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「自立性瞑想」をやっておけばミスしたときでも自動的に冷静になれる【史上最年少プロ・加藤金次郎のメンタル術】<後編>

昨年15歳でプロ転向し、今年早くもACNツアーで初優勝を飾った”金ちゃん”こと加藤金次郎。彼は日々「瞑想」と「ジャーナリング」を続けているのだという。前回に続き、僧侶でプロゴルファーであるコーチと、瞑想の師匠との会談。その後編をお届けしよう

PHOTO / Norimoto Asada、本人提供

(左)加藤金次郎 かとう・きんじろう。2010年生まれ、愛知県出身。6歳でゴルフを始め、ジュニア時代から実績を残し、昨年9月に史上最年少15歳139日でプロ転向。今年6月に16歳44日でACNツアー「i Golf Shaper Challenge in 筑紫ヶ丘」で最年少優勝。コーチの中村がいるタイにも時間があれば通う

(右)中村映禅 なかむら・えいぜん。ZENゴルファーズファクトリー主宰。1973年生まれ、奈良県出身。PGAのティーチングプロで実家は奈良の650年続く浄土宗の「西迎院」。現在はタイ在住でレッスン活動やタイシニアプロゴルフ協会会長として活動中

辻冬馬

つじ・とうま。ISAT自己変容研究所主宰。国内、外資の生保でセールスマネジャーとして20年勤務。部下などにコーチングをしながら、自律訓練法・イメージストリーミング・ユング心理学を統合したISATメソッドを独自開発。YouTubeなどで発信、多様なクライアントがいる

>>後編はこちら

「『自律性状態』になると、
内側にだけ集中しています」(辻)

加藤 普段は動画を聞きながらやっています。最初は1時間が長かった。今もたまに試合前の火曜日など、疲れていて、お腹も減っていると瞑想しながら寝落ちしているときもあります(笑)。

辻 もちろん寝てもいいけど寝ないほうが効果ははるかにあります。何をしているか自覚しながらやるほうがいいです。

加藤 実は黙想で光が見えることがあるんです。ある日はずっと真っ暗だけどきれいに深い青や黄緑っぽい色のグラデーションが見えたり、たまに小さいピンクからシルバーに色が変わることもあります。

中村 金ちゃん、すごいな。

辻 色が見えていること自体が、それだけで相当深い瞑想になっているので、まず見えているということを評価する。そして好きな色を見る練習もあるけど難しいので、風景を見る練習をしたほうがゴルフというスポーツには役に立つと思います。あとは色が見えているとき、何か自分が気になる言葉をイメージしてみる。たとえば「優勝」と心の中で唱える。そのときに何が見えてくるか。優勝のシーンでなくていい。子どもの頃に行った海水浴場が見えるというような……。

加藤 それは見に行くのではなく待てばいいんですか。

辻 はい。すべては待つのです。

加藤 言葉を唱えて、そこに何が出てくるか、という感じ。

辻 そうです。待って、心の和む風景が鮮明に出てきたらそれは一生もの。その風景のところに行けば何があっても大丈夫という状態になります。プレー中にも使える「エクセレントサークル」を自分で作れるようになる。ざっくり言うと自分でゾーンを作る感じです。


マスターズ優勝のため瞑想している!

中村 瞑想することが快感になっています。必ず毎日瞑想がしたくなる。美味しいご飯を食べるのと同じくらい瞑想したい(笑)。

加藤 僕は(中村)先生みたいに「やりたい」とはまだ思ってないかもしれないです。でもなぜ続くのか……「やらなきゃ」ではなくて「やる」という感じです。

辻 ゴルフのトレーニングと思ってやっているのかな?

加藤 そうですね。毎日やることですからつらくはない。ルーティン化しています。瞑想やジャーナリングはゴルフの練習の一つです。もちろん、僕もスマホだって見ますよ。趣味を聞かれたらゴルフになりますけど(笑)。

辻 「自律性瞑想」は、自律神経の奥底にまで影響を与えるので、金次郎さんが意識していない部分にまでよい影響が必ず行っています。そもそも動物にとって失敗や大変なこと(ストレス)は、猛獣などの外敵に会うときに起こる。このとき戦うか逃げるかしかない。手足の筋肉を最大限稼働させることだけが解決策でした。だから失敗したと思った瞬間、今でも人間は手足を最適に動かすことだけに体が反応する。脳に血が行かなくなり、真っ青になって真っ白になる。それを稼働させるために心臓がバクバクするのです。

原始時代は「何も考えるな、逃げろ」が最適の反応でしたが、現代社会のビジネスやゴルフにおいて、失敗したときにそうしてしまったら上手く運びません。たとえば嫌なバンカーに入ったとき、どうしようかと冷静に考えないといけない。失敗したときの最適な反応は、心臓が静かに打ち、脳に血がたくさん行き、すごく冷静になって集中する。脳と心が安定することです。自律性瞑想というのは、失敗したときにも自動的に冷静になるための方法。金次郎さんが将来マスターズに行かれて最終ホールで優勝間近に失敗したときにさっと冷静になるために瞑想をしているのです。

「振るから飛ぶ」でなく「飛んでから振る」だ

中村 僕自身、若い頃から現在まで、瞑想しながら毎日自分の変化を書き留めてきました(ジャーナリング)。金ちゃんも自分でやると決めた日に始めました。若くしてプロになるというご縁をもらったのだから、それをしっかりと確立するために、常に自分を見つめ直して、都度目標を定め達成していくと。毎日、朝の1時間の瞑想、夜の1時間の瞑想、瞑想後、時には瞑想しながら朝の30分、夜の1時間のジャーナリング。これがプロゴルファーとしての一日のメニューに入っています。金ちゃん、毎日4時に起きてるよな。

