最強の王者・ジャンボ尾崎の軌跡<後編>「誰もが使えるクラブが理想的でいいクラブ」
週刊ゴルフダイジェスト
通算113勝を挙げたジャンボ。全ての記録が桁外れといっても決して過言ではない。その記録は偶然達成されたものではなく、絶えず頂点を目指し、努力した結果だった。そのため達成しなければならない項目を明確にして、その方法を考え実践し、一歩ずつ階段を上り続けたのだ。不世出といえるアスリート“ジャンボ”の足跡を追ってみた。
文/吉川丈雄 写真/GD写真部、 Joe Yoshikawa

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- 通算113勝を挙げたジャンボ。全ての記録が桁外れといっても決して過言ではない。その記録は偶然達成されたものではなく、絶えず頂点を目指し、努力した結果だった。そのため達成しなければならない項目を明確にして、その方法を考え実践し、一歩ずつ階段を上り続けたのだ。不世出といえるアスリート“ジャンボ”の足跡を追ってみた。 文/吉川丈雄 写真/GD写真部、 Joe Yoshikawa ……
「誰もが使えるクラブが
理想的でいいクラブだ」
理想のプレーを具現するには、自分に合った道具が必要になる。ジャンボはクラブに対する造詣が深かった。初期はパワービルトを使い、その後は名器の誉れ高いベンホーガンの「パーソナル」を使用し、このクラブから受けた影響はかなり大きかったといわれる。その理由は、後日開発されたブリヂストンの「MTN Ⅲ」アイアンが「パーソナル」を彷彿させるヘッドデザインだったからだ。ちなみに「MTN Ⅲ」とは、将司、健夫、直道の3兄弟を意味している。秘話であるが「MTN Ⅲ」アイアンが人気を得ると多くのプロが関心を抱き、そのうちの何人かにクラブを渡した。しばらくすると、あるメーカーからマッスルバックのプロモデルが発売され、他のメーカからも出たが「実はそれらのクラブは自分が関わった『MTN Ⅲ』アイアンが元になっているんだ、まったく」と自分だけにそっと教えてくれた。
当時クラブ開発をしていた元ブリヂストンスポーツの嶋田憲人さんに話を聞いてきた。
「ジャンボさんは数字に強い印象でしたね。新しいクラブも納得してから試打するという慎重さも併せ持っていました。クラブから受ける先入観を排除して、自分に合った道具なのかを判断していたのでしょう。アイアンの『MTN Ⅲ』は5番まではコンベンショナル、6〜9番はスコッチブレード、ショートアイアンはベンホーガンやマグレガーのショートアイアンをイメージしたものでしたが、重心距離は統一されているという優れものでした。ジャンボさんの研究熱心さ、経験値が生かされていたといえます。なかでもPWとSWの距離感を埋めるためにPS(ピッチングサンド)を考案したのは実戦から生まれたものだと思います。
ジャンボさんは、グリーンのどこに乗せれば次の一打(パット)が楽になるかを考えてアプローチをしていたのではないでしょうか、そのためPSのようなクラブを求めていたのだと思います。ジャンボさんの強さはショートゲームにあり、それゆえに勝利を重ねていったのだと思います」


パターはマグレガー「トミーアーマー IMG-5」を愛用し、多くの勝利をつかんだ/ジャンボの強さのひとつにショートゲームの卓越した技があり、ピッチングとサンドウェッジの間の距離をカバーする「P/S(ピッチングサンド)」は必然的に生まれたクラブだった


P/Sのヘッド形状はかつてのマグレガーやベンホーガンのSWを彷彿させるものがあり、構えるとボールを包み込むようなイメージがあるものがジャンボの好みだった。ロフト角53度、ライ角62度、長さ35.5インチ、バランスD4。ジャンボは「P/Sは守りながらも攻めるクラブだ」と言った

メタルクラブの前、ドライバーはパーシモンのマグレガー「トミーアーマー693」を使っていた。当時、名器とされるパーシモンクラブをかなり収集していた


ジャンボはクラブに対して造詣が深かった。理想とするクラブを求めたどり着いたのがブリヂストンの「J’s メタル」だった
90年代半ば、強さを発揮した時代のジャンボのクラブ。装着されたHMシリーズシャフトとの相性はかなり良いものがあった。なかでもFWの飛距離は驚異的だった

「心を鍛えることで人間らしくなり、
技を鍛えることで技術者らしくなり、
身体を鍛えることでスポーツマンらしくなる」
ジャンボの功績のひとつにジュニアやプロの育成がある。かつて千葉の習志野では基本的に「来る者は拒まず」だったので、多くのプロや研修生などが訪れていたが、同県内の犢橋町に移った現在は「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」となり、25年のセレクション参加資格は、①25年4月に入学する新高校1年生から大学生(22歳)までの方 ②ゴルファーらしく、きちんと挨拶や礼儀が身についている方。そしてアカデミー入会条件は、①毎月最低2回、練習に参加できる方 ②JGAハンディキャップ5以下、または大会での同等実績がある方 ③プロゴルファーを目指している方、となっていた。
飛ばせる体作りに主眼を置き、そのため体幹、脚力、下半身、上下のバランス、そしてスウィングの強化を主なメニューとし、そのための動作と道具を考案した。トレーニングの内容は、ジャンボがツアーで戦ってきて強化すべきと痛感した部位を鍛えるものだ。近年、なかでも好成績を収め話題になったのは“ジャンボ軍団女子部”といわれる女子プロの存在だ。男子プロ顔負けの飛距離でツアーを戦い抜くことに驚きを隠せず、今では“女子プロ”というよりもアスリートと呼べるほどの変貌を遂げている。




ジャンボ尾崎のコース設計理念は
「タフさと戦略性がなければいけない」


「ジャンボ尾崎プロが理想としていたのは距離の長いパー4でした。距離があるということは大きな飛距離が求められ、2打目は果敢にピンを狙うことになります。つまり、タフだからこそ『挑戦意欲をかき立てられる』わけです。そのようなホールが最終18番ならば状況によって逆転されることもあり得ます。最後まで緊張を強いられ、戦い抜くタフなホールを求めていたわけですね。ジャンボ尾崎プロが理想としたコース設計家はサイプレスポイントクラブ、オーガスタナショナルGCやオーストラリアのロイヤルメルボルンGCを手掛けたアリスター・マッケンジーでした」(コース設計家、日本ゴルフコース設計者協会理事長・佐藤謙太郎)
当時人気があった4コマ漫画「ジャンボくん」


1983年7月~91年まで連載した4コマ漫画「ジャンボくん」(画/鈴木ひろし)。毎週、さまざまなジャンボネタで読者を楽しませてくれた。ある日「読んでます?」と聞くと「読んでいない、でも面白くて人気があるんだってな」と笑いながら答えてくれた。その時の感触から間違いなくジャンボは「ジャンボくん」を毎週欠かさず読んでいたと確信できた。







試合中は厳しい表情を見せ、追いすがる選手を睥睨し威圧感を与え萎縮させていたが、真剣勝負の舞台から下りれば意外にもかなり「シャイで人見知り」だった。試合の合間には少年のような笑顔を見せるシーンも多かった
週刊ゴルフダイジェスト2026年1月27日号より


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