松山選手も、それと同じレベルでシャフトを体から遠ざけ、オンプレーン、かつシャローに振っています」(黒宮)
クラブを体の正面に保ったまま振るのは、ハンマー投げと要領が似ている。遠心力を受け止める体幹の強さが必要だが、安定感は抜群
クラブが常に体の正面にあるから
入射角が安定する
クラブ(シャフト)が「体から遠い」とは、具体的にどういうことか。たとえば、インパクトでハンドファーストの度合いを強めるのは、クラブが体の正面から外れ、シャフトが体に「近づく」ということ。このとき、フェースは開く(閉じづらい)ので、そのぶん、体を切って相殺すると、プレーン自体が左を向いてしまう。
「松山選手の場合は、トップで一瞬、クラブが体の正面から外れるだけで、あとはずっと正面にある。だから、『腰から腰』の部分でプレーンが左を向くこともなく、プレーンの角度がアドレスのシャフトの角度とほぼ一致します。ヘッドに最大遠心力がかかった(クラブが遠い)状態で、常に同じ角度のプレーンで振れれば、入射角、インパクトロフトも常に一定になるので、縦の距離感がずれません」(黒宮)
アマの大半はプレーンが左を向く
ヘッドをボールに早く到達させたいと思うと、クラブが体に近づいて、プレーンが左を向く。クラブを遠ざけて下ろせると、プレーンをやや右に向けて(イン-アウトに)下ろせる
右ひじが体の前から外れない
右ひじを体(右胸)の前に保った状態で切り返すことで、早い段階でクラブをオンプレーンの状態に持っていける
お腹にグリップエンドが
突き刺さっているイメージ
顔を右に向けることで胸を閉じながら下ろせる
切り返しでは、左に踏み込みながら、胸をさらに閉じるようにして下ろすとパワーが出るが、顔を右に向けることでその動きがアシストされる。顔が早く左を向くと、胸が開いてしまう
Drill
クラブを2本持って振ってみよう
左右1本ずつ持った2本のクラブの間隔を変えないように意識して振ってみる。手首や前腕の動きが過度になると、2本のクラブがバラバラになる。2本そろえて動かすには、しっかりと体幹で腕をコントロールする必要がある。
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より