【パター】“サマーグリーン”は転がらない!? 夏仕様になるパターチューンをご紹介!
高麗やバミューダなど、サマーグリーンになる夏ゴルフでは、いつもどおりのパットが通用しないことも。そこで、プロも通うゴルフ工房「スタジオCGA」代表でクラフトマンでもある山崎康寛さんに夏仕様のパターチューンを教えてもらった。
夏用グリーンは
普段より重くなる
そろそろ梅雨も明け、夏本番となるが、実は夏ゴルフで注意すべきポイントがある。それが夏用のグリーンだ。クラフトマンの山﨑康寛さんによると、
「2グリーンのコースでは、夏は高麗やバミューダのグリーンを使用します。河川敷などもそうです
が、高麗やバミューダといった夏芝(暖地型)は、芝が硬くて強いため、普段より摩擦抵抗が大きく
なります。その結果、ボールの転がりが悪くなり、ショートしやすくなるんです。ロングパットに
なれば、“ど”ショートなども珍しくありません。そうなれば、3パットや4パットは確実です」
2グリーンのコースでは夏はバミューダや高麗グリーンを使用
⇒芝が硬めで抵抗が大きい
⇒転がりが悪くなる
暖地型の高麗(和芝)やバミューダなどの芝は暑さに強く寒さに弱い。葉が硬く強いため、摩擦抵抗が大きくなり、ボールの転がりが悪くなりやすい。そんな夏用グリーンはショートしやすいのだ。
最近ではベント芝の1グリーンも増えているが、もともとベント芝は寒地型である。品種改良によって暑さに対応できる芝もできてはいるが、夏用と冬用の2グリーンにしているコースは多い。さらに夏は芝が元気なため、芝目の影響も出やすい。
つまり、夏用グリーンは普段のグリーン(ベント芝)より、重くなるということだ。ただでさえショートしてしまう我々ゴルファーは、さらにショートしやすくなる夏グリーンをどう攻略すべきなのか?
「パットの転がりをよくする方法はいくつかありますが、基本は2つです。ヘッドを重くすることで、ヘッドが持つエネルギーを増やしてあげること。重さのあるものが衝突(インパクト)すれ
ば、その分、転がりも強くなります。もうひとつは、クラブのバランスを軽くすることで、振
りやすさを向上させ、自分の力加減でヒットできるようにすることです」
パットの転がりをよくする方法は大きく2つ
ヘッドを重くする⇒クラブの力が増える
バランスを軽くする⇒自分の力で打ちやすい
山﨑さんは「重いグリーンでは、ヘッドを重くするのが有効です。その分、インパクトが強くなり、球足が伸びやすくなります。また、パチンと打ってタッチを出すタイプなら、バランスを軽くすることで振りやすさを向上させると、距離感を合わせやすくなります。
ヘッドを重くするか、バランスを軽くするか。この2つがチューンの基本となるが、誰でも簡単にできますよ、と山﨑さんは語る。
「リシャフトやグリップ交換は、工房にお願いすることが多いですが、鉛を貼るといったお手軽なカ
スタムは、誰でも簡単にできます。パーツ交換してしまうと元に戻すのは難しくなりますが、鉛を貼るだけなら、すぐに元の状態に戻せますし、夏仕様と限定的に考えれば、理にかなったカスタムといえます。ドライバーやアイアンと違い、パターはフィーリングが命です。気持ちよく打てて、ボールの転がりもいい。そんなパターに仕上げられれば、夏グリーンだって怖くはありません。私は河川敷で回ることが多いのですが、20㌘くらい鉛を貼ったパターを使うこともあります。それだけ夏グリーン対策は効果があるんです」
重さを変えてもいいの?
