【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.51 「クラブで見栄を張ったって仕方ない」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO / Tsukasa Kobayashi
平気で20センチもダフることが珍しくないおっちゃんが、「オレのスウィングに合っているシャフトはどれや?」とフィッティングしてもらっておるのは、ほんま不思議です。
打点はほとんどめちゃめちゃやし、軽く振ったほうが、思い切り振ったときより飛んだりもしておったら、シャフトなんか何でもええやないですか。シャフトの問題じゃないわけです。
そういう人は、どんなクラブを使っても一緒ということなんです。
まず、自分をクラブに合わせようという姿勢がないと上手くいきません。何度も言いますけど、スウィングというものは、形やのうて、道具を使うことなんやからね。
新しいクラブ、新しいシャフトを探すよりも、ずーっと一生、一緒のクラブを使いこなせるまで使い続けたほうがなんぼもええと僕は思います。
古女房みたいなもんですから、クセもようわかっておるはずやからずっとええですよ。
しかし、クラブには妙な見栄みたいなものがあるのも不思議です。
ハンディ10ぐらいのアマチュアとまわっておったときのことです。パー3で、僕が7番アイアンでOKにつけたんですけど、そのアマチュアは同じ番手でグリーン奥のバンカーに入れたんです。ガッカリするのか思っておったら、「プロより飛んだ」と自慢しておるんです。しかも、使っておったのはストロングロフトのアイアンです。
そういう人に限って「バッグにユーティリティを入れるのは格好悪い」と思っているみたいなんです。
「プロ、アイアンは何番から入れているんですか?」と聞いてきます。そこで僕は「できれば全部ユーティリティにしてやろうかと考えておるんです」と答えると、不思議そうな顔をしておりましたな。
正直に言って5番アイアンより上は、ヘッドスピードは45㎧以上ないと打てません。
ライがいつでもアップヒルの順目で、グリーンが受けていてやわらかければ打てます。せやけど、ライが逆目のダウンヒルで、グリーンが硬い砲台なんかでは、まず絶対に無理です。無駄な抵抗はせんほうがええという話です。
まして、ロフトの立ったストロングロフトのアイアンを使っている人は、どうするんやろうな、思うわけです。
ただし、イギリスに行ったときは、5番アイアン、4番アイアンといったクラブは、大変役に立つのです。その話はまた改めて。
「クラブで見栄を張っても、どうにもならんものは、どうにもならんのです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年10月12日号より