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【インタビュー】今注目の3選手!<後編>出利葉太一郎「“飛ばすだけ”もひとつの魅力」&片岡大育「“生涯現役”目指します」

新しい組織で新しいスタートを切る国内男子ツアーが開幕。今年注目のプロたちに、オフの過ごし方、自分とゴルフの磨き方、今年の目標を聞いた。キャリアは違えど、ゴルフと世界と男子ツアーへの思いは同じ。今回は、プロ2年目でイーグル賞を取った出利葉太一郎と、病床から復活した片岡大育に意気込みを聞いた。

PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara

出利葉太一郎 いでりは・たいちろう。(24)2001年生まれ、福岡県福岡市出身。8歳でゴルフを始め、沖学園高を経て日本大学へ。ナショナルチームでも存在感を示し、大学4年の23歳でプロ転向。24年はシードには届かなかったが着々と成績を重ね、25年は9月にプロテストでトップ合格、ACNツアー最終戦で初優勝、レギュラーの賞金ランク58位で初シード獲得。180cm・87kg・B型

片岡大育 かたおか・だいすけ。(37)1988年生まれ、高知県高知市出身。13歳でゴルフを始め、香川西高時代の07年にプロ転向。14年までは日本とアジアでプレー。15年から日本でツアー3勝を挙げるも19年にシード落ち。20年に顔面神経麻痺を発症、24年から復調し25年は賞金ランク99位。QTではプレーオフで勝利し今シーズンの出場権獲得。167cm・71kg・O型

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  • 新しい組織で新しいスタートを切る国内男子ツアーが開幕。今年注目のプロたちに、オフの過ごし方、自分とゴルフの磨き方、今年の目標を聞いた。キャリアは違えど、ゴルフと世界と男子ツアーへの思いは同じ。1人目は早大出身の大型新人プロ、中野麟太朗に意気込みを聞いた。 PHOTO/Hiroyuki Okazawa、Tadashi Anezaki、Hiroaki Arihara 中野麟太朗 なかの・……


昨年、プロ2年目のシーズンを終えた出利葉太一郎は、JGTOアワードでイーグル率1位の表彰を受けた。このときのインタビューで少し顔を紅潮させ、初挑戦したPGAツアーQスクールについて、日大の同級生で仲のよい杉浦悠太と一緒に回り充実した時間だったと嬉しそうに語った姿が印象的だった。(出利葉は2次で敗退)

「プロ転向したときから予選会はヨーロッパもアメリカも受けるつもりでした。大学卒業時にはアジアも受けましたから。まだシードがなかったので失うものはない感じでしたし、早めに見てみたかった。夢や目標だけで終わらせず行けるときに行っておきたいと」


あえて段階は踏まず、“今”できることには挑戦する。無謀なのではなく、計算の中にあるものだ。

プロ1年目は、ドライビングディスタンスは307.96Y(3位)、パーオン率は70.486%(10位)で、すでにそのショット力の高さを示していた。しかし、賞金ランクは95位でシード入りは逃した。

「1、2年目が失敗だったわけではないけど、杉浦悠太などいろいろな選手に比べると足踏みした感じはある。でもそれが結局実力。それを知ることができるいい機会でした。アマチュアのときは一緒に戦っていたのになぜ自分だけ、こんなはずじゃないと思ったこともある。でも実力だから練習などももっと考えないといけないと思うようになりました」

プロとなり、自分のゴルフは変わらないが、戦う相手がプロゴルファーとなった。

「今まで憧れていた選手と一緒の舞台で戦うこと、賞金をもらえること、スポンサー契約があること、その違いは感じながらゴルフしていたんです」

自分に何が足りないのか、真面目な出利葉にとって考える日々が続く。そんな昨年の7月、欧州ツアーを闘う星野陸也のキャディ・薬丸龍一氏にバッグを担いでもらったとき、教わったことがある。

「『ここは競争社会。生きるか死ぬかの戦いをしているのに考え方が甘い』と言われて。新しいことを取り入れることにただ満足感を得てきた気がしました。上手くいっているはずなのに成果が出ないことも、全部を自分のせいにしてしまうことも、自分がやることになかなか自信が持てないのかなと。アマチュアのときから抱えている思考にやっと気づけた感じです」

自分を改めて見つめることができたとき、出利葉は1歩前進した。

「誰かと比べない。1つずつ少しずつ成長している感じ。結果も少しずつよくなっているので、焦らずに行きたいと思っています」

昨年の開幕戦・東建ホームメイトカップの3日目アルバトロスを決めて満面の笑み。「今、調子は整っています。ツアーはまだ慣れていないので緊張します」



昨年、主戦場だったACNツアーを「出場権を持っていない若い選手もベテランも、来年レギュラーに出るために這い上がろうという感じ」と表現した出利葉は、その最終戦で優勝し、シード権をつかんだ。だから、シード権を「やっとつかめた」という思いはない。

