【インタビュー】平田憲聖<後編>「予選落ちが続くと、心が折れそうでした」過酷な米下部ツアーで見つけた“孤独との向き合い方”
週刊ゴルフダイジェスト
プロ入り4年にして世界最高峰のツアーに参戦する平田憲聖。昨年、PGA下部のコーンフェリーツアーで
ポイントランク15位に入り、見事つかみ取った。25歳の若者の挑戦はどのように成し遂げられてきたのだろうか――。前回に続き話を聞いた。
PHOTO/Hiroaki Arihara、Yoshihiro Iwamoto

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- プロ入り4年にして世界最高峰のツアーに参戦する平田憲聖。昨年、PGA下部のコーンフェリーツアーでポイントランク15位に入り、見事つかみ取った。25歳の若者の挑戦はどのように成し遂げられてきたのだろうか――。 PHOTO/Hiroaki Arihara、Yoshihiro Iwamoto 平田憲聖 ひらた・けんせい。2000年生まれ、大阪府出身。7歳でゴルフを始め、大阪学院大3年時に日……
自分に自信がなくなると
心が折れそうになる
昨年、平田が戦ったコーンフェリーツアーは、小平智、桂川有人、大西魁斗……経験したプロたちが「過酷です」と口をそろえる場所。しかし、平田は自身のコーンフェリー初戦(ツアー2戦目)で2位タイに入り、その後も安定してポイントを重ねていった、とはいえ、最終戦まで一度もPGA昇格を確信したことはなかったという。
「特に終盤は思うようなゴルフができなかったので。でも(7月に)2週連続で、3位タイ、2位タイになったときは、このまま頑張ろうと思えましたし、ずっとそこ(昇格)に対して自分のことは信じていましたから」
多くのプロが平田の強みに感じるメンタルの強さは、元から持ち合わせているのか。
「自分では弱いと思っています。心が折れてまではいないですけど、折れかけたというかくじけそうになったときはあるし。心が折れそうなときってやっぱりゴルフが悪い。皆それぞれ自分の想像しているゴルフがあるけど、それができなくなる。自分の理想に対して自信がなくなってきて、それで心が折れそうになるんです。コーンフェリーはレベルも高いので、予選落ちが続くとつらかったです」と、話を聞いていてもなかなか感情を表に出さなかった平田が、ようやく心情を吐露した。
「僕は予選落ちしたら家に引きこもっていました。好きな映画やYouTubeを見たり、試合の結果も見ずに、ゴルフを考えないようにしていました。もちろん練習したりするときもありましたけど、本当に心がつらいときは一日家から出なかった。アクション系や恋愛もの、面白いものだったら何でもいいんです。ホラーや悲劇ではなく、気持ちが明るくなるようなハッピーなものを見ていました。本当にゴルフしかすることがないので、そこで行き詰まって嫌にならないためにも。たとえば土日にクラブをまったく触らなかったりしたら、またゴルフをしたいなあ、練習したいなあと思えますから」
海外では楽しむときは楽しむ、集中するときは集中するというメリハリが大事だと平田。
「アメリカでは人に会えないことが一番つらいんです。でも、愛犬のププとビビ、家族だったり友達だったりとテレビ電話で連絡を取ることがリラックスにつながりましたね。周りの人に助けてもらいながら過ごしていました。そういう時間はすごく大事です」
「一匹狼にはなりたくない。
でも、群れることはしないように」
仲間も家族も大事にする。「遊ぶときは遊ぶ、そういうことがゴルフにもつながってくると感じました」

