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【さとうの目】Vol.222 ライダーカップ「団体戦のゴルフ文化に感動」

鋭い視点とマニアックな解説でお馴染みの目利きプロ・佐藤信人が、いま注目しているプレーヤーについて熱く語る連載「うの目、たかの目、さとうの目」。今週は、先日行われた「ライダーカップ」を総括。

「このイベントが終わって、本当に嬉しい」。ライダーカップで勝利した米国代表のスティーブ・ストリッカー主将の優勝会見でのコメントが印象的でした。ストリッカーの開会式での涙に始まり、閉会式での涙で幕を閉じた本大会は、ウィスリングストレイツで開催された15年の全米プロで、20年のライダーカップが同じ会場で開かれることが発表されました。この時点でキャプテンは、地元ウィスコンシン州出身のストリッカーにほぼ内定します。それから6年。冒頭の言葉はその間、ストリッカーに襲いかかったプレッシャーの大きさを物語っています。

地元の期待に加え、ストリッカーには負けられない理由がありました。メダイナで開催された12年大会、最終日を4点リードで迎えながら、欧州代表に14.5対13.5の大逆転負けを喫します。この大会で0勝4敗、1ポイントも挙げられなかったのがストリッカーでした。これがストリッカーのライダーカップ最終戦となり、翌年の初めには選手としてセミリタイアに至るのです。ちなみにこの大会、D・ラブⅢがキャプテン、F・カプルスが副キャプテン、Z・ジョンソン、J・フューリック、F・ミケルソンらが選手でしたが、今大会ではこの5人が副将を務め、二度と負けられないという思いが伝わる人選です。しかし、そんな因縁を知らないであろう平均年齢29.1歳のアメリカチームの選手たちは、19対9という史上最多の大差で2大会ぶりに優勝カップを取り戻しました。


選手たちが普段のトーナメントと違う表情を見せてくれるのがライダーカップ。年間王者のP・カントレーのガッツポーズや雄叫びを初めて見ましたし、優勝会見ではD・ジョンソンがずっとマイクを握り、ムードメーカーとして仕切っていました。そのジョンソンは今大会5勝で、最年長でチームリーダーの役割も果たしました。

最終日のC・モリカワとV・ホブランの“同級生対決”は、 「コロナで延期になった21年の大会では〜」と語り継がれるはず。2年前までは大学生だった2人が、早くもライダーカップで戦う姿を誰が予想したでしょうか。2人は今後も名勝負を続ける予感がします。

予感といえば初出場のS・シェフラー。最終日のシングル戦で世界ランキング1位のJ・ラームを4&3で退けました。まだ未勝利のシェフラーですが、この勝利の自信を大ブレークにつなげる予感がします。歴史は繰り返す。負けたラームは18年、フランスのル・ナショナルで開かれた大会で、T・ウッズに2&1で勝利し、翌年に大ブレークしているのです。

また、ケプカが開会式でのデシャンボーとの2ショットを、『この写真でひと言』と“大喜利”のようにSNSにアップし話題に。試合後、2人はハグし雪解けしたかのように見えましたが……という話題でも盛り上げてくれました。

今年の米国代表は世界ランキングを平均すると8.9で、歴代最強チームだったことは間違いありません。また、コロナ禍で応援も少なく完全アウェイの欧州チームの健闘、特にベテラン勢の健闘には拍手を送りたいです。次々と飛び出すビッグプレーに感動し、心から楽しむと同時に、「団体戦のゴルフ文化」がうらやましいと感じた3日間でした。

スーパープレー&アツいシーンだらけでした

(Photo by Keyur Khamar/PGA TOUR via Getty Images)

佐藤信人

さとう・のぶひと。1970年生まれ、千葉出身。ツアー9勝。海外経験も豊富。現在はテレビなどで解説者としても活躍中

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月19日号より