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【「体の正面で打つ」を極める】#2「これは意外と難しい」不調に陥った伊澤利光が気づいたスウィングで最も重要なこと

レッスンでよく「体の正面で打て」という言葉を耳にするが、果たして正しく理解していて、実践できている人がどれぐらいいるだろうか。そこで今回は、「体の正面で打つ」とはどういうことか、どうすれば実現できるのか、詳しく話を聞いてみた。

TEXT/Daisei Sugawara PHOTO/Hiroaki Arihara、ARAKISHIN、Tadashi Anezaki THANKS/ハイランドセンター、知多CC、ETGA愛知校

解説/伊澤利光

いざわ・としみつ。1968年生まれ、神奈川県出身。2001年にマスターズで4位、02年には丸山茂樹とのコンビでワールドカップを制覇。月刊ゴルフダイジェストで「イザワの法則」連載中(写真は01年マスターズ)

大スランプに陥って気が付いた
スウィングの基本

――かつて賞金王に2度輝いた伊澤利光プロだが、不調により一度はツアーを退く決断をした。そこで気付いたのは、スウィングで一番大切な「あること」だったという。

    *  *  *

2012年シーズンで一旦ツアーに出るのをやめたのは、フェアウェイキープ率の低下が原因でした。ただ、当時は正直、何で球が曲がるのかわからなかったんですね。それまではあまり考えなくてもできてしまっていたので、できなくなってすごく考えるようになった。「わかった」と思って、いつも練習しているコースに行くと何発もOBが出るということが続いて、心が折れそうなこともありました。そのコースの林には、オウンネームのボールが今でもたくさんあるはずです(笑)。

それでスウィングの基本って何かを考えたときに、手やクラブが胸の前から外れないことがやっぱり大事なんじゃないかと改めて気付いたわけですね。球が曲がるときには、とくに始動のところでもうクラブが外れてしまっていることが多いんです。そうじゃないスウィングを体に覚えさせるために、手首もひじも使わずに、胸と腕を一体にして振る素振りから始めました。腰から腰、あるいはもっと小さい振り幅で何度も素振りをしてみると、「あれ、これは意外に難しいぞ」と。アマチュアの皆さんもやってみるとわかりますが、自分が思っているより「できていない」人が多いはずです。


こういう地道な練習はプロも苦手なので、それによって大事な基本が実はできていなかったという人が、私も含め、意外に多いんじゃないでしょうか。最初は小さい振り幅から、だんだんスウィングを大きくしていくときに、ふと「あれ、コックっていつ入れればいいんだっけ?」なんて、まるで初心者みたいなことを思ったのを覚えています。結論から言うと、コックにしても右ひじのたたみにしても、自分で「入れる」というよりは、手が胸の前から外れない素振りを大きくしていくと、勝手に「入る」ものだと思っておくといいでしょう。 

スウィング全体を通じて、手が胸の前から外れない感覚で振れるようになると、ドライバーが曲がらなくなるのはもちろんですが、アイアンでグリーンを狙う精度も上がっていきます。プロはドライバーとアイアンで、なるべくスウィング感覚のギャップが出ないように練習しますが、手が胸の前から外れないというところだけ押さえておけば、多少違う感覚で打ったとしても問題ありません。一時、あれだけ曲がっていたドライバーですが、今はシニアツアーで他の人が刻むような狭いホールでも、平気でドライバーで打っていけるくらいには「上手く」なりました(笑)。それにしても、こんなに大事なことに、何でもっと早く気付けなかったんでしょうね。

最初は小さな振り幅でチェック

胸と手が一体となって動くことだけに意識を向け、最初はごく小さい振り幅で素振りを繰り返す。普段できていない人は、この時点でギャップを感じるはず。徐々に振り幅を大きくすると、コックのタイミングもわかってくる

打つ前にも素振りでチェック

試合中の「ルーティン」にも、手を胸の前から外さない素振りを取り入れている伊澤プロ。これでスウィング自体を再確認しつつ、これから打つ弾道イメージの構築を同時に行っている 

月刊ゴルフダイジェスト2025年10月号より