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【PGAツアーHOTLINE】Vol.13 ケビン・キズナー<前編>「チップインの極意」

PGAツアーアジア担当ディレクターのコーリー・ヨシムラさんが米ツアーのホットな情報をお届けする隔週連載「PGAツアーHOTLINE」。第13回は、飛ばし屋たちに交じり、卓越したショートゲームを武器に活躍するケビン・キズナーに注目。

ARRANGE/Mika Kawano

Photo by Chris Condon/PGA TOUR via Getty Images

4年前の2017年、チューリッヒクラシックatニューオリンズは2人1組のペアマッチに変わりました。それまでの通常スタイル(個人戦)では、ビッグイベントの狭間ということもあり多くのトッププロが欠場。大会存亡の危機を救ったのが新フォーマットだったのです。そしてペアマッチに興味を持った選手たちが続々と名乗りを上げました。

記念すべき1回大会で躍動したのがスコット・ブラウンとコンビを組んだケビン・キズナー。2人は72ホール目でイーグルならプレーオフというドラマチックな場面を演出。18番パー5、ブラウンの3打はカップインならず。勝負の鍵はグリーン手前から3打目を打つキズナーに託されました。

中断もあり日没まであとわずか。同郷サウスカロライナの親友ブラウンがキズナーの耳元でささやきます。「もういっちょ行こうぜ」。その日すでに2つのチップインを決めていたキズナーに3個目を促したのです。「そしたらあいつ、やってくれたよ」(ブラウン)。


土壇場でのチップインイーグルで2人は翌日に持ち越されたプレーオフ進出を決めたのです。「ピンに当たってボールがカップに消えた瞬間、飛び出してくるな、って祈ったよ(笑)。思い通りのアプローチが打てた」とキズナー。

優勝こそ逃したものの、1カ月後のディーン&デルーカ招待でキズナーはツアー2勝目を飾り、今年は史上最多6人のプレーオフを制しウィンダムで4勝目を挙げています。

ドライビングディスタンス167位の彼が飛ばし屋と互角に渡り合っているのはパッティングの巧さゆえ。しかしチップインを量産するアプローチも彼の大きな武器です。

アマチュア向けのレッスンビデオでキズナーは素人が陥りやすいミスを2つ挙げています。1つ目が打ち急ぐこと。2つ目が手打ち。それらの問題を解決するための方法をキズナーは「クラブのグリップエンドと胸を一緒に同じ距離だけ動かすこと」と説きます。「ダフリやトップは手打ちが最大の原因。ウェッジのグリップと胸を一緒に動かせば手打ちは防げます」

次回はアマチュアの敵“手打ち”撲滅のための具体的な方法をご紹介しましょう。

PGAツアーの中でも飛ばないほうだが、長年シードを保持。7月のウィンダム選手権でも優勝。37歳で若い飛ばし屋相手に安定して好成績を収めているのは、ショートゲームの力によるところが大きい

コーリー・ヨシムラ

PGAツアーのアジア全体のマーケティング&コミュニケーションディレクター。米ユタ州ソルトレーク出身でゴルフはHC6の腕前

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月26日号より