課題は全部。試合をするなかで成長できる
さて元来、おしゃれ好きでもあり、肌の手入れも欠かさなかった平田。色白の肌を見た初対面の人に100%の確率で「きれい」と言われていたらしい。しかし昨年、ちょっとした変化があった。「プロゴルファーは人前に出る仕事でもあるので、移動のときに日本だったら汚くはいられないし常におしゃれでいたいけど、アメリカではそういうところが削ぎ落とされる。別に服なんてどうでもいいし、たとえば肌も、もう誰にも見られてないと思いそうになる。でもそこを制御して、少しは気にしながら過ごしてはいました」
アメリカでは服はまったく買っていない。
「おしゃれするときがない。ご飯を食べに行くときも、半袖半パン、トレーニングウェアです。日本に帰ったときには最低限はおしゃれするけど、服は逆に買わなくなりました。着る機会も少ないから、もったいないなと思うようになったんです」
こだわりを捨てたわけではない。削ぎ落されたこだわりが残ったのだ。
「宿泊場所は一軒家を借りて1週間生活します。試合中はゴルフ場か家かジムで過ごすので、生活するなら綺麗な場所がいいし、そこにストレスを感じたくはない。キッチンが付いてるところを選んで、基本は自炊です。外食は高いし、やっぱり日本のご飯が食べたくなるんです」
フライパンで米を炊くことも覚えた。得意料理はシチューだ。ルーを使えば簡単にでき、いろいろな野菜を使えるので栄養のバランスも取れる。
「コーンフェリーに出るまでは、どんな場所か、どんなレベルかはわからなかったし、自分が体験してわかったこともある。僕は別にすごく背が大きいとかボールが飛ぶとかではない。それでもPGAツアーに上がれたのは、日本で戦っている選手に少しは『自分も行ける』という思いを持ってもらえたのかもしれません。実際、昨年たくさんの選手がQスクールを受けているし、そういうきっかけになったのかとは思います」
短いオフだったが、新しい舞台への準備はしてきた。
「トレーニングもシーズン中はなかなかできなかったので、しっかり重い物を持ったりしました。走ったりダッシュしたり基礎体力をつけて、自分の力をマックスまで出せるようにやっています。たった1カ月で簡単には変われないと思いますけど、やれることはやって準備するし、また試合が始まったら変わってくることもある。試合をしていくなかで成長できる部分もあるので」
戦いながらどれだけ成長できるか。これこそが、今年の課題であり、平田のスタイルである。
「技術面もいきなり飛距離が20~30ヤード伸びることはないし、そこはトレーニングからもつなげていきたいので、スウィングを大きく改造したりはしないです」
平田に今、コーチはいない。いい状態は自分である程度わかる。
「動画は見ますよ。このときはどういう意識をしてどういう動きをしていたかということは覚えているので、見返すんです。自分でイメージしているものと実際が合っているかどうかがすごく大事だと思うので、自分の動画を見て自分の思うところに振っているかどうかなどをチェックします」
スウィングの形はそんなに気にしない。全体の流れのほうが大事だと言う。
「ピンポイントではなくて、アドレスから最後までつながっていると思うから、どこを切り取っても大事だと思うんです。でも、球を操作することがゴルフで、スウィングを綺麗にすることではないと思っています」
一言一言を大切に発する平田。決して大きなことは言わない。“スウィングは体を表す”のかもしれない。今、自分に必要な課題は?
「全部です(笑)。でも、ゴルフしていたら満足いくときなんて少ないし、優勝したときが自分の100点ではないし、優勝したときもミスはあるし、どこを切り取ってもやっぱりもっともっとレベルアップしたいですね」
常にどうしたらいいか考えているという平田。正解はわからない。しかし結局、自分を救うものはゴルフでしかないとわかっている。
「どんないいリセットができても、ゴルフが苦しいと自分も苦しいですから。インスタにも載せましたけど、どれだけ過程を頑張っても、自分のことを自分で助けるのは結果だけなんです」

