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【陳さんとまわろう!】Vol.215 「トップで左ひじを曲げてはいけません」

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto
PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。今回は、スウィングの再現性を高めるために注意すべきポイントについて教えてくれた。

正確なスウィングができれば
結果的に飛距離も伸びる!

――前々回、飛距離アップについて教えてもらいました。今回はその続きということで。

陳さん はい。いまの体や体力のままでもっと飛ばすためには限界がありますから、ランのある低いボールを打つことで10ヤードから15ヤードぐらいは飛ばせるようになるという話をしましたよ。そのためにはクラブをスクエアグリップで握って、ハンドアップに構えて、インパクトゾーンではシャフトを左回転させるようにリストターンさせてクラブフェースを返す、という基本の一部を話したはず。

――基本の一部ということは、ほかにも大事なポイントがあると。

陳さん たくさんね。たとえばダウンスウィングでは腰を飛球方向にスライドさせることから始めて、インパクトした後で腰を回すとか、ドライバーでもインパクトはハンドファーストで打つこととかね。こういう動きがあってはじめて低いドローボールが出るようになるし、結果的に飛距離が伸びるようになるわけよ。

――そのへんは陳さんの核心部分ですが、今回はまだ紹介していない重要ポイントを教えてください。たとえばトップオブスウィングで左ひじを伸ばすこと。これもボールを飛ばすためには大事なことですよね。

陳さん はい、大事です。ボールを飛ばすためにもスウィングを一定化させるためにもね。曲げると両方できなくなるの。でも曲げている人のほうがとても多いのを見ると、重要だとは考えていないんだねえ。左ひじは曲げちゃいけないんですよ。試合で活躍している選手のトップオブスウィングを見てごらん。曲がっている選手はいないはず。みんな伸びてますよ。男子も女子も。

――たしかに張りがあります。でもそれは若いからできることで、たとえば体が硬くなったシニアがやるというのはどうなんでしょう。

陳さん バックスウィングを無理に大きくとろうとしなけりゃいいじゃない。ひじを伸ばしていられるところまで上げればいいんですよ。

――あ、それでいいんですか。

陳さん いいんですよ。私はこれまで数えきれないほどの生徒さんを教えてきましたけど、左ひじが曲がっている人には曲げないようにって厳しく言うんですよ。手が右肩の高さまで上がっていれば十分だよって。それ以上高く上げて左ひじが曲がるより、低くてもまっすぐ伸ばしたほうがよっぽどいいんだって教えるんです。というのは左腕を伸ばしていればスウィングの半径が決まりますから、スウィングが正確になるじゃない。でも曲げたり伸ばしたりしたら決まらないし不正確になるよ。

――スウィングが正確であれば結果的にボールも飛びますね。

陳さん そうなの。それに左ひじを伸ばすと腕に張りが生まれるんですよ。するとその張りに引っ張られるように上体がひねられて、肩が深く入るんだねえ。これは体が硬い人も同じですよ。しかしひじが曲がっていると、張りができませんから上体をひねることができないんだ。ゆるみが出るというかな。そのために手の位置は高く上がってもボールを飛ばせないことになるわけね。

――陳さんは今年10月で90歳になりますが、左腕は見事なほどにまっすぐ伸びています。

陳さん そうでしょ。(左腕を叩きながら)ここが見せ場なのよ。スウィングもきれいに見えるしね。長続きしている理由のひとつですよ。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2021年8月号より