【ヘッドデータは嘘つかない】ツアーモデルの王道! タイトリスト「T100」アイアン
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はタイトリストの『T100』アイアンを取り上げる。
トッププロが好むツアーモデル
ジョーダン・スピースなどPGAツアープレーヤーが即座にスイッチした『タイトリストT100』を紹介する。
さて、いつもどおり7番アイアンを計測していこう。クラブ長さが37.0インチと標準的だが、クラブ重量は424.5gとやや重いので、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントが271万g・㎠と大きくなり、この数値だとドライバーのヘッドスピードが45㎧くらいのゴルファーがタイミング良く振れる設計になっている。
ヘッド形状はツアーモデルらしくオーソドックスで、かつフェースプログレッションが4.7ミリと「ストレートネック」でラインに対してスクエアに構えやすい。また前モデルよりもソール幅が少し狭くなっているのも特徴だ。
Point1 クラブ全体慣性モーメントが271万g・㎠と大きい
Point2 クラブ重量が424.5gとやや重い
Point3 左右方向のヘッド慣性モーメントは前モデルよりも小さい
ダウンブローに打ちやすい
実際に試打したところ、まずPGAツアーのトッププロが使うモデルらしくフェースの長さは短く、トップラインがストレート系でアドレスでは球をつかまえすぎないイメージが出る「トウ側の逃がし感」がある。
試打クラブにはNSプロ105T(フレックスS)が装着され、先側のしっかり感でダウンブローに打ってもしっかり耐えてくれる。米国のプロモデルらしくロフト角34度と、ツアープロを基準とした、いわゆるヘッドスピードの速いゴルファーを対象としたロフトセッティングになっている。おそらくPGAツアープレーヤーであれば、この34度で約180ヤードをピンポイントで狙うことになるはずだ。日本のシニア向けモデルのような、いわゆる7番でロフト角25~27度の超ストロングロフトではないので、球はもちろん上がりやすい。また、フェースには軟鉄よりも硬い素材「SUP-10(クロムバナジウム鋼)」を採用しており、球の弾き感も意識されている。
小ぶりヘッドは重心距離も短めなので、結果的にネック軸周り慣性モーメントもやや小さくなり、インテンショナルにドローやフェードと弾道を操作しやすい。さらに、フェースが短く、ソールも狭いのでラフからのヘッドの抜けも向上している。そして、ソールのバウンス角は前モデルよりも1.5度増えて、ダウンブローでターフを取るスウィングにも合っているといえる。
他クラブの7番よりもバックスピン量がやや多めで、上級者が欲しているスピンがしっかり入り、安定して狙った場所にキャリーさせやすく、ストロングロフトのアイアンと違い、飛びすぎないので、スコアメイクに大きく貢献してくれるだろう。ちなみに、ヘッドは小さいが、フェースの真ん中で打ちやすいので、アイアンの原点に戻るには良い選択となるだろう。
【クラブ&ヘッドデータ実測値】
タイトリスト
T100 アイアン
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年9月21日号より