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【インタビュー】金谷拓実<後編>「結果にとらわれず、小さい積み重ねを続けて『気づいたらいい選手になっていた』が理想」

プロ入り6年目の2025年シーズン、念願のPGAツアーにフル参戦した金谷拓実。24年のニッポンの賞金王は、夢の舞台でいかに戦ったのか。「充実」と「成長」の日々を語る。

PHOTO/Hiroaki Arihara、Tadashi Anezaki、Yoshihiro Iwamoto

金谷拓実 かなや・たくみ。1998年広島県呉市出身。広島国際学院高2年時に日本アマ、東北福祉大1年時にはアジアパシフィックアマを制し、2年時にはプロツアーで優勝し世界アマチュアランク1位に。20年プロ転向。日本ツアー7勝、アジアンツアー1勝。2025年には米PGAツアーのシード権(ランク99位)を獲得。

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一打一打に集中すると
自分の強みが見えてきた

昨年の“キー”となった出来事は19年にアマチュアで出場したマスターズ以来のメジャーでの予選通過ではなかったか。

「全英(7月)というメジャーで予選を通って1つステップを踏めたことはやっぱり自信にもなった。少しでもよくなろうと思って練習を積み重ねてきたことが報われた感触もありました。翌週(3Mオープン)もいいプレーができましたし」

8月にPGAのレギュラーシーズンが終わり、ここからは日米を行き来しながら、PGAのシード権を意識する戦いとなった。

「スケジュール的に厳しくても、出場してプレーすることがレベルアップと成長のきっかけになると思っていました。厳しい移動をしながら、コンディションもよくないなかでどういうプレーができるのか。10月のベイカレント、そしてその先を見据えて準備しプレーしていました。それに試合の感覚はなくしたくなかった。フォールシリーズの勝負もあるので、休まずに出場しました」

そしてベイカレントで4位タイに入りシード獲得に弾みをつけた。

「ミシシッピの試合からベイカレント、日本オープン、そしてユタの試合の4週間が勝負になると思っていました」

少しずつ感じてきた成長が結果になって表れていく。

「徐々にツアーにも慣れてきた感じがあったし、こういうプレーが自分の強みなんだなということが見えてきたんです」

自分の強みを確信したときに自信は深まる。

しかし、一昨年までは125位だったシードラインが昨年からは100位となっていた。

「せめて125位には入りたいと考えていたけど、最後はやっぱりシード権が欲しいと思った。でもシード権争いはプロになって初めてだったので何か違う難しさがありました。たとえば30位にいても一打でもよくプレーし、少しでもポイントを積み重ねなければいけないという難しさ……」


一打一打を大事にすることは、金谷のゴルフの根幹であり、常に口にすることでもある。

「メキシコの試合では、いいプレーをしていたのに3日目、4日目に30位くらいからなかなか上にいけなくて。予選を通ったのにポイントランクが落ちたんです。前からどの一打も大切にやってきたつもりだけど、よりその重みを感じました」

バミューダの試合では、強烈な風と熾烈なシード争いのなかに身をさらした。

「初めて帽子をかぶらずにプレーしました。切る暇がないから髪も長いし(笑)。今振り返ると、自分の球の高さだったり、ティーショットであまり曲がらない強みを生かし切れるコースだったのかなと。あれだけ風が吹いていたし、チャンスがある試合でした」

諦めないプレーは金谷の身上である。ここで3位タイに入る。

「実は最終ホールの1mのパーパットが入っていれば、ほぼシード確定だとわかっていました。でもそのときは体も結構しんどかった。だからこれを決めて早く日本に帰りたい、これを決めたらもう最終戦に行かなくてもいいかなと思いながら、欲まみれで打ったら外れました(笑)。ああ、もう1回来週だと……。でもあんなに一打一打に集中して臨めた試合はない。今後もあれくらい自分のプレーに一打一打向き合えれば、またいいパフォーマンスが出せるはずです」

そして迎えた最終戦のRSMクラシックは予選落ち。万事休す、かと思われた。

「シードは外れたと思ったけど、それまでの試合と同じように臨んで同じように全力を尽くしたし、来年も限定的な出場でも多少なりともチャンスはあるだろうから、そこに出て頑張ろうというくらいにしか感じていなかった。だから結果を見る前に早めに帰国しました」

