Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • レッスン
  • 【スウィング解説】木下稜介「片手打ち」と「低重心キープ」が正確ショットを生む

【スウィング解説】木下稜介「片手打ち」と「低重心キープ」が正確ショットを生む

PHOTO/Hiroaki Arihara、Hiroyuki Okazawa、Takahiro Masuda

今季、日本ツアー選手権とダンロップ・スリクソン福島オープンで2試合連続優勝した木下稜介。7月には全英オープン、8月にはWGCセントジュード招待に出場するなど、着実に経験を積んでいる注目プレーヤーのスウィングを、コーチの奥嶋誠昭氏に解説してもらった。

木下稜介(右)

1991年生まれ、奈良県出身。大阪学院大4年時に日本学生を制し、14年プロデビュー。18年AbemaTVツアーで1勝、今シーズンレギュラー2勝、賞金ランク2位(8/26時点)

解説/奥嶋誠昭(左)

バイオメカニクスと物理をもとに個性に応じた指導をするツアープロコーチ。木下のほか、稲見萌寧、イ・ボミ、高橋彩華のコーチも務める

「右手1本打ち」で
基本を磨き抜いた

知人を介して木下選手を見るようになったのが2019年の秋ごろ。元々ショットメーカーの印象が強く、当初の課題はパットとアプローチでした。ただし、スウィングを観察すると、手でインパクトのフェース向きをアジャストする感覚が強いのと、ターゲットラインの右へ打ち出して左へ戻すビッグドローのイメージを強く持ちすぎている印象でした。実際、その年のVISA太平洋マスターズでは最終日のバックナインに崩れるなど、プレッシャーがかかると左へ大きく曲げる傾向がありました。

手でアジャストする癖を直すために、徹底してやったドリルが片手打ち練習です。とくに、手の動きが体の動きとシンクロするように意識させる「右手1本ドリル」、この基本にはかなり時間をかけて取り組んでもらいました。

その結果、翌年のVISA太平洋で2位、ダンロップフェニックスで5位と成績が出始め、スウィングを細かく解析すると、インパクトゾーンが自然なハンドファーストの姿勢に近づいていることがわかり、お互いに手ごたえを感じたことを覚えています。

「下向きの力」を
上手く利用できるように

この1年、コロナ禍の自粛で直接会う機会を多く持てませんでしたが、2021年シーズンインに向け、「一度は集中して直接確認する場を持とう」となり、手のアジャストを完全に払拭するため、そこでも左手と右手の片手打ちを繰り返し、体の動きでリードする感覚を染み込ませていきました。

右から左への曲がり幅が小さくなり、試合で「腕の脱力」がしっかり馴染んだのが2試合連続優勝となったスリクソン福島オープンの時だったと感じています。

木下選手は、男子プロには少ないオーバースウィングに近い深いトップですが、これは体の柔らかさと強い体幹の賜物です。とはいえ、深いトップの反動によりダウンスウィングで上体が浮くケースが見受けられました。

そこで、片手打ちを続けながら、地面を踏む力を使い、沈み込むように振り抜く感覚をかなり意識してもらって取り組みました。体が浮かず、下に向かって力が出せるようになったこともショット精度が上がった要因です。低い球など高低もコントロールしやすくなり、その成果として、(初出場した)全英オープンでも今後につながる成績(予選通過59位タイ)が残せたのではないでしょうか。

重心の浮き上がりが抑えられ
コントロール精度がアップ

深いトップの反動で上体が浮き上がるケースがあったが、反力を生かして低い重心で回転できるようになり、高低の打ち分けなどコントールの精度もアップした

週刊ゴルフダイジェスト2021年9月14日号より