「変わらなくても、
中では燃えています」
「コースに向き不向きはあると思うので、今週行けそうだなというとき、きちんと頑張りたい。日本っぽい狭くてフェアウェイが絞られていて曲がるとペナルティがあるコースなんかいいですね」
1年で終わりたくない。
ずっとここにいたい
“今風”男子にも見えるが、こだわりという芯のある男。繊細にして大胆。プロゴルファー仲間をも惹きつける。「確かにあまり自分を曲げないかもしれないですね。人に流されたくはないし。人がしているからといってしたくはないし、むしろ誰もしていないことをしたい、ということはあります」
一見孤高の人のようだが、周りにはいつも多くの仲間がいるように見える。そう伝えると少しニヤリとして、
「一匹狼みたいな感じにはなりたくないし、どこでも自分一人なのではない。結局いつでも助けてくれるのはゴルフの先輩や後輩。頼りたいときには頼りたいし、やっぱり“人と人”だと思うので、そこは大事にしています。でも、群れることはしないようにしています」
普段、ツアーなど取材していると、プロたちの口から平田の名前がよく出てくる。平田にとっても多くの後輩、先輩がくれる言葉の一つ一つが嬉しい。人とつながることで学び、助けと力を得る。平田は壁を作らない。この“人たらし”が平田の最大の武器なのかもしれない。
コーンフェリーツアーにもすでに仲間はできた。英語は、日常生活に困らない程度だと笑うが、「英語はゆくゆくはクリアしていかないといけないので頑張ろうとは思っています。でも今でも選手とは仲良くなれますよ。日本が好きな人も多いし、数人、ときには2人でご飯を食べたりもするし、友達はたくさんできました」
なかでも一番仲がいい選手は、昨年のポイントランク1位だった24歳のアメリカ人、ジョニー・キーファーだという。
「年齢も近くて。何回も一緒に回ったけど、マジで全部上手くて本物のオールラウンダーです。飛ぶし曲がらないし、アプローチは上手いしパター入るし欠点がない。そして何よりもナイスガイなんです。そういえば、最終戦の後、今年2月のダブルス戦のチューリッヒに一緒に出ようと誘ってくれました。『ちょっと待って、また連絡する』という状態ですけど(笑)。ベイラーユニバーシティを出て、24年にプロ転向、PGAツアーアメリカズ(3部)でポイント1位になって、コーンフェリーでも1位になりPGAへ。今一番の有望株です」
平田の“人たらし”は海を越えるのだ。
「海外では一人でいるほうがラクなこともあるかもしれない。でも何かあったときに助けてくれたり助けたりする関係性は、今までと同じですから」
さて、今年の目標を聞こう。
「やっぱり、1年で終わりたくないし、ずっとここにいたい。優勝したいとか何勝したいということは、これまでと同じように言いたくないですね」
ただ、昔からテレビの中で見ていた場所、オーガスタナショナルGCでプレーする自分はイメージしている。
「昨年、マスターズを見に行きましたけど、ロープの外ではなくてロープの中でプレーしたいなと思いました。23年にZOZOチャンピオンシップで回ったことがきっかけで仲良くなったサヒス・ティーガラにチケットをもらって月曜と火曜に行ったんです。サヒスに何ホールかついて、松山さんにもついて、18ホール楽しみました。テレビで見るのとは全然違って、まず1番はこんなにアップダウンあるんだと思ったし、10番もめちゃくちゃ下りだし。もちろんメジャーには全部出たいですけど、マスターズは特に。アダム・スコットが雨の中のプレーオフで勝ったシーンや、昨年のマキロイの優勝もすごく感動的でしたよね」
憧れのプロは「あまりいないです」と言う平田。
「でも、タイガー・ウッズは見たこともないので、会ったらさすがにテンションは上がるかな(笑)」 あまり喜怒哀楽を出さないのに珍しいと言うと、「あまり変わらないですけど、中では燃えていますから」と返ってきた。
これがきっと、平田憲聖という男なのだろう。


シーズン初戦となったソニーオープンでも、同級生・中島啓太や“コーンフェリー仲間”と一緒に練習したり楽しそうに会話をしていた。「基本的に皆と仲良くしようと思っています」
週刊ゴルフダイジェスト2026年2月3日号より


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