シード圏内、99位となったことを知ったのは日本に着いてから。

「飛行機を降りたときに、皆から『おめでとう』と連絡が来ていた。ラッキーだったですね」

金谷はギリギリで何か大きなものをつかむことが多い。それは勝負の神様が味方になってくれるから。神様は努力と諦めない心を常に見ている。

「僕と同じ130位くらいの選手が勝って泣いてインタビューを受けていた。同じQスクールやコーンフェリーから上がった選手だから気持ちはわかるし、皆同じような気持ちでやっているから。それにしても最初は単なる25枠だと思っていたけど、25って大きいなって(笑)。結構いい選手も漏れましたし、しんどいですよね」

キャディのライオネルはいつも傍らで適切なアドバイスをくれる。「予選落ちが続いてすごく申し訳ないなと思っていたけど、最後までずっと信じてくれました」

飛距離や高い球に
頼らないゴルフがある

これで来シーズンはPGAツアーの「シード選手」となった金谷。「Qスクール組でも多くの試合には出られたんですけど、直前までわからないこともあったから、そういうことがなくなるのは嬉しいです」

さて、PGAツアーのレベルは、予想していた通りだったのか。

「一番感じたのは、技術がしっかりしていること。経験した日本選手やメディアが『パワーが大部分を占めている』ように伝えるけど、そうではない。飛ばしてもそこからバーディチャンスにしっかりつける、外したら難しいところからでもパーを取るという技術が必要です。アメリカは230ヤードくらいあるパー3も多くあって、その距離で日本ではなかなかバーディは取れないし取る選手も少ないけど、難しいピンポジションでない限りバーディチャンスにしっかりつけてきます」

金谷も当然、飛距離アップを目指してきたし、今後もやっていくつもりだ。しかしそれだけではない、自分が戦える本当の道が見えたのだ。

「もちろん飛距離が伸びていけば選択肢は増える。でもそれがないと戦えないと聞いてきたことは洗脳みたいなもの。上手くいかないときにこそそういう声はどんどん聞こえてくるし、聞くと心は揺らぐ。でも自分の強みを生かしたり、強みになるものをもっと磨いていくことが大事だと思いました」

金谷の2025年のスタッツを見ると、フェアウェイキープ率は74.07%で1位だ。

「他の選手がハザードで刻むホールも、僕はドライバーで低い球で打っていけるということが強みだと思うので、その結果がフェアウェイキープ率につながったのはよかったなと思います。データはたまにしか見ませんけど、データがよかったら、より自信を持って打てる支えにもなります。最初の頃はいいパットができていなくてデータがすごく悪かったけど、練習を重ねていくにつれて数値もよくなっていったし、リカバリー率も『よくそんなところからパーセーブするな』と感心する選手が多いなかで、自分のスタッツが2位となると、『意外と自分も拾えているんだ』という自信につながります」

もう1つ、金谷の球の高さはPGAツアーで一番低い。

「バミューダの試合のパワーランキングで上位に入っていて、何でかなと思ったら、一番球の高さが低いからチャンスがあると。一番だとそのときに知りました(笑)。50フィートだから、15、16ヤードの高さしか出ないんですよ。皆、120フィートなんて出るから半分以下です(笑)。でもそれでボールコントロールができているから、強みにできる部分なのかなと」

“飛距離”同様、PGAで戦うには“高い球”も必要だと言われる。

「アメリカはどのコースもいい状態ですし、雨の中であまり試合をしないし、気温もちょうどいい。そこで低い球を打っても転がって距離が稼げるメリットはないんです。それでもムリをして高い球を打って曲がるくらいだったら、コントロールしながらある程度飛ばせたほうが、今の自分は戦えると思っています」

気になるスタッツもある。SG(スコアへの貢献度)を見たとき、他の項目より極端に悪く、唯一のマイナスが「アプローチ・ザ・グリーン」だ。

「自分のフィーリングでも、グリーンを狙うショットが悪い。アイアンゲームの差はすごく感じました。少しのミスが本当に大きなミスになる。アメリカのコースってどこも池がすごく絡むので、池か普通のラフかでプレッシャーの感じ方も違うし、僕はミスを嫌がってミスすることが多かったので、広めのサイドに乗せたり当たり前のショットを当たり前に打てるように、これからももっと取り組まないといけない。長い番手で打つぶん、止められないのは仕方ないとしても、最初のステップとしては、狙ったラインに真っすぐ飛ばすことも練習しないと」