「パットは小さい動きなのでフィーリング重視でいい」
ドライバーやアイアンなど、フルショットを前提としたクラブは、振りやすさの指標となる“バランス”が重要だが、パットは小さな動きのため、そこまで影響は出にくい。「自分のフィーリングを重視すればいい」と山﨑さんはアドバイス。
誰にでもできる
チューンのコツ
転がりが悪くなる夏グリーン対策として有効な「パターチューン」を山﨑さんに教えてもらった。
「もっとも簡単なのが鉛を貼ることです。値段も安いですし、貼るのも剥がすのも簡単ですから。鉛はソール側に貼りますが、貼る位置で効果が変わりますから、いろいろ試してみるのが大事です。私は練習グリーンでフィーリングを確かめながら重さや貼る位置を決めています。ただ、ひとつだけ注意点があります。それはパターの座りが不安定になりやすいこと。パターは座りが重要ですから、デ
コボコするような分厚い貼り方はおすすめしません。」
「まずフェース側(前部)に貼る効果ですが、重心が少しだけ浅くなります。その結果、ロフトが立ちやすくなり、インパクトが強くなって、球足が伸びやすくなります。パチンとインパクトして距離感を作っていくタイプの人には、相性がいいはずです。一方、ソール後方に貼る効果は、重心が少しだけ深くなります。ドライバーの深重心と同様、ミスヒットに強くなりますから、芯を外したときのブレが少なくできます。打点がバラつきがちなタイプに合うと思います。どちらもヘッド自体の重さが増すので、衝撃が強くなります(ヘッドがきく状態)からショートを防ぐ効果も高くなるわけです」
【マレット型は3パターン】
面積が広いため重さの効果が出やすい
【パターン1】ヘッドが重くなると転がりが強くなる
ソール全面に貼ると、ヘッドの重さは10㌘以上増す。転がりの違いや効果をいちばん実感しやすい。ベタ貼りのため、パターの座りが悪くならない利点も。
【パターン2】浅重心になり強くヒットできる
フェース側に貼ると浅重心になり、インパクトが強くなる。その結果、球足も伸びやすくなる。ヘッドも少し上(ダウンブロー気味)から入りやすくなる。
【パターン3】深重心になりミスを減らせる
ソール後方に貼ると重心は深くなる。深重心になるほど、ミスヒットに強くなるため、打点が左右にブレやすいタイプにおすすめの貼り方だ。
【ピン型は2パターン】
高重心にすると順回転がかけやすい
【パターン1】少し高重心になり転がりがアップ
フェースの裏側に鉛を貼る方法は、プロでもやっている人が多いという。重心が高くなることで、芯の下目で打ちやすくなり、順回転がかけやすくなる効果がある。フェース面でボールをこするように打つ、アッパーブロータイプにマッチする。
【パターン2】ロフトが立ちやすく強く打ち出せる
マレット型と同様、フェース側に貼ると浅重心になるが、ピン型の場合はソールに貼るので低重心による効果のほうが大きい。芯が少し下がることでロフトが立ちやすくなり、インパクトが強くなる。ダウンブロー気味に打つイメージに合う。
今回はヘッドタイプ別に鉛の貼り方を教えてもらっているが、
「マレット型は面積が広いため、鉛による重さの効果が出やすいと思います。ピン型は面積が小さいため、重さを増やすことが難しく、明確な違いは感じづらいかもしれません。ですが、フェースの裏側に貼る方法はおすすめです。芯が少し高くなり、フェースの下目でヒットしやすくなることで、順回転がかかりやすくなります。マレット型は、基本的にストローク派(振り幅でコントロール)が多いので、ヘッドに重さを加えることでインパクトを強くしてあげるのが効果的です。いまいちボールが伸びないなと感じたときは、鉛チューンが最適でしょう」
また、鉛を貼ってヘッドを重くする方法以外にも、転がりをよくするノウハウがあるという。
「グリップ下に鉛を巻く方法です。ここに巻くとヘッドが軽く感じられるようになります。その結果、振りやすさが増してフォローが出やすくなり、ストロークが安定してきます。また、グリップを太くするのもおすすめです。ショートが多くなると手先や手首でこねてしまいがちですが、グリップを太くすれば、そういった悪い動きを抑えることができます。テニス用のグリップテープは重宝しますよ」
グリップ下に鉛を貼る
最低5㌘以上を巻くヘッドが軽く感じフォローが出やすい
グリップの下に鉛を巻くことで手元の重さが増し、ヘッドが軽く感じられるようになる。つまり振りやすさが向上することで、ヘッドが出やすくなる(フォローが出やすい)のだ。「最低でも5㌘以上は巻かないと効果が出づらいです」(山﨑)
テニス用テープを巻く
交換しなくてもグリップが太くできストロークが安定
グリップを太くすると指先や手首の余計な動きを抑えられる。手元が安定することで、ストロークの再現性を高められるのだ。「テニス用のグリップテープを使えば、簡単に太くできます。巻く間隔を狭くすると、より太くできますよ」(山﨑)
届かないパットも夏仕様パターにすれば、しっかり届いて、カップイン率が高められるかも。
PHOTO/ Tadashi Anezaki、Yasuo Masuda
週刊GD8月4日号より