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【世界基準を追いかけろ!】Vol.64 世界ランクのシステム変更で有望選手の海外流出が加速?

目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回は来年からの男子の世界ランキング算出システム変更に伴い懸念されている、若手選手の海外進出などについて話してくれた。

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

前回のお話はこちら

GD 事情通のX氏からお二人に質問があるそうですね。

X はい。世界ゴルフランキング(OWGR)から、2022年8月14日以降のワールドランキングのシステム変更(※)が発表されましたよね。日本ツアーの優勝者のポイント数が、以前より大幅に減ることになったんです。今後、日本の有力男子選手は、早くからアメリカに渡って、向こうで下部ツアーから這い上がっていくやり方でPGAツアーを目指す選手が多くなるんじゃないでしょうか。

黒宮 そうなると思います。日本のツアーで世界ランクのポイントを稼いでPGAツアーにスポット参戦してシードを狙うのは難しくなるので、今後はアメリカに行ってQTを受ける道を選ぶんじゃないですかね。石川遼や木下稜介などもそうですよね。

GD 中島啓太などのようなトップアマも、今後は日本ツアーを経ずに、直接、アメリカに渡る選択もありますかね。

黒宮 日本のプロツアーの試合でママチュアながらに勝った中島啓太にしてみれば、いい意味で彼の居場所は日本にはないんじゃないですかね。


X 中島啓太(21歳)や久常涼(19歳)とか、そのあたりの年齢の選手たちにしてみたら、2〜3年アメリカでチャレンジしてみて、もし失敗してもまだ20代前半なので、行くなら早いほうが良いという考えもあるでしょうしね。

GD 黒宮さんが教える若手の岩崎亜久竜(あぐり)とはそういう話をすることはあるんですか。

黒宮 いや。僕らコーチは本人が望まないような絵を勝手に描くことはできないので、向こうから相談がない限り、そうした話をすることはないですね。もちろんコーチとして、有望な子たちがそのような絵を描いてくれるのは、すごくいいことだなとは思いますけど。

GD 目澤さんは教えている河本力と世界を見据えた先々の話をすることはありますか。

目澤 話をすることもあります。でも、僕の場合は間近に松山プロという存在がいるので、松山プロの学生時代と彼らの現在の到達点などを比較すると、まだちょっと足りないかなと思うところはあります。もちろん彼らなりのビジョンは持っているだろうと思いますけれど、現在のPGAツアーの選手たちを見ていると、すぐに行ってなんとかなるというレベルには到達していないとも思います。

GD アメリカに行っても、コーンフェリーツアーのQTはプレ、ファースト、セカンド、ファイナルと長い道のりがあります。ただし、日本の賞金ランキングの上位選手には優先権が与えられるので、それなら日本ツアーの賞金ランク上位を目指して、たとえば同ランク5位以内に与えられるファイナルQTの出場権を目指すという選択も出てきそうですね。

X 有望選手の海外流出が増えれば、男子ツアーの人気が心配になりますね。今後は海外に出ていった選手が日本のツアーに貢献できるようないい仕組みができるといいですけどね。

※世界中の主要プロゴルフツアーにおけるプロゴルファーのランキングを発表している世界ゴルフランキング(OWGR)の理事会は、2022年8月14日以後のランキングシステム変更を決定。変更点は「フィールドレーティング計算の最新化」と「予選通過したすべてのプレーヤーにもランキングポイントを付与すること」の2つ。この変更により、今後は日本ツアーでの優勝者に付与されるポイント数が半分くらいに減じるという

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年11月30日号より