「一安心はしますけど、レギュラーツアーで優勝したわけでもないので、まだまだです。昨年は最終日最終組で回る目標も達成できなかった。その悔しさのほうがある」

Qスクールに挑戦して、夢のPGAツアーで戦えると確信したのか。

「それは言いすぎです。今の具体的な目標はコーンフェリーでしょうか。僕が行ったのはあくまで予選会です。飛距離は通用すると思いますけど、経験と場数を踏んで慣れることが必要。仮に今年日本ツアーで勝ってもアメリカのファーストで落ちるかもしれないし、やっぱりトライし続けないと、1回の挑戦だけでは難しいと思います。だからこそまた挑戦したい」

このオフは、高校の大先輩でコーチの髙橋竜彦と2人でタイに行き、ショットの精度を上げアプローチのバリエーションを増やすための練習に励んだ。

飛距離は自分の武器だと認識している。飛ばしの秘訣は、「重たい物を遠くに投げるイメージ」。これはジュニア時代から変わらない。

「狭いホールでもできるだけドライバーを持つ。自分の武器を強みにして攻めていく、アグレッシブなゴルフを貫いていきたいですし、ギャラリーにも見てほしい。アイアンもアプローチもまだ結果が伴っていない。でも“飛ばすだけ”も、1つの僕の魅力だと思うので。大きな球を打とうと頑張っているのでそれを見てほしい。ぜひ音も聞いてほしいですね」

今シーズンの目標は優勝。地元福岡で開催されるKBCオーガスタでの優勝も狙う。

「メジャーも見てみたいので、全英オープンにつながるミズノオープンでの上位も視野に入れています。メジャーでPGAツアーを感じながら戦いたいんです」

世界中、行ける試合には行くつもりだ。1人での遠征にも慣れた。時間があるときには本を読む。

「本が好きです。本屋やAmazonで買う。自己啓発本が多かったんですけど最近はいろいろな分野、小説も読んだりします。最近のおススメはなんだろう……渋沢栄一さんの『論語と算盤』も面白かったです。ゴルフという専門分野ばかり学ぶと考え方が小さくなり頭が固まるので、他のことも知りたい。その知識は自分で手に入れないと入らないものですから」

勉強家で努力家、分析能力も高い。性格を自己分析すると?

「素直、でしょうか。人の言うことを聞きすぎる部分もありますけど新しいことを取り入れようとすることと紙一重ですよね。でも自分で決めてやっていれば、そのときは間違った判断だったとしても、次のステップにつながると最近は思えるようになりました。皆違うゴルフスタイルがあるなかで、自分のゴルフを確立していくにはまだ発展途上。ゆっくり頑張ります」

まだプロ3年目。焦らず、しかし立ち止まらずに進んでいく。

「プロは競争社会。だから練習する。大きな球を見て、音も聞いてほしい」

「課題はアイアンやウェッジの距離感。飛ばせるので逆に飛ばないように練習する、距離を合わせることが必要。飛距離には自信はあるけど振らないと飛ばなくなるのでしっかり振っていきたい」

片岡大育にはスポーツ少年がそのまま大人になったかのような爽やかさがある。それは37歳になった今も変わらない。

昨年のQTファイナルでは、ひと回り以上年下の中野麟太朗相手にプレーオフを制し、見事に7打差の逆転劇を演じてみせた。

「最終日はすごい風でした。僕はずっと我慢できていて、その我慢が上手く爆発した感じ。そもそもQTは何一つ楽しくない。サードを受けるときは、ここで落ちたら本当に終わりなので、すべての感情を殺して機械的にプレーし冷静さを絶対に失わないようにする。冬場なのでコンディションもめまぐるしく変わりますしね」

片岡の口からその戦い方がスラスラと出てくるのは、ここ数年ずっとQTで戦い続けてきたからか。

「ラッキーがないと1位では終われません。でも2年くらい前から本当にゆっくりですけどショットが上り調子で。左にいくミスが出まくって、まずドライバーをタイトリストのGT2に替えてティーショットの安定感が出てきた。そして昨年6月のツアー選手権2日目にはGT1に変えてバチッとハマった。そこからフェアウェイキープ率が上がって最終的に自己最高の3位に。するとアイアンもかみ合ってきて、最終戦のカシオの最終日にパターも替えて、今14本そろった感じです」

QTで1位となり車で携帯を見ると多くのメールが来ていた。

「まずはスポンサーさんたちに電話して本当に嬉しかった。毎年行われるパーティでの挨拶を自然に考えていました。今まで言い訳をしてきたので、よい報告ができると(笑)」

話を聞くうちに爽やかさに隠された片岡のアツさが出てくる。

「これまで大変なことしかなかった。そのなかでずっと応援してくれる人たちがいた。そのおかげで僕はまだやらせてもらえるという思いがありました。自分はまだできるという自信も完全には消えなかった。きっかけをつかめば絶対にいけると。それだけを信じて、できることを徹底してやろうという思いをずっと持っていました」

