【当たるも八卦当たらぬも八卦】Vol.63 「おかえりモネ」の天気予報はなぜ当たった?
ILLUST/マタキサキコ
ゴルフを愛する気象予報士・森田正光氏による気象コラム「当たるも八卦 当たらぬも八卦」。第63回はラウンド中に気になる「雨の降り始め」にまつわるお話。
黒い雲が湧いたら雨のサイン
五月から始まったNHKの朝ドラ「おかえりモネ」は、気象災害から人々の生活を守るため、気象予報士をめざす女性の物語です。
第一話から天気予報にまつわる逸話が散りばめられており、そもそも主人公の「モネ」は台風の中で生まれたという設定になっています。しかもその台風は95年9月17日に三陸沖を抜けていった台風12号がモデルになっており、進路や気象状況などは、実際にあった台風を参考にして作られているようです。
ドラマの中で西島秀俊さん演ずる朝岡気象キャスターが、町の人の前で「おおよそ10分後、雨が降りだすと思います」と断言するシーンがあります。結果は、本当に雨が降りだし、モネもびっくりします。「風向きや雨雲の様子から予測した」となっていますが、それだけでは分単位の予想は無理でしょう。
その数字の基になったのが、私はレーダーだったと考えています。ちょっと簡単な計算をしてみましょう。ふつう、雨粒は平均的に秒速5メートルくらいで空から落ちてきます。秒速5メートルということは、1分で300メートル、10分では3000メートル落下します。つまり、「10分後」とは、3000メートル上空には、すでに雨粒が存在し、落下中だったと考えられます。
3000メートル上空の雨粒は、人間には認識できませんがレーダーなら簡単にとらえられます。したがって朝岡キャスターは、まず雨雲の接近を感じ取り、そのあとレーダーで確認して分単位の予想をしたというのが、私の考えです。
ゴルフの最中、黒い雲が湧いてくると、「そろそろ雨が降りそうだ」と言ったりしますが、実はそれ、数千メートル上空ではすでに雨が降っているんです。蛇足ながら、夏の雷雨は、雨粒が大きいので、秒速7〜8メートル以上になることもあります。こういうときには、3000メートル上空からでも5〜6分で雨がやってきますから、早めに逃げるのに越したことはありません。
森田正光
TBS報道番組「Nスタ」でお馴染み。監修した書籍『空の手帳』が人気。ツイッターは@wm_moritaで検索
月刊ゴルフダイジェスト2021年8月号より