加藤 試合などでも出発の2時間10分前には起きます。

辻 ノートを見ると本当に字がきれいで人格も出ていますよね。

加藤 昨日の夜の瞑想、今日の朝の瞑想で感じたことを書いたり、優勝したときのインタビューで何を言うか、周りにどんな人がいてどんな反応をするか、そのときに自分がどう思っているか、もう過去になっているように書きます。

中村 試合ごとにやっています。試合の間が空いたらマスターズでもイメージします。今年の春には「ACNツアー優勝」と書いて実際に達成したので「達成」と書き込みました。次は27年に17歳でレギュラーツアー優勝、28年に18歳で賞金王……(省略)……26歳で世界ランク日本人初の1位。これを達成するには「瞑想・黙想を続けること」と書いています。

辻 これはすごく大事なことで、しかも瞑想状態でやることが最大のポイント。普通の意識状態で「優勝だ」とイメージしても、「でも無理かもしれない」という思考が必ず働いてしまう。でも瞑想状態でやると、そのまま入ってきて潜在意識としては完全に“その気”になる。スポーツ選手はイメージトレーニングをしますよね、それは未来の出来事を先に見ること。ジャーナリングを続けるとそれができるようになる。また、たとえば大事な場面でのショット、残り120ヤードをピタリとピンに寄せたい局面で、狙って行うのではなく、まず「球が飛んで落ちたこと」を確認したら、そこから球が戻ってくることをイメージして、戻ってきたときに振り始める。これが自然に心と体でできたら実際その場所に同じように行くのです。

加藤 今日もラウンドでやっていました。

辻 「振るから飛ぶ」のではなくて、「きちんと飛んだからそれに合わせて振る」という考え方です。

加藤 コースの空間が味方をしてくれるということもあります。それがないとイメージしたものは出ないから、周りは全部味方だと思うこと。

辻 素晴らしい。そういうことができる脳(心)にするために1時間瞑想して1時間書く。自意識の奥に、潜在意識的に思考や感覚のネットワークが存在する。毎日瞑想することで無意識下に「飛んでから振る」という感覚のネットワークを作るということです。

中村 これを「脳のデザイン」というんですよね。

辻 はい。飛んでから振るなんて言っても、「バカバカしいトレーニングだ」「こんなこと本番では失敗するかもしれない」など、人間は強く願うのと同じエネルギーでマイナスに思ってしまう。でも瞑想していると、ボーッとなるか冷静に考えない。思考がないからそのまま実現するのです。

中村 普通はドアが閉まっていてコンコンと叩いている状態です。

辻 そうですね。その扉を最初から開いている状態にしておくことこそが瞑想の最大の効果です。だからスポーツにはものすごく向いていると思います。

ジャーナリングも朝晩の習慣。データ的なことも書くが、なるべく悪いことは書かない。「復習はするけど反省はしない」(中村)

ACNツアーで初優勝。このインタビューも「考えて書いていた」という加藤。「今日は優勝する」とも言っていたらしい!

ゴルフを鏡に自分を見ている

辻 瞑想はある程度の認識力や人生体験に照らし合わせてやっていくものなので、やってもいいと思うのは13歳くらいから。たとえば言葉の意味を認識できない10歳の子どもは絶対にできません。だけど言葉がわかっても普通の16歳の人にはできないですよ。金次郎さんができるのはプロゴルファーだから。自分のプレーを1打ごと自己評価できているのでしょう。今回初めてお会いしたのですが瞬間的に人間力も感じました。

加藤 僕はあまり怒らないというか、負けても悔しいというのはありますけど、そんなにダメージにならないんです。

中村 金ちゃんは瞑想をやる前から落ち着いていました。14、15歳でもチャランポランな人間はたくさんいます。そういう選手には瞑想は難しいかもしれない。でも金ちゃんは、すでに何回も人生をやっているような人間(笑)。だからこそ、スウィングもだけどメンタルを鍛えたら絶対に「メンタルお化け」になると思って。

加藤 プロになってもプレッシャーは感じていません。でも、瞑想などを行っていて、変わっているとは思います。なんて言えばいいか、目に見えるものではないですけど。

辻 16歳で、ゴルフというものを鏡に自分を見ているのだなと。今後がますます楽しみになりました。金次郎さんが未来に向かって続けたら、四大メジャー大会に全部優勝すると思います。これを笑う人には逆に優勝しない理由がありますか、と聞きたい。

中村 はい。でもそれはゴルフの技術だけではムリですよね。

辻 ゴルフはパソコンでいえばアプリケーションのようなもので、瞑想とジャーナリングはOSみたいなものですから、OSを整えているわけです。それがちゃんとしていなければアプリケーションは動かないですからね。まあ、僕にはメジャーの優勝インタビューで僕の名前を言ってくれるイメージがしっかりあります(笑)。

加藤 頑張ります。今の目標としては、来年前半はレギュラーツアーに出られるので、オフも含めていい形に持っていって、来年優勝することです。シードを取って18歳で賞金王になればヨーロッパツアーに行けますし、アメリカのQTを受ける道もあるし、日本はずっと出られるので……。

中村 着実に来ていますからね。「勝ちたいね」から「勝つからね」になって(笑)。

加藤 今、ゴルフを始めた頃より楽しい。これからも頑張ります!

「目には見えないけれど、確実に変わってきています」(加藤)

「これからが楽しみでしょうがない」という2人。「スウィングを教えるだけではなく、その選手の人生そのものが豊かになるような心技体を育てていくことが僕の役割だと思います」(中村)

週刊ゴルフダイジェスト2026年10月13日号より

週刊ゴルフダイジェスト2026年10月13日号より

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