【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.42「11番で10叩いたよね」「それは忘れた」スタドラーとのお喋り
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
僕らがレギュラーツアーに出ておったころの外国人招待選手は、PGAツアーで何勝もしておるプロがほとんどで、ちょっと上から目線みたいなものを感じたものです。せやけど、スコット・シンプソンとかクレイグ・スタドラーなんかは、そういう感じがぜんぜんせん選手やったですね。
やっぱり、そういう選手には親近感がわきます。
シンプソンは65歳で、知らない人も多いかもしれんですけど、全米オープン(87年)の最終日のバック9で大まくりして、あのトム・ワトソンを1打差で逆転して優勝した選手です。日本でも3回優勝しております。
スタドラーはいま68歳。82年のマスターズ優勝者です。
僕が初めてスタドラーとまわったのは、84年のサントリーオープン。24歳のときでした。僕はまだシード選手ではなくて、マンデートーナメントで出場権を獲得しての参戦でした。
招待選手は大会の目玉やから、予選の2日間は、それなりの有名選手と組まされます。当然マンデーの選手と組むことはありません。
僕は予選を8位で通過して、スタドラーは7位やったのです。それで、3日目同組になったのです。
一緒にまわる人とは、一日楽しくというのが僕のモットーやから、わけのわからん英語でしゃべっておりました。スタドラーと同組になったのは、その1回だけでした。
そして僕が50歳になって、カーヌスティで開催された全英シニアオープンに行ったら、そこにスタドラーも出ておったのです。練習場でスタドラーに「ハーイ、クレイグ」と挨拶しておったのを、一緒に行ったノブちゃん(芹澤信雄)が見ておったんです。
ノブちゃんが「オレ、予選ラウンドでスタドラーと一緒なんだ。紹介してよ」と言うんです。練習場に行って、「マイフレンド、ノブオセリザワ。トゥモロウ、ウイズ、ユー」なんてスタドラーに紹介したら、向こうもワーッと話し始めて、こちらも「むかしサントリーオープンで一緒でしたよね」とか英語を駆使して、何とか会話しておったんです。「11番で10叩いたよね」と言ったら、「それは忘れた」と言っておりました。「おまえのほうがええスウィングしておった」とか言っとったのは理解できましたけど、まあお互いに喋ってはいたものの、内容はほぼ伝わっておりません。「グッドラック!」で練習場でのお喋りを終わらせました。
試合でもむっつりしておらんで、交流も大事や、という話です。
「言語が違っても、お喋りはで
きるもんです」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2021年8月3日号より