「ここは選手の入れ替わりが本当に激しくて、休む暇はない」

「Qスクールや3Mオープンで大学生のアマチュア選手と回り、ドライバーは軽く振って320Y飛ぶしアイアンもすごく上手くて。彼らが徐々に磨かれていってマキロイやシェフラーになるんだなあと。末恐ろしいです」

やりたいことを
やっている自覚がある

夢を叶えることと叶った夢を維持することは、どちらが困難なのだろう。いや、金谷はどちらも困難ではないと言う。

「最近思うんですけど、結果が出なくて周りから、大変だよねとかレベル高いしねと言われると、当然心はそちらにいきます。でも、別に結果が出ようが出まいが自分のやりたかったところでプレーしているので、それらの言葉には耳をふさぐことが多かったです。自分のやりたいことをやっているという自覚を持って、どんなに大変だろうが、できることは幸せだから。それを応援してくれる人がいたら嬉しいという感じでいます」

金谷の左手の薬指には結婚指輪が輝いている。昨年1月、プロゴルファーの吉本ここねと入籍した。

「一昨年プロポーズしました。実は昨年アメリカに1人で行くことになるとは思わなかったけど、あの頃はまだどうなるかわからなくてバタバタしてしまって。でもようやく落ち着きました。お互いにゴルフも大好きだから一緒に楽しめるし、すごくよかったかなと思います」

吉本の写真を持ちながら、JTカップの会場で結婚発表をした金谷の姿について、「キャラじゃないし、恥ずかしいですよね」と笑っていた吉本。休みのときの“デート”もラウンドなのだという。

「僕がゴルフ好きだから、一緒にしようと誘って、プライベートでも結構ゴルフをしています。彼女は本当に真面目です。一生懸命練習するし、あんな感じで自分よりも人のことを思って動くタイプなのに、練習となると、すごく朝早くから室内の練習場を予約したなんて言い出す。それにオフは練習はしたくないらしいんですけど、僕がしたいから無理やり付いてきてもらったり。でも彼女はラウンドして上手くいかないと落ち込むから、結局しっかり練習して臨みたいと言うんです(笑)」

金谷の口から出る素直な愛情がほほ笑ましい。何だか似たもの同士、2人で一つ一つの物事を積み重ねていくのだろう。

「お正月は広島と北海道、別々で過ごすかもしれませんけど、僕が練習したいから一緒に沖縄に付き合ってもらって、その後は一緒にハワイに練習に行きます」

さて、今年の目標は?

「優勝を目指してやりたいですけど、結果にあまり心を奪われずに、小さい積み重ねがあって、気づいたらいい選手になっているというイメージを持ちながらやりたいと思っています。とにかくPGAツアーでずっと長くプレーしたいんです。ここは選手の入れ替わりが本当に激しくて、休む暇はない。毎日毎日少しでも成長を続けていかないとすぐはじかれると思うから、そういう気持ちでいます」

シード選手として、昨年より出られる試合も増える。

「スタート順も午前中のトップのほうが増えるかな。だから今年は試合が終わってから、パットの根性練習をします(笑)」

今年の金谷の初戦は1月15日からのソニーオープンだ。昨年できなかったスタートダッシュを決めたい。もちろん、日本の試合にもスケジュールを見ながら出たいと考えている。

「日本でプレーすることもすごく楽しみだし、やっぱりアメリカでいいプレーをして成長した姿が届けられればいいなと思って。日本オープンも欲しいタイトルですし、毎年出たい試合です」 

さらに成長した金谷の姿を見ることを心待ちにしながら、海の向こうに声援を送ろうではないか。

「小さい積み重ねがあって、気づいたらいい選手になっていたい」

毎年恒例、金谷拓実のおススメ本は『複利で伸びる1つの習慣』。「ずっと読んでいます。毎日1%の改善をすると成長の曲線が複利で伸びる。悪い習慣も同じで、気づいたときには恐ろしいことになるんです。小さな習慣の積み重ねが大きな変化を生む。だから毎日少しずつ成長しないと。途中でやめたらダメなんです」

週刊ゴルフダイジェスト2026年1月20日号より