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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.36 スポーツ経験はゴルフに役立つ?

PHOTO / Masaaki Nishimoto

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

初めて一緒にまわるアマチュアの人がごっつい飛ばし屋だったりすると、話の流れで「若いころ何かスポーツをやっておられたんですか?」と聞いてみます。そういう人の多くは野球経験者です。

何であれスポーツ経験があって、そのジャンルでトップクラスになった人の運動能力は、桁外れやなと思ったのは、以前も紹介したサッカーの元日本代表だった遠藤保仁さんです。つい最近見たサッカーダイジェストに掲載されていた彼の神業にはびっくりさせられました。

ペットボトルを逆さまに立てて、その上にボールを置いて、7番アイアンぐらいのクラブで打つんですけど、ボールはアドレスとは反対の真後ろに飛んで、1メートル半ぐらい後ろに置いてある小さな布バケツにスポンと入るんです。

これ、練習なしで1発で成功させたというのですから、驚きです。何をどうすればボールはこうなるというのが、体に染み込んでおるんでしょう。

スポーツ経験がゴルフに役立つことは少なくありませんけど、まったくゴルフの役に立たんケースもあります。それが僕です。

大学生の初めごろまで、僕はサーフィンに夢中になっておりました。夜中に仲間と一緒に伊勢、鳥取、四国、あちこちの海に行って、波乗りして帰ってくるので、ガソリン代だけで遊べるわけで、サーフボードさえ持っていたら、お金がかからんスポーツなんです。ただ、サーフィンで飯を食うのは無理やったので、プロになるなんて、さらさら考えておりませんでした。

そのうち、ゴルフを本格的にやり出してサーフィンからは遠ざかっていました。プロゴルファーになって、シード選手になったころのことです。ハワイで合宿があり、2月中旬ごろからみんなが来るから、10日ぐらい前に現地入りして家族と海で遊ぼうと計画したんです。

ワイキキのサーフショップで3フィンのボードを買いました。その話を聞きつけた雑誌社のカメラマンが、サーフィンをしているプロゴルファーの写真を撮りたいと言ってきたんです。

「ええですよ」と取材に応じたんですけど、それからが大変やった。

波に乗るには300ヤードぐらい沖まで、ボードに腹ばいになって、パドリングといって、手で漕いでいかなあかんのです。楽勝やと思っていたのに、いくら漕いでも進まんのです。ゴルフで使う筋肉と、パドリングで使う筋肉は、全然別ものや、ということを痛感しました。

“サーファー奥田”は役に立ちませんでしたわ

奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月22日号より