【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.890「数字の裏を読み取ることで”ほんとうの自分”が見つけられると思います」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら 100点満点のショットは打てないと言いますが、それでは及第点をどこに設定しているのでしょうか。仮に80点だとすると足りない20点……
スコアを落としたプロが「今日は自分のゴルフができなかった」というのは、具体的にはどういう状態を指しているのでしょうか。なんとなくですが、言い訳のように聞こえる気がしますがどうなのでしょうか。(匿名希望)
ホールアウトした選手がマイクを向けられて、上手くいかなかったラウンドを振り返るときの「自分のゴルフができなかった」という言葉はしばしば耳にするようになりました。
とくにプロ入りして間もない若いプレーヤーがこう答えていると、わたしも「じゃあ聞くけど、あなたの言う”自分のゴルフ”ってどんなゴルフなの?」
と聞き返したくなる時があります。自分のゴルフと呼べるようなプレースタイル、周囲の誰もが認める特徴的なゴルフがうかがえるようになることはとても難しいことだと思うからです。
今年の女子ツアーにも初々しい顔ぶれが増えました。年間女王の座を獲得した佐久間朱莉選手をはじめルーキーの荒木優奈選手と入谷響選手を含む12人と史上最多のツアー初優勝の人数を記録したシーズンが終了しました。
10人の初シードが誕生した一方、連続20年目のシード権を確保した全美貞選手(同39位)が目を引きます。
2001年、19歳で韓国でプロデビューして翌年の韓国女子プロ選手権に初優勝するなど韓国国内で実績を上げて2005年から単年登録選手として日本のツアーに参加。
賞金ランク12位でシード入りを果たすと翌年ツアー初優勝。日本のプロテストも突破して正式会員になり、以降JLPGAツアー通算25勝を挙げ、2012年には年間4勝で賞金女王にもなりました。
全さんは1982年生まれで43歳になりました。今年は優勝こそありませんでしたが、プレーオフを戦うなどまだまだ怖い存在であり、長きにわたってシード権をキープし続けられる強みとは何でしょうか。
それを考えるうえでヒントになるのが、毎週JLPGAが集計して公開している”スタッツ”です。
パーオン率、平均パット数、パーセーブ率、リカバリー率、サンドセーブ率といった30項目にも及ぶ部門別の数字とそのランキング。
このデータは選手それぞれのプレー内容を詳細な数字で表した通信簿のような、会社でいえば損益対照表のようなものでしょうね。
全さんの数字は、どの項目も特段上位でありませんが極端に低くなる項目もない。この凹凸のない点に常に平静でいるメンタルの強さを感じました。
反対に特徴的な例を探してみたら、ルーキーで初シードを勝ち取った入谷響選手は、ドライビングディスタンス部門259.38ヤードで4位という好成績を残し、平均バーディ数も10位と上位です。
反面、パーセーブ率が52位、平均パット数61位、3パット率77位と低調な数字になっていました。
ほかに、5シーズンぶりにシード復活を果たした葭葉ルミ選手(ランキング45位)は、平均ストローク33位と中位ですが、決勝ラウンドでの平均ストロークが6位(ちなみに予選ラウンドの平均ストロークは58位)と別人のように良くなる点が興味深い数字でした。
たとえば、パーオン率が悪くないのに平均バーディ数がそれほどでもないのなら、グリーンオンはしてもカップまで遠い、もしくは乗せる位置が悪い、もしくはパットに問題があるなど、1パットでは決められない要素があるのかもしれないということが分かります。
ほかにもたくさんありますが、このような数字を読み解くと、その裏には自分のゴルフの実態が隠れていると思います。
スタッツを客観的に見て正しく読み取り事実を受け入れることで、練習計画を立てるなど有意義に活用してほしいと思います。
調子のいい時はいいプレーができるのが当たり前です。ですが、そうでない時にも何とかスコアを作るのが強いプロの証し。全さんの数字はそれを物語っていると思います。
ピンチに立ち向かうための精神力と自分の能力と自分のゴルフを客観的に理解して準備することは不可欠です。
ベテラン選手でもルーキーでも今季の通信簿を利用しない手はありませんよ(笑)。

「課題を持って練習するかしないかでは、上達の速度はかなり違います」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)
週刊ゴルフダイジェスト2025年12月30日号より


レッスン
ギア
プロ・トーナメント
コース・プレー
雑誌




