片岡が体に異変を感じたのはコロナ禍で試合がなくなった時期。19年、賞金ランク73位でシードを落としたが、QTは49位で「試合はある。頑張ろう」というときに突然発症したという。

「普通に練ランしてお昼ご飯で唐揚げを食べようとしたとき口がグニュッと曲がった。瞬きも遅くなりました。その夜は友人と約束していた食事に行き、翌日病院に行った。すると医者に、病気が発覚した段階で絶対に来ないとあかんと言われて。即入院、ステロイドを打ちました。筋電図検査で40%動いていたらほぼ完治するそうですが、僕は3%。そんな病気あるんやと、意外とあっさり受け止めた自分もいたけど、周りに気を遣わせたらあかんと思ったんです」

顔面神経麻痺。原因は脳の病気由来、ウイルス性、ストレスなどがあるというが、片岡は検査の結果、原因不明だった。

「ストレスと言われれば確かに、切羽詰まって自分を追い込んでやっていた時期ではありました」


元来“体育会”気質の片岡、ストイックで頑張りすぎるのだ。自分にも厳しい。1年くらいで何とか復帰したが調子は最低、ドライバーも曲がり勝負にならない。

「20歳以来、サードで落ちました。33歳。さすがに落ち込みました」

痛みはまったくないが、完治は絶対にしないという。

「最初は涙がジワーッと出てきてボールが3つ4つに見えたりした。今は風が強いときなどは少し涙も出ますけど大丈夫。ゴルフには支障はないけど煩わしいと思うことはある。でも死ぬ病気じゃないんで。実は同じタイミングで身内に命に係わる病気をした人がいて。死を意識したとき、いつ死んでもいいと思えるくらい思い切り好きなことをやろうと。やっぱりゴルフが好きだしゴルフで生計を立てることが喜びの1つ。悩んでいる自分を考えたらちっぽけやなと、そこで吹っ切れた感じはあった」

23年のQTでは2位。24年は約10万円差で惜しくもシード落ちするが徐々に調子は上がってきた。

実はストレスはいろいろなところに潜んでいたのかもしれない。

「飛ばしの時代やと思って、スウィング改造もトレーニングも自分なりにすごく頑張っていた。しっくりこなかったのにそれでもやらんとあかんと思って。“今風”にフェースローテーションを少なくしたりして。食事も脂質をカットしてたんぱく質中心の食事にしていた。ビタミン不足だったんです」

今、改めて、自分のプレースタイルに自信を持つようになった。

「飛距離を伸ばすことも大事ですけど目指すのはそこではない、精度で戦うことを疎かにはしてはいけない。飛ばなくても250ヤードからバーディチャンスに付けてバーディを取ったら嬉しいですし、それが僕のゴルフの楽しさの1つです。結局、最後は気持ちが強いヤツが勝つ、気持ちでは負ける気はしないんです」

「飛ばしの時代。でも精度で勝負していきたい」

「稲森(佑貴)が頑張って、今の飛距離でもやりようで戦えると証明してくれている。データは使わない。飛ばそうとすると低スピンにしたくなり左にいく。スピンが多めでも、いいフェードが打てています」



基本“激情型”だという片岡。

「全然穏やかじゃない。僕のゴルフ人生は全部失敗から始まっている。挫折からの復活ばかりです」

病気は、アツい片岡を少しだけクールダウンさせるための神様からの時間だったのかもしれない。自分を少し許すことができるようになった片岡は、ここから“生涯現役”に向けてひた走る。

今年の目標は?「JTカップかな。優勝もしたい。お金も稼ぎたい。セカンドキャリアで不動産投資もいいかな」と言いながら、「1つ1つのパーツがそろってきてワクワクする」と目を輝かせる。

「50歳を超えてもシード選手として戦い続けたい。アジア、LIVゴルフ、世界を視野に入れてこれからも上を目指したいです」
今年、片岡大育のアツい第2ステージが始まる。

「気持ちが強いやつが勝つ」

長年の“相棒”伊能恵子さんも支えてくれた一人。「僕は結構頑固で全部自分でやりたい。でも空気感、僕の行動の先を読んでいろいろ準備してくれる」


「大変なことしかなかった。でも周囲の応援で頑張れる」

地元・高知愛は深い。所属コースの名刺には「観光特使」の文字。「Kochi黒潮CCでは後援会を作ってくれていて、5、6年シードのない状態でも変わらずに応援してくれたんです」

週刊ゴルフダイジェスト2026年4月21日号より