「病と闘う人に勇気を」脳腫瘍と闘うクラブプロが夢を叶える
米男子ツアーの「バミューダ選手権」に、ステージ4の脳腫瘍と闘うクラブプロが参戦。主催者推薦でツアー初出場の夢を叶えた男は、テレビカメラの前で感涙にむせんだ。
開催コースであるオーシャンビューGCのヘッドプロ、54歳のブライアン・モリスは深刻な脳腫瘍に侵されている。「いつかPGAツアーの舞台に上がってみたい」という彼の願いを叶える1本の電話がツアー関係者からかかってきたときの感激を、彼は「言葉にできない」という。
「病と闘っている人々に勇気を与えるきっかけになれば」と挑んだ大会だが、厳しいセッティングに風雨が追い打ちをかけ、初日89、2日目92を叩いて通算39オーバー。最下位で予選落ちを喫したあとテレビカメラの前に立った彼は、「家族や友人に見守られて、本当に大きな意味のある2日間だった。なかにはもう二度と会えない人もいるかもしれない。そう思うと、この経験は絶対に忘れることはできない」と目頭を押さえ、感無量の表情を浮かべた。
脳の悪性腫瘍を宣告されたのは19年の10月。「それからの2年間は本当に辛かった」。だからこそ、主催者推薦の朗報が届いたときには小躍りした。継続的に受けてきた辛い治療から、わずかな間でも離れることができるのだから。
しかし束の間の夢ははかなく過ぎ、試合後彼は再び現実と向き合うことになる。32回目の化学療法を受けるため米ボストンの病院に向け、機上の人となった。
過去には3度の白血病を患いながら2度ツアーに復帰したオーストラリアのプロ、ジャロッド・ライルが闘病から復活への道を公表し、人々の共感を呼んだ。残念ながら18年に帰らぬ人となったが、「ウェイストマネジメント・フェニックスオープン」を開催するTPCスコッツデールには彼のホールインワンを記念するプレートが設えられている。
命ある限り運命と闘う男たちのドラマは多くの人に希望と勇気を与えてくれる。
